Nu Disco(ニュー・ディスコ)

Nu Disco(ニュー・ディスコ)は、1970年代〜1980年代のディスコ・ミュージックを現代のテクノロジーで再構築したもので、ハウスミュージックから派生したジャンルになります。

Nu Discoを知るためには、ディスコ・ミュージック、そしてRe-Edit(リエディット)という制作方法を知る必要があります。

ディスコ・ミュージック

Disco(ディスコ)の語源となったのはフランス語のdiscothèque(ディスコテーク)であり、第二次世界大戦中に生バンドの演奏が困難となったナイトクラブでレコードを代わりに掛けるようになったのが始まりでした。1941年、戦時中のパリにオープンした小さなバー「ラ・ディスコテーク」が最初のディスコという概念の発祥と言われています。

ディスコが本格的な発展を遂げたのは1960年代以降のアメリカのニューヨークのゲイ・シーンからで、ファンク、ソウル、ロックなどと共に、ナイトクラブにDJ、音楽、ダンスというダンスミュージックカルチャーが育ちました。

1971年にギャンブル&ハフが創立したPhiladelphia International Records(フィラデルフィア・インターナショナル・レコーズ)からリリースされる作品は”フィリーソウル”と呼ばれ、ファンク、ソウルなどを基に、ダンスフロア向けに制作された楽曲が1970年代に一連の世界的ヒットを飛ばし、そのほとんどの作品がシグマ・サウンド・スタジオで作られました。

ダンスミュージックの最たる特徴とも言える「四つ打ち」と呼ばれるドラムスタイルは、シグマ・サウンド・スタジオに在籍していたスタジオバンドMFSBのドラマーEarl Young(アールヤング)によって発明されました。そこにフィリーソウルの代名詞と言われる華麗なストリングスなど、卓越した演奏が加わり、今日のディスコ・サウンドの基本が作られ、以降、各レコード会社が競うようにディスコの曲を大量に制作するようになりました。

The O’Jays – I Love Music

その後、ギャンブル&ハフと金銭面の待遇で対立したMFSBの主要なメンバーがSalsoul Records(サルソウル・レコーズ)に移籍し、新たにSalsoul Orchestraが結成され、ここでも次々とヒット作を量産し、ディスコ業界をリードしました。

DJやプロデューサーによるリエディットの手法も生まれディスコ・ミュージックはよりタイトにダンサブルな音楽に発展しました。

70年代後半から80年代になると、シンセサイザーが多用されるようになり、イタロ・ディスコなどヨーロッパ産のディスコが世界的にヒットし、ディスコの発展に寄与しました。

Re-Edit(リエディット)の誕生

ディスコの曲は、レコード・プロデューサーの指示に従って、経験豊富なアレンジャーや、オーケストレーターによって編曲・作曲され、マルチトラック・レコーディングやエフェクト・ユニットなどを使い制作されていました。

ディスコの楽曲には64トラックものボーカルや楽器が使用されることもあり、大規模な楽器編成の複雑なアレンジを録音するため、ミキシング・エンジニアは、リール・ツー・リールによるテープ編集を行い、ディスコの制作過程で重要な役割を果たしていました。

完成された楽曲は7インチのレコードに収録され、約3分間の”ラジオに最適化”されたバージョンが標準でしたが、ディスコのミキシング・エンジニアとして活躍していたTom Moulton(トム・モウルトン)が、1974年にAl Downingの「I’ll Be Holding On」を制作した時からレコード制作のトレンドが変わりました。

レコードをテストプレスする際に、たまたま7インチの空きディスクがなく、代わりに10インチのアセテート盤にテストプレスすると、飛躍的に音質が上がったため、これをきっかけに、最終的にシングル曲が12インチレコードに収録されるようになりました。

それまでは12インチレコードというと、アルバムとして10曲程度が収録され、LPとして発売されるだけでしたが、シングル曲を収録するために使われることはありませんでした。収録曲数を少なくし、レコードの針がトレースする幅をたっぷり余裕を持って盤面に収録することが音質アップに繋がることを発見したわけです。

より長い時間の収録が出来るようになったため、ミキシング・エンジニアは、DJやダンスフロアのダンサーたちの要求に答えるように、トラックをイントロ、ヴァース、ブリッジ、コーラス、ブレイク、アウトロなどの構成ごとに分け、曲のイントロを伸ばしたり、不要な部分をカットしたり、ベースを大きくしたり、時には新しい楽器を加えるなどの再編集をし、エクステンデッド・バージョンを制作し始めました。

Tom Moultonを始めに、Larry Levan、Jerry Bean、Shep Pettibone、Tee Scott、Francois Kなど、DJたちがプロデューサー / ミキシング・エンジニアとして、既存の曲をダンスフロア向けに編集する「リエディット・バージョン」が次々と生み出され、ディスコ・サウンドの発展に貢献しました。

ディスコに対するリスペクトを基にRe-Edit文化は今日まで続いており、キックを補強するために、別のキックやサブベースを足したり、スネアやハイハットに音を重ねたり、BPMが揺れないようにグリッドを合わせ、ボーカルや楽器、サンプルを足すなど、DAWの飛躍的進化により、緻密な編集が可能となっています。

よくある疑問点として、Re-EditとRemixの違いについてがありますが、Remixが原曲の素材を自由に使って新しい楽曲を制作し、時に原曲が判らないほど編集されることもあるのに対して、Re-Editはあくまでも既存の楽曲の原型を留めたまま編集することが主眼に置かれています。しかし、実際にはその境界はかなり曖昧なものであり、制作するアーティストやレーベルの認識次第で変化すると言えそうです。

Nu Disco(ニュー・ディスコ)とは?

このジャンルの先駆けた存在として、”Nu Disco”という名前が命名される以前の1993年から1998年に、DJ HarveyとGerry Rooneyによって設立された<Black Cock Records>があります。

Black Cock – On The Nest

このレーベルはディスコやファンクの非公式なリエディットをリリースすることに重点を置いて、ハウス・ミュージックのプロデューサーたちに大きな影響を与えました。ディスコの魅力を再び掘り起こすきっかけとなり、多くの人たちがハウス・ミュージックにディスコの要素を取り入れるようになりました。

また、Daniel Wangは1993年に自らのレーベル<Balihu>を設立し、ディスコサンプルを盛り込んだレコードをリリースし始めると、<Playhouse>、<Environ>、<Ghostly International>などのレーベルから多くのコズミックなディスコを発表しました。

Daniel Wang – All Flowers Must Fade

その他に、1995年に設立された<Nuphonic Records>では、Nu Discoのパイオニアと言われるIdjut Boys、Faze Action、Lajらが在籍していました。Idjut Boysは、”Disco Dub”と呼ばれるディスコとダブを合わせたスタイルを開拓したことで知られています。

F.i.t.s. vs The Idjuts -Deborah Dub (Version Idjut)

Faze Action(フェイズ・アクション)は、ディスコの手法を取り入れ、ライブ演奏でハウスミュージックを制作した最初のダンスミュージック・バンドの1つです。Joey Negro(ジョーイ・ネグロ)のThe Sunburst Bandや、Crazy Pもハウスミュージック・バンドのパイオニアと呼ばれています。

FAZE ACTION-Turn The Point

1990年代後半~2000年代半ばになると、メインストリームではディスコにインスパイアされたダンスミュージックが人気を博し、フレンチ・ハウス、ファンキー・ハウス、ディスコ・ハウスと呼ばれるジャンルが成功を収め、数多くチャートに登場しました。

Kylie Minogue(カイリー・ミノーグ)の「Spinning Around」、Daft Punk(ダフト・パンク)の「Around The World」や、Daft PunkのThomas Bangalterが参加したユニットStardustの「Music Sounds Better With You」、Jamiroquai(ジャミロクワイ)の「Little L」などの人気曲がありました。アンダーグラウンドな音楽のNu Discoとは違う形でディスコが取り入れられ始めた時期でした。

2002年には”Nu-Disco”という名称がメディアで使われ始め、「1970年代のディスコやファンクに現代のテクノロジーとピンシャープなプロダクションを適用した結果、ニューディスコが誕生した」と表現しました。

2002年にリリースされたMetro Area(メトロ・エリア)のセルフ・タイトル・アルバムは、このジャンルの名盤の一つとなっています。必要最低限なパーツで構成されたミニマルなディスコ要素とタイトなリズムプロダクションが各メディアから絶賛されました。

Metro Area – Miura

2000年代以降のニューディスコのプロダクションは、新たなサウンドを獲得し、様々なローカル・シーンで展開されました。

特にノルウェーでは、Lindstrøm(リンドストローム)、Prins Thomas(プリンス・トーマス)、Todd Terje(トッド・テリエ)など新たなスターDJが次々と誕生し、シンセサイザーを多用したスペーシーなディスコ・サウンドで、北欧ディスコシーンを世界に広めることとなりました。

Lindstrøm – Closing Shot

Prins Thomas – S.O.S

Todd Terje – Inspector Norse

また、Nu Discoはバレアリック・シーンとも繋がり始めます。

バレアリック・ビートとNu Discoの親和性は高く、Nu Discoのテンポをさらに落とし、スローなサウンドと融合し、新しい影響を作り出しました。

バレアリック・ビートは、バレアリック・ハウス、バレアリック・チルアウト、またはイビサ・チルアウトとも呼ばれ、1980年代半ばにイビサで登場したダンス・ミュージックの折衷的なブレンドです。

元々のバレアリック・ビートは、ハウスやイタロ・ハウス、ディープ・ハウスの影響を受けたサウンドと、スローなR&Bの影響を受けたビート、さらにソウル、ラテン、アフリカン、ファンク、ダブの影響を受けたサウンドなど、何でもありな折衷的なものでしたが、現代的には「チルアウト」や「ダウンテンポ」のジャンルに吸収されており、スローなBPMのチルな要素を持つサウンドを意味することが多いです。

バレアリック・ビートの影響を強く受けたヨーロッパのシーンで、バレアリック・ビート・リバイバルとも言える流れが生まれ、<Is It Balearic?><International Feel Recordings><Aficionado Recordings><Claremont 56><Golf Channel><Red Motorbike>などのレーベルから良質なトラックが多数リリースされています。

The Project Club – El Mar Y La Luna

Rocha – Feel The Love

Project Club – Intro (Ray Mang Remix)

Jose Padilla – Day One (Telephones Remix)

Shawn Lee’s Ping Pong Orchestra – San Diego (Tour Werks After Hours Mix)

Jaime Read – Is It Real What U Feel?

2008年7月、Beatportはジャンルのカテゴリに「Nu Disco / Indie Dance」を追加し、「70年代後半から80年代前半のエレクトロニックなディスコ、ブギー、コスミック、バレアリック、イタロのディスコの連続体から生まれたすべてのもの」としていました。尚、現在は「Nu Disco / Disco」と「Indie Dance」に別れており、別のカテゴリとして扱われています。

2010年代以降、Nu Discoはさらに人気を高めて、ディスコとハウスミュージックとの境界線を行き来し、メジャー、アンダーグラウンド両方にマッチするような楽曲が増えています。

Nu Discoの音の傾向

現在のNu Discoシーンでは、プロダクションの幅が拡がり、70〜80年代のディスコの楽曲を基にリエディットしたものと、生楽器を演奏したり、打ち込みをして一からオリジナルで作られるものがあります。

どちらのスタイルにも共通している点は70〜80年代のディスコに対するリスペクトをベースに制作されているという点で、時代背景を無視したような音が使われることは少ないです。

例えば、シンセやドラムを加えるにしても、実際に70〜80年代に使用されていたような音色を選ぶことが多く、現代的で逸脱したノイジーな音が選ばれることは少ないということです。

リエディットなら基となる作品、一から作られた作品ならインスパイアされる年代によって、使用される機材は代わります。70年代ならアコースティックな楽器の割合が増え、80年代ならドラムマシンやシンセの割合が増えてきます。

曲のアレンジに関してはディスコの伝統的なヴァースとコーラスの構成というよりは、エレクトロニック・ミュージックを踏襲している傾向があり、反復的なセクションを中心に、コーラスに向かってゆっくりと上昇し、再び下降していくものが多いです。作品によりますが、飽きさせないようにフィルターやリバーブなどで変化を付けながら、テンションを維持する工夫が施されていることもあります。

  • サンプリング的な使い方ではなく、素材を生かした構成
  • 作品背景に合わせた音作り
  • 70年代ならアコースティックでタイトな楽器
  • 80年代ならドラムマシンやシンセ
  • コンガ、ボンゴなどパーカッションを多用
  • ドラムを補強するため、サブベースやドラムサンプルを重ねる
  • クラップ音などで2拍目、4拍目が強調されることが多い
  • ファンクなカッティング・ギターによるリフ
  • 華やかなストリングス、ホーン、またはシンセパッドで空間を広げる
  • オクターブやスラップなど動きのあるベース
  • 華やかで明るい曲調が多い

Nu Discoのおすすめ

The O’Jays – I Love Music (Joey Negro Sweet Music Mix)

ATFC – Sleep Talk feat. Lisa Millett (Dr.Packer Extended Remix)

Diplo & SIDEPIECE – On My Mind (Purple Disco Machine Remix)

Tornado Wallace – Start Again

Midland – Final Credits

Diana Ross The Boss (Dimitri From Paris Remix)

Earth, Wind & Fire – Shining Star (The Reflex Remix)

Chicken Lips – He Not In

Lighthouse Family – Question Of Faith (Idjut Boys Remix)

Poolside – Do You Believe?

Eddie C – The Touch

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