パリのエッフェル塔でDJできるなら、東京タワーでだってDJできるに違いない。今回は、まったく役に立たないDJロンリープラネット [芝公園編] をお送りします。
東京タワーでDJする方法
東京タワーって何ですか?
さて、東京タワーの所有者は誰かというと、株式会社東京タワーです。そのまんまでした。
元々は日本電波塔株式会社という、むやみにデムパな名前の会社。これは大阪の新聞王、前田久吉さんという方が作った会社で、前田さんは産経新聞とラジオ大阪を創設した大金持ち。
彼は巨大なラジオ塔を展望台付きの観光名所として活用すれば、莫大な利益が得られると考え、私財を投じて建設資金を調達。なんと政府も東京都も各テレビ局も出資していません、大阪商人が個人で作ったのが東京タワー。
建築設計は内藤多仲さんという方が担当し、エッフェル塔を参考に、より耐震性などに優れた構造に変更。1958(昭和33)年12月23日に完工、開業します。
ここからNHKを始めメジャー5局の電波を飛ばす電波塔として機能しながら、東京を象徴するシンボルとして観光地化。2013年、その実務的役割をスカイツリーに譲ってからは、純粋に観光地として機能しています。
早速、東京タワーでDJしたい場合、どうなるのかシミュレーションしてみますが、3パターンあります。
① Club333(地上168m)
メインデッキにある、ガラス張りのパフォーマンスラウンジ、スタンディングでCAP70人。プロ仕様のステージ、ハイエンドのサウンドシステム、巨大な260インチの4K LEDモニターを完備。
いかにもイベント貸し&撮影のために作られたスペースです。

ザ・東京!な絶景に囲まれてDJできるので「オレって天才‼」モードになれそう。DJブースだけだともったいないので、ダンサーやバーテンダーやいろんなパーティ・プロップを用意して、ゴージャスにセッティングしたい感じ。
ここは外国人旅行者や、実家のお父さんお母さんを連れて来ても大変喜ばれるのではないでしょうか。
② 東京タワーホール(地上14m)
タワーの下(表示はB1)にあるCAP200人のイベントホール。200人だと本格的なクラブができます。見晴らしはゼロですが、なかなか現実的な規模感。

このタイプの貸しホール、調光できない蛍光灯が入っているかもしれません。貸し切るとしても真っ暗はNGで、何ルクス以上にしろとか言われそう。暗くできない=気の抜けた感じになってしまうかも。
かといってトラス組んでバンバン照明入れるわけにもいかなさそうなので、照明さんと要相談。
③ フットタウン・ルーフスクエア(地上43m)
タワーの4つ足の合間にあるような、CAP150人のスペース。こちらは見上げるとタワーが内側から見えるルーフトップ。屋外なので冬は寒いです。何デシベル以内と、音の規制がありそうな予感。

①~③すべて、現場では東京タワーの全景が見えないので、ステキな映像を作りたい場合、天気のいい日に野外ロケをして、全景を撮る、ドローン、エレベーターや階段で上るシーン、セットアップBTSといったフッテージを別途撮影する必要がありそうです。映像ディレクターさんと相談。
周辺施設
東京タワー株式会社ではない会社がやっている、タワー周辺のイベントスペースがいくつかあります。CAP250人のRED° SKYSTADIUM、3つのスぺースとメイクルームや控室まであるStarrise Towerなど。
図面や機材リストがDLできるので、レンタルスペースとはどんな感じなのか見てみたい時に良いかもしれません。
How much?
気になるお値段ですが、②と➂は30万円と書いてあります。①は要問い合わせで、同じ日に借りたい人が2者以上いる場合に競合となり、値段が吊り上がるようです。
ここにDJ機材、音響設備レンタル代、エンジニア人件費など含めると、80~150万円あれば何とかなりそうです。すでにクラブやショップ経営していて、機材もエンジニアも自前や友達ハイヤーでOKな人は、50万円で何とかなるかもしれません。
ピラミッドよりはお手頃な気がしてきました。
問題なのは時間。①は21時まで、②と③は22時まで。その中でも自由に使えるわけではなく、一般公開時間との兼ね合いで、調整が入ります。一晩中東京タワーDJは不可能。
また、過去開催イベントが閲覧できるようになっているのですが、ほとんどが大企業のプロモーションや、文化団体の記念行事、もしくは地方自治体がらみのイベント。どうやら借り手の審査があるらしいです。
会社謄本を提出し、法人設立〇〇年以上、資本金〇〇円以上、役員リストと主な取引先の開示、過去イベント実績、といったチェックが入ります。
つまり、東京タワーで彼女にプロポーズしたいので30分貸し切りさせてください、とか、友達のバースデイバッシュのために東京タワーでDJパーティを開催したいです、とかいう個人利用はNG。
結構まともな会社が主催の、結構マジメなイベント企画書を持って行かないと、審査に通りそうにありません。
またこの手のレンタルは事前全額払い、もしくは事前半金入金で予約確定なので、ポップアップ・クラブをやってチケットを売ったお金で後払いは不可です。

見取図を観ると、一番上の地上268メートル「トップ・デッキ」でDJしたら気持ち良さそうですが、ここは企業にも貸していないとのこと。絶対ココでないといけない国の行事や、超重要イベントだけ交渉可能だそうです。
どこぞの国の大統領が来たら、政治家カクテルパーティでもやるのでしょうか。

そもそも一個人が営利目的で建てたくせに、一番おいしいエリアは、お国の一大事じゃないと貸さないとは、これいかに。
いずれにしても個人で借りるのは無理なので、企業スポンサーを見つけて、そのスポンサーが主催者ということにして書類審査を通してもらう必要があります。
法務局に行って全部履歴を取ってきて提出しないといけないという、リーガルトラップ。お値段的にアリかもと思ったら、タームス&コンディションでコケました。東京タワーでハウスかけたいのと、取締役や監査役が誰かというのと、一体何の関係があるというのでしょうか。
タリフが載っている「ユニークべニュー東京」というサイトによれば、浜離宮(600万円~)や都内の美術館(200万円~)なども借りられることになっています。スカイツリーだと展望デッキが220万円~。
なぜ東京タワーだけ30万円と格安なのか謎ですが、結局どこもかしこも書類審査と支払い条件が待ち構えています。
夕暮れの東京を見下ろしながら最高の一曲をプレイするDJさんたちを妄想していたのですが、目の前に立ちはだかったのは「資本金」「設立年数」「履歴事項全部証明書」という、あまりにも冷徹な大人の現実。
クラブの入口にいる屈強なセキュリティならまだしも、コンプライアンスという名の強固な壁にガッチリ門前払いされた格好で、東京タワーの高さを思い知らされました。



