デジタルDJがレコードをプレイする事で得られる7つのこと

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DJの歴史はレコードでプレイすることから始まりましたが、今日のDJプレイの大半はデジタル技術が用いられたものです。以前は壁一面に敷き詰められたレコードコレクションがDJたちの自尊心を高めてくれるものでしたが、今やその壁は崩壊し、1cmの厚みのフラッシュメモリに取って代わられる時代となりました。

レコードは値段が高い、重い、持っていく音楽を厳選しなければならないなど、融通の利かないことばかりです。

それでも、一部のDJたちはレコードを買い続け、ターンテーブルを駆使しスピンし続けています。そうした人たちは怠惰なわけでも、デジタルに疎いわけでもなく、自らが選択してその行為を続けているわけです。

レコードでのプレイを試みることによって得られる美学、経験、知識などは、デジタルファイルを扱うDJにとっても役立つものがあるはずです。

今回はレコードでのDJプレイから得られるかもしれない7つのことをご紹介します。

目次

プレイの幅が広がる

レコードを使ってDJプレイをしない人たちにとってもレコード屋をチェックすることはおすすめです。

レコードバイヤーが厳選して入荷している商品ゆえに、一定レベルの品質が保証されています。さらに曲の解説などが掲示されているため、知識が増え、頻繁にチェックしていると、いち早くトレンドもわかるようになります。

時にDJたちはレコードのことをヴァイナルと呼びますが、デジタルオンリーでリリースされるトラックがあるように、ヴァイナルオンリーのトラックもたくさんあるため、単純にそれぞれのフォーマットのみでプレイするよりも選曲の幅が広がり、DJとしてのオリジナル性を少し高めることが出来ます。

選曲の精度が上がる

レコードは価格が高いです。年々価格が上がっており、最近では新譜だと一枚2,000円前後します。デジタルファイルと比べると10倍以上の価格になります。

そのため、デジタルファイルのように、とりあえず買ってみる的な発想にはなりません。当然ながら一枚一枚を吟味します。しかし、吟味しすぎると売り切れてしまうリスクもあるため、素早く確実に良いトラックを探し出す判断力が養われます。

オールヴァイナルのセットを準備すると、たとえ2時間の演奏であっても、レコードバッグの中に「もしも」のレコードを入れるスペースはありません。物理的に運べる量は限界があり、重いレコードを運ぶことで体力も消耗するため、バッグに加えるレコードはどれを取っても素晴らしいものに厳選しなければなりません。

的確な選択をするためには、綿密な現場の下調べと、日々のレコードの管理が求められます。

プレイリストの考え方をこのように捉えることは、最初のうちは難しい音楽の判断を迫られるので大変ですが、膨大なデジタルアーカイブの中から余計なものを含めずに厳選する能力を養うことは、結果としてDJプレイの質の向上に役立ちます。

音に真剣に耳を傾けることになる

レコードでのプレイには、オートシンクもなければ、キーをマッチする機能もありません。波形表示はなく、視覚情報は非常に限られているため、自ずと音に集中しなければならなくなります。

まず曲を聴いて、曲の構成や始まりと終わりを知る必要があります。盤面を見て溝の間隔でなんとなくイメージする以外に曲の構成を知ることはできません。波形を見ることができないということは、演奏する前に曲をしっかり聴いて、その曲に精通していなければならないということです。

デジタルでのプレイのようにビート、キーがピッタリ合って、適当にプレイしても何となく成立するということがないため、音楽スタイル、キー、BPM、グルーヴ、展開など、あらゆる要素から、2つの曲を合わせるために何が必要なのかを真剣に考えることになります。

ビートマッチングの精度が上がる

近年のターンテーブルは非常に優秀で、かなり正確な演奏が可能です。それでも物理的にレコードプレーヤーが回転し、針でトレースしているわけですから、ホコリやレコードの傷、湾曲によってBPMが微妙に変化してしまうのは想像に難くないでしょう。

デジタルのように寸分違わず安定したBPMというのは期待出来ません。また、レコード盤のBPM自体も安定しているものと安定していないものがあります。アーティストの意向か、レコード盤制作時のミスか、それともレコード盤の外周と内周の物理的な差のせいなのかはわかりませんが、曲の序盤と終盤でBPMがかなり違うことも珍しくありません。

そのため、プレイ中は常に何よりもピッチフェーダーを気にかけている必要があり、ズレを感じたら瞬時に対応する必要があります。

もし、CDJやDJソフトを使ったビートマッチングに長けているなら、それは素晴らしいことです。しかし、デジタルやCDでDJを始めた人が初めてターンテーブルを操作すると、不確定な部分が多すぎて驚くかもしれません。

テンポがデジタル表示されないので、耳だけを頼りに聴いて、ピッチ調整をしなければなりません。また、拍と小節を常に意識していないとキューのタイミングが掴めず、インやアウトのタイミングを逃してしまうかもしれません。

そのような背景があるため、ビートのキープ力や楽曲構造を把握する力が鍛えられ、デジタルでのプレイにも反映されることになります。

レコードの特性を知ることが出来る

デジタル全盛の世の中ですが、それでもレコードの音が好きで、レコードでのDJプレイを選択すると言う人がいます。

デジタルネイティブの若い世代でもあえてレコードを選択する人もいるため、時代に取り残されたレコード世代の人たちだけの趣向というわけではなさそうです。

小さい画面でチマチマ作業するのが嫌い、レコード盤に物理的に触れられるのが良い、レコードの見た目がかっこいいなど、いろいろな理由があるかもしれませんが、一番の理由はレコードの音質が好きだという人が多いのではないでしょうか。

レコードとデジタル双方の良い面と悪い面、特性を知ることで、DJとしての器を広げることが出来ます。

例えば、自分のDJプレイの前後に、レコードを使用するDJがいる場合、バトンタッチする際にEQやボリュームでレコードの音に近づけることで、交代した時の違和感を少なくすることが出来ますし、レコードのBPMが不安定な可能性も考慮して、無理をせず余裕を持ったミックスを心掛けることも出来ます。

プレイ中の暇が無くなる

プレイ中にスマホを使って、ゲストリストを確認したり、Instagramに投稿したり、Tweetしたりしようと考えていませんか?

DJプレイ中にやることが無くなって手持ち無沙汰な状態は、見た目にもあまりかっこいいとは言えないかもしれません。

  • 曲の頭出し
  • ピッチ調整
  • ズレないようにビートキープ
  • 音量差や音質の微調整(レコードは片面に収録された曲数、年代、マスタリングによって音量、音質差がデジタルファイルよりも顕著です)
  • キューのタイミングを逃さないように注意
  • アイソレーターやEQでプレイに抑揚をつける
  • レコードバッグから次の曲を選ぶ
  • レコード盤面のホコリの除去

など、レコードのプレイでは上記のようにやらなければいけない事がたくさんあり、時には重要なキューを逃したり、次の曲を探して準備する時間がなかったりする可能性があります。

ターンテーブルを操作して巧みにビートミックスするためのコツを身につけるには時間がかかるので、もしDJブースで時間を持て余して、マンネリや退屈を感じているのなら、レコードを取り入れることで充実感が増すかもしれません。

忙しそうにレコードを入れ替えてターンテーブルを操作している姿は、まさに「DJ的であり」視覚的なパフォーマンスとしても良い効果があります。

DJの進歩を実感できる

重要なことは、CDJ、PCDJ、DJアプリ、レコードなど、すべてのDJ形態には長所と短所があるということです。だからこそ他のプレイスタイルを試みることは価値があります。技術と歴史を理解する絶好の機会であり、総合的な対応の出来るDJになるための糧となります。

近年では、手軽にDJが楽しめるようになった反面、何となく自分のDJがすぐに上達した気分になってしまいがちですが、レコードでのプレイはごまかしが利かず、問答無用で自分の実力がダイレクトに出るため、自分の成長が分かりやすいです。

ヴァイナルを手に取って自身のプレイを録音してみてください。新たな刺激が自分のプレイに改善点や、アイデアを加える余地があることに気づかせてくれるかもしれません。

まとめ

私たちは音楽の入手のしやすさに感覚が鈍感になっていて、何の思い入れも持たないまま、今日の音楽が明日聞かれることなく大量に消費される時代にあります。

一枚のレコードに2,000円前後も払うのはバカらしいと思うかもしれません。しかし、アーティストや制作に関わった人の労力、レコードが物として手元に残ることを考えると、本来、音楽にはそのぐらいの価値があっても良いのではないでしょうか?

レコードは100年以上の歴史があり、デジタルに取って代わられたとはいえ、レコードを回すことで得られる基本的な知識や技術は、自分のDJプレイにも応用できるものがたくさんあります。CDJとターンテーブルを難なく切り替えて、ショーの中で柔軟なプレイを発揮している著名なDJはたくさんいます。

アナログでのビートミックスのプロセスには運動性があり、レコードの音を再生するターンテーブルには可変領域があるため、実際にレコードを使ってスピンすることはなかなか大変です。確固たる知識と信念がないとプレイが迷宮入りしてしまうこともあります。しかし、レコードを使ってDJをする方法を知ることはどんなDJにとっても新たな発見が得られるはずです。

ただ、今からDJを始めるという人たちにとっては、レコードでのDJは敷居が高く現実的ではないでしょう。まずは、DJコントローラー、iPadアプリ、PCDJなどから始めると良いと思います。そのうえでレコードでのDJプレイに興味が出たならば、少しずつ取り入れてみるのも良いかもしれません。

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