2021年はクラブの営業停止から、徐々に営業を再開し再びダンスミュージックが活気を取り戻し始めるまで、様々な状況の中で曲がリリースされ、たくさんの刺激がありました。
例年通り世間一般の人気度は一切考慮せずに単純に素晴らしいと感じられたトラックをチョイスしました。新たな発見につながる曲があれば幸いです。
ランキング形式ではなく、なんとなく良い流れになるように並べましたので気になった曲があればチェックしてみてください。
それでは、2021年の「ハウスミュージックラバーズ」が選ぶベストハウスミュージック15曲を発表させて頂きます。
2021年ベストハウスミュージック【15トラック】
Marco Shuttle – Acrobat [Incienso]
ベルリンを拠点に活動するイタリア出身のアーティストMarco Shuttle。
「Acrobat」は2年間に渡って録音された様々なトラックを収録したサード・アルバム「Cobalt Desert Oasis」からの一曲です。
Marco Shuttleはしばしば人里離れた場所へ旅をして、フィールド・レコーディングを行い、そのイメージ、インスピレーションをスタジオで音楽に変えています。
「Acrobat」ではペルシャの伝統的なハンドドラム「Tombak」が小気味良いフィーリングを醸し出し、ミニマルでサイケデリックな電子音と混ざり合い新たな表現を生み出しています。
Unknown Artist – Untitled B2 (TELUM 007)[TELUM]
ヴァイナル・オンリーの詳細不明のレーベル<TELUM>。アーティスト名も曲名もアートワークもない、ただ音楽が語りかけてくる作品です。
Telumのレコードは、Ricardo Villalobosをはじめ、Raresh, Petre InspirescuなどミニマルシーンのトップDJたちからサポートされています。
浮遊感のあるアブストラクトなシンセに、確かなプロダクション・スキルから生み出されたグルーヴィで洗練されたリズムのミニマルハウスでいつまでも踊り続けることが出来そうです。
O’Flynn – Talia [Panthus]
ロンドンのBen NorrisによるプロジェクトO’Flynnは、<NInja Tune>からのリリースで注目を集め、2019年にリリースしたファーストアルバム「Alethea」が高く評価されている実力派アーティスト。
自身の新たに立ち上げたレーベル<Panthus>からのファーストリリースである「Talia」は、サンプリングされた音を中心にリズムが組み立てられ、そこにピアノの音色やシンセサイザー、ボイスサンプルが緻密に加えられています。
ブレイクビーツとアフリカン民族音楽に西洋的な電子音楽が混ざった素晴らしい世界観のトラックです。
Dennis Cruz ft. Leo Wood – What U Doing (Mousse T´s ‘Deep Shizzle’ Extended Remix) [Crosstown Rebels]
Damian Lazarusのレーベル<CROSSTOWN REBELS>からリリースされたDennis Cruzによる「What U Doing」をドイツのハウス界の重鎮Mousse Tがリミックスしたトラックです。
ブリストル出身の才能あるボーカリストとして急速に頭角を現すシンガーソングライターLeo Woodをフューチャーしたディープ・テック・ハウスを、幸福感に満ちたコードのアップビートなピアノトラックに置き換え、ダンスフロア向けのリミックスに仕上げています。
上げ過ぎずにイイ感じにフロアをキープしてくれるこのような曲はDJにとって本当に使いやすいです。
Austin Ato featuring Niles Mason – Linger [Classic Music Company]
Austin AtoはスコットランドのDJ / ミュージシャンで、これまでに<Phonica White>、<Defected>、<Futureboogie>、<Delusions Of Grandeur>などのレーベルからリリースしています。
<Classic Music Company>からリリースされた前作「Heat」は、Honey DijonやDisclosureなど多くのアーティストから支持されましたが、今作「Linger」では、さらなるプロダクションとソングライティングの多様性を示しました。
生演奏の鍵盤を使った純粋なゴスペル・ピアノと、アトランタのシンガーソングライターとして高い評価を得ているNiles Masonのソウルフルな歌声が印象的な90’sハウス・フィーリングに溢れた一曲です。
Bernardo Mota – Time To Work [Miura Records]
ポルトガルのアンダーグラウンド界の新鋭、Bernardo Motaによる作品。
デジタルジャケットにプリントされたシュワちゃん(の筋肉)を連想させるようなパワフルなトラックは、モーダルなコードワークにアシッドベースが散りばめられたアンダーグラウンドニューヨークハウスに合わせて、シカゴハウスの影響も感じさせるフロア向きのダンスミュージックです。
ぐるぐると回るボイスサンプルが地下フロアの観客を異次元へと飛ばしてくれます。
John Summit – Make Me Feel [Insomniac Records]
John Summitは2020年にDefected Recordsからリリースした「Deep End」がBeatportで年間1位を獲得するなど特大ヒットし、一躍ダンスミュージック界の注目株となりました。
Spotifyの月間リスナー数は300万人を超え、Beatportでは過去12カ月間にすべてのジャンルで最も売れたアーティストとなっています。
<Insomniac Records>からリリースした「Make Me Feel」は王道のテックハウスといった趣で、中毒性のある女性ボイスサンプルが一度聴くと耳から離れなくなります。
Solid Gold Playaz – Let Me See You Jack [Freerange Records]
Kenny GinoとBig Mike TによるUSのプロダクション・デュオ、Solid Gold Playazは、20年以上に渡って一貫した品質の作品をリリースしてきました。
「Let Me See You Jack」はJimpsterが運営する老舗レーベル<Freerange Records>からリリースされ、二人のトレードマークであるディープなベースラインに、ショートディレイを施したドラムトラックが「Let Me See You Jack」というボーカルを際立たせています。
シカゴのジャッキンなサウンドとデトロイト・フィーリングを漂わるソリッドなトラックはフロアのシークレットウェポンとして機能するでしょう。
Make A Dance – Somebody [M.A.D Sounds]
Make A Danceはロンドンを拠点に活動するDJ、BenとJoshのデュオ・ユニットです。
「すべての音楽はダンスのために作られているので、ダンスを念頭に置かなければならない。」というスローガンを掲げ制作されたトラックは偽りのないダンス推進力を備えています。
「Somebody」が収録されたデビューEPのレコードは発売直後に即完売するほどの人気でした。
今後も要注目のアーティストで、近日発売が予定されている2nd EPにも期待が高まります。
34th Floor Experience – Love Will Find A Way (Nico Lahs remix) [Mate]
スペインのレーベル<Mate>からリリースされた34th Floor Experience「Love Will Find A Way」は、オリジナルも素晴らしいトラックですが、よりメロウでディープなバージョンとしてNico Lahsのリミックスがあります。
南イタリア出身のNico Lahsはイタリアの優れたハウス・プロデューサーの一人として知られています。
2011年にJosh Winkの<Ovum Recordings>からEPをリリースし、2012年にはSteve Bugの<Poker Flat>からもEPをリリースしています。
Nico Lahsはハウスを作るだけでなく、シカゴやデトロイトの歴史に深く根ざしたヒップホップ、ダウンテンポを作ることにも長けており、メロウな雰囲気から始まり、サンプル、ハードウェア、芸術性を巧みに操っています。
Nebraska – Your Love Is True [Friends & Relations]
UKのプロデューサー、Nebraska(本名Alistair Gibbs)は、温かくアトモスフェリックでありながら、サンプルを多用した21世紀型のディスコ作品をリリースしています。
「Your Love Is True」は、2016年に設立された自身のレーベル<Friends & Relations>からリリースしたトラックで、近年で最もエキサイトな作品となっています。2010年にアムステルダムを拠点とするレーベル<Rush Hour>からリリースされた「This Is The Way」のような軽快なタッチのディスコサウンドにディープなベースサウンドが見事なバランスを構築しています。
Alaia & Gallo Featuring Kevin Haden – Who Is He (The Reflex Revision) [Glitterbox]
ロンドンを拠点に活動するフランス出身のThe Reflexですが、近年の活躍ぶりは説明不要でしょう。リミキサーとして絶大なる信頼を集め、<Salsoul>、<Z Records>、<Toolroom>などの名門レーベルを含め、多数のリリースを重ねています。
「The Reflex」という名前は、ナイル・ロジャースが1984年にデュラン・デュランの同名曲をリミックスしたことへのオマージュであると同時に、DAWソフトLogic Proのリズム補正ツール「Flextime」(オーディオファイルの変更と同期を可能にするツール)にちなんだものだと言います。
本作は<Defected>のサブレーベル<Glitterbox>からリリースされたAlaia & Gallo Featuring Kevin Haden「Who Is He」のリミックスで、完全にオリジナルを超えてしまっている完璧な出来栄えの一曲です。
SunPalace – Rude Movements (OPOLOPO Remix) [BBE Music]
1981年代にロンドンで録音されたSunPalaceの「Rude Movements」は、もともと「Winning」というトラックのB面としてリリースされました。発売当初は無名のものとして扱われていましたが、David Mancusoが<The Loft>でプレイしたことで知られることになりました。
2020年に<BBE Music>から限定7インチでリリースされたMoodymannとKenny Dopeによる「Rude Movements」のリミックスに続き、2021年にFrançois K、Frankie Feliciano、OPOLOPO、Phil Asherによるリミックスが加えられ「Rude Movements Remixes」としてアルバムがリリースされました。
スウェーデンのリミックスキング、OPOLOPOは、ハウス、ブギー、ブロークンビート、ファンク、ソウルなどを散りばめた作曲とプロダクションで20年以上にわたり活躍し、<Local Talk>、<Z Records>、<Om Records>、<Warner Brothers>、<Defected>など多数のレーベルからリリースを重ねています。
LUXXURY – Baby Please Don’t Go (Oooh No) [Too Slow To Disco]
1970年代中盤から後半のUS西海岸のAOR/ソウル/ファンク/ジャズフュージョン/ディスコを中心としたコンピやエディットをリリースするドイツのレーベル<How Do You Are?>のサブレーベルである<Too Slow To Disco>からリリースされたトラック。
LUXXURYことBlake Robinは、2000年代初頭からキッチュ、ポップ、ディスコ、ロックの間を彷徨い、その間に多くの重要なリリースをしてきました。
「Baby Please Don’t Go (Oooh No)」は、Chicagoの名曲「If You Leave Me Now」をバレアリックで幽玄な雰囲気にリエディットし、昔ながらのテクニックと最新のテクノロジーを組み合わせたオーガニックなサウンドになっています。
Los Ninõs – Star Odyssey [Rebirth]
ミニマル/テックハウスシーンのスーパースターLucianoとMichel Cleisによって結成された新プロジェクト、Los Niños。
Pat Methenyの「Slip Away」を元ネタに、Dominique Favre(キーボード)、Marcello Giuliani(ベース)、Eugene Montenero(ギター)の3人が楽器演奏し、Los Niñosがプロデュースしたバレアリック精神に溢れたディープテックハウスです。
同じ元ネタを使ったNick Holderの「Summer Daze」はハウスミュージックの金字塔的作品として知られていますが、壮大なスケール感を持つ「Star Odyssey」も負けず劣らずの素晴らしい作品となっています。