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新世紀のハウスミュージック – ハウスミュージックの歴史⑨

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2000年代初頭から中盤までミニマルが大流行しましたが、ハウスミュージックが誕生して以降、成長と共にジャンルの細分化が進んでいるために、全ての人が一つのトレンドを追いかけているということはありません。

ミニマルが流行しているそのすぐ隣には、Progressive HouseやNu Discoが並走し、はたまた、Electro Clashがミニマルに負けず劣らず人気を集め、Electro Houseに進化するなど、各々のジャンルが成長を続け、世界に広がり発展しているため、ハウスミュージックはアンダーグラウンドと、巨大なマーケットを持つメジャーという2つのシーンがクロスオーバーしていくことになります。

多様化し過ぎたハウスミュージックというジャンルは、何でも飲み込んでしまうフォーマットゆえに、人によっては全く違うものを指し示すことも多くなってきました。

ハウスミュージックからの視点で考えると、ブラックミュージックを継承する①、テクノから派生した②、ヨーロッパ産のハウスが発展した③という以下の3つ流れが主軸となっていると考えられます。

①Disco→Chicago House→Acid House→Deep House→NY House→Nu Disco

②Detroit Techno→Minimal Techno→Minimal House→Deep Tech Minimal→ Romanian Minimal

③Balearic→Acid House→Progressive House→Tech House→Erectro House→EDM→Future House

2010年代以降、世界の大きなマーケットを占めているのはヨーロッパ産のハウスミュージックが発展したものです。

目次

エレクトロハウス、そしてEDMの誕生

2000年代中盤以降から徐々にミニマル人気は衰退し始め、抑圧されたサウンドの反動からか激しい音楽が求められるようになり、エレクトロハウスの人気が高騰しました。

エレクトロハウス登場以前は、DaftPunkを筆頭とするフレンチハウスであったり、エレクトロクラッシュがあったりと、系譜となるサウンドが存在するのですが、エレクトロハウスとしての最初の世界的ヒットとしては、2002年リリースのBenny Benassiの「Satisfaction」が知られています。

Benny Benassi – Satisfaction

「Satisfaction」がエレクトロハウスの起爆剤となりましたが、シーンの立役者でいえばDeadmau5の名前が挙がります。

Deadmau5(デッドマウス)こと、Joel Thomas Zimmerman(ジョエル・トーマス・ジマーマン)は、カナダのエレクトロニック・ミュージック・プロデューサー、DJ、ミュージシャンで、ネズミの被り物がトレードマークとなっています。プログラマーとして働いていた頃に、パソコンの中で見つけた死んだマウスにちなんでDeadmau5という名前を採用しました。

3Dモデリング・ソフトの使い方を学びながら、「mau5head」と呼ばれるオリジナルのロゴを作成した際に、友人の一人であるインダストリアル・メタル・バンド、OrgyのJay Gordonから、このロゴをベースにしたヘルメットを着用するアイデアを得ました。

2000年代中盤からエレクトロハウス、プログレッシブハウスのアーティストとして頭角を現し、2005年にデビューアルバム「Get Scraped」をリリース。

2008年に、Kaskadeとのコラボレーション曲「Move for Me」、「I Remember」、Rob Swireとのコラボレーション曲「Ghosts ‘n’ Stuff」がビルボード誌のダンス/ミックス・ショー・エアプレイ・チャートで1位を獲得し、同チャートで3曲の1位を獲得した唯一のカナダ人となりました。

Deadmau5 feat. Rob Swire – Ghosts N Stuff

2000年代後半になると、エレクトロハウスは他ジャンルと積極的にコラボレーションが行われるようになります。LMFAO、Steve Aoki、David Guetta、Black Eyed Peasなどのアーティストが、ヒップホップ / R&Bにエレクトロハウスを融合させた楽曲をリリースし始め注目を集めました。

LMFAO – I’m In Miami Trick

The Black Eyed Peas – Rock That Body

その中で、フランスのハウスDJであるDavid Guettaがリリースしたアルバム「One Love」は、Kelly Rowland、Akon、will.i.am、Ne-Yo、Kid Cudiなどアメリカのヒップホップ / R&Bアーティストとコラボレーションしたことで世界的な大ヒットになり、550万枚以上のセールスを記録しました。

このアルバムは第52回グラミー賞のベストエレクトロニック/ダンスアルバム部門にノミネートされ、リード・シングルである「When Love Takes Over」は、ベスト・ダンス・レコーディングとベスト・ノンクラシック、リミックス・レコーディングの2部門にノミネートされました。

David Guetta Feat. Kelly Rowland – When Love Takes Over

アメリカのアーティストを起用し、世界的なブレイクをしたことで、アメリカの音楽業界や音楽報道機関がマーケティングの側面から、この新しい音楽ムーブメントをプッシュし、”EDM”という言葉が知れ渡るきっかけとなりました。

広義でのEDMはエレクトロニック・ダンス・ミュージックとして電子的なダンスミュージック全般を指していますが、狭義でのEDM、特に日本においての意味はエレクトロハウス / プログレッシブハウスに、トランスが融合したビッグルーム・サウンドを指しています。

同じ頃、DJとして活動していたSteve Angello(スティーヴ・アンジェロ)、Axwell(アックスウェル)、Sebastian Ingrosso(セバスチャン・イングロッソ)のスウェーデン出身の3人でSwedish House Mafia(スウェディッシュ・ハウス・マフィア)を結成し、エレクトロハウス / プログレッシブハウスにトランスの要素を融合させた作品で、EDMシーンでの人気を高めていきました。

Swedish House Mafia – One (Your Name)

Armin van Buuren、 Tiestoなどトランスシーンからの接近もあり、2010年代には世界中でEDM人気が高まり、エレクトロニック・ダンスミュージックの規模がかつてないほど成長し、Tomorrowland、Ultra Music Festival、EDCなどの大型フェスティバルには数十万人が押し寄せるほどになりました。

ハウスミュージックへの回帰

2010年代中盤になると、ビッグルーム一辺倒ではなく、EDMシーンに少しづつ変化が訪れます。

その変化の中には、EDM以降のサウンドプロダクションを駆使し、ハウスミュージックへと回帰する動きも見られるようになりました。

2013年頃にパリのDJ、プロデューサー、Tchami(チャミ)がSoundcloudに”#Future House”とタグを付けたことから、新世代のハウスが「Future House」と呼ばれるようになり、Don Diablo(ドン・ディアブロ)、Oliver Heldens(オリバー・ヘルデンス)などが注目を集め始めます。

Janet Jackson – Go Deep (Tchami Remix)

その他にも、Calvin Harris(カルヴィン・ハリス)がLove Regenerator名義でアンダーグラウンドなハウスミュージックを追求したり、EDMの中にスローでディープなサウンドを用いるKygo(カイゴ)や、Lost Frequencies(ロスト・フリクエンシーズ)などの新世代のEDMアーティストも登場しました。

Kygo – Firestone ft. Conrad Sewell

こうした動きの中で、再び伝統的なハウスミュージックが脚光を浴びるようになりました。

Disclosure、Moon Boots、Bicep、Claptone、Jean Tonique、Solardo、Gigamesh、Camelphat、Disciples、Gorgon City、Weissといったハウスミュージックの新世代から、もう少しアンダーグラウンドな領域に存在するFloating Points、Romare、Dam Swindle、Folamour、Blessed Madonna、Honey Dijon、The Reflexなど挙げれば枚挙にいとまがないですが、多種多様なアーティストによって盛り上がりを見せています。

Disclosure – F For You ft. Mary J. Blige

Camelphat & Elderbrook – Cola

Folamour – Devoted to U

Floating Points – ARP3

アンダーグラウンドシーン

メジャーか、アンダーグラウンドかは単に趣向の問題であり、セールス数に違いはあれど、音楽自体に優劣があるわけではありません。2010年代以降、EDMやFuture Houseがダンスミュージックのメジャーシーンだとすると、アンダーグラウンドシーンではNu Disco、Lo-fi House、Romanian Minimalなどのジャンルが台頭してきました。

例えば、Nu Discoの人気はハウスミュージックシーンで急上昇しており、Simon Dunmoreの<Defected Records>がディスコに焦点を当てたサブレーベル<Glitterbox>を設立したり、Dave Lee (aka Joey Negro)の<Z records>がリエディット、リミックス作品を連発するなど、ハウスの名門レーベルを筆頭に21世紀型のディスコミュージックとしてリバイバルが行われています。

そのNu Discoシーンから、群を抜いて人気を集め、メジャーとアンダーグラウンド、どちらからも支持を得ている稀有なアーティストとして、Purple Disco Machine(パープル・ディスコ・マシーン)が存在します。

Purple Disco Machineはドイツのドレスデン出身で、60年代~80年代のロック、ファンク、ソウルやR&Bなど、大の音楽ファンの両親の元で育ち、18才ごろにフレンチ・ハウスやシカゴ・ハウスを聴いてダンスミュージックに開眼しました。

1996年になるとCubaseとシンセサイザーを使ってプロデュースを始め、DJとしても活動するようになり、2013年に<Off Recordings>からリリースした「My House」で大ブレイクしました。

Purple Disco Machine – My House

2017年には、オーストラリアのレーベル<Sweat It Out Records>からデビュー・アルバム「Soulmatic」をリリースし、アルバム全体で1億回以上のストリーミング再生回数を達成しています。

ネクスト・ジェネレーション

テクノロジーの発展とデジタル化によって、ダンスミュージックへの参入障壁が下がることでシーンは肥大化し、既存のハウスミュージックの枠を超えるような多様な動きを見せています。

例えば、韓国や中国、アフリカなどUS、EU圏以外でもハウスミュージックが急成長しており、ウガンダの首都カンパラで開催される「Nyege Nyege Festival」は近年最も注目を集めているフェスティバルとして知られています。

今まではUS、ヨーロッパを中心に流行が生まれるのが当たり前でしたが、最早、いつどこで新しいムーブメントが起こっても不思議ではない状況です。

Kampire | Boiler Room x Nyege Nyege Festival

DJの機材面では、70年代から半世紀を得て、レコード→CDJ→PCDJ→DJコントローラー(iPadやPC)へと移り変わりを見せている一方、アナログ人気が再燃する動きも見られます。例えば、アナログレコードが再評価により、CDの売上を抜くほどセールスを伸ばしたり、ユーロラック・モジュラーシンセが流行したり、新興メーカーから新型ロータリーミキサーが制作されるなど、じわじわとアナログ人気が高まっています。

配信環境は、ミックステープからCD、そして、Soundcloud、Mixcloudなどクラウドへのアップロードに変わりました。「Boiler Room」の登場以降は動画配信が人気を集め、その後、リアルタイムのストリーミングへと変化しました。2021年以降はVR領域へとコマを進める準備が進んでいます。

新世紀のハウスミュージック・プレイリスト

Tiësto & Don Diablo – Chemicals (feat. Thomas Troelsen)

Solardo – Tear It Up (Oliver Heldens Extended Mix)

Love Regenerator, Steve Lacy – Live Without Your Love

Gorillaz – We Got The Power (Claptone Remix)

Bicep – Aura

Just Kiddin – Pray

Akabu – Ride The Storm ft. Linda Clifford (Saison Remix)

Eminence – Give It Up (feat. Kathy Brown) Dr Packer Remix

Jean Tonique – What You Wanna Do

Romare – All Night

COEO – DON’T OHO (COEO EDITS)

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