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日本のダンスミュージックシーンに潜む課題

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「日本のダンスミュージックシーンに潜む課題」とは、なんと仰々しいタイトルでしょう。

このような話題は全員にとって耳心地がよい言葉はなく、意見の相違は出てくるものです。

物事はすべてが良い方向に行くわけではないし、人によってそれぞれの立場や信じるものがあり何が正しいかは分かりません。

しかし、政治経済を見ていると、国民一人一人がぬるま湯に浸かり続けた結果が今の日本の不穏な空気なのだと思わずにはいられません。

ダンスミュージックシーンには関係ないと思いますか?

最近、一般的なニュースサイトで「UKのクラブで閉鎖が増えていて、今後も増えるだろう」という記事に対して、コメント欄で「クラブやダンスミュージックがなくなっても誰も困らないよ」なんて辛辣なカキコミを見ました。

しかも、そのコメントが結構「イイね」されてるんですよ。苦笑

J-POPでも四つ打ちやダンスミュージックを取り入れた曲が普通にチャートインしてるし、クラブカルチャーも長きに渡り存在しているので、もう少し市民権を得ているものだと思っていました。

ショックでしたが、それをキッカケに「ダンスミュージックシーンにまつわる課題」について、自分なりに考えてみることにしました。

今回のトピックは個人の主観的考えに基づいており、音楽のジャンルや場所、各人の立ち位置や考え方によって大きく状況や見え方が異なることがあると思いますので、不快な表現になっていた場合はご容赦ください。

目次

少子高齢化


世界に先んじて少子高齢化に突き進む日本は、この局面を受け入れ、あらゆる面でうまく順応していく必要があると感じています。

これは政治経済の話だけでなく、サブカルチャーにおいても例外ではありません。

20代〜30代が主要客層であるDJ、クラブミュージックといった業界はその影響をダイレクトに受けていて、徐々に変化が見え始めています。

単に少子高齢化だけが原因ではないけれども、大きな問題の一つであることは確かでしょう。

現状、コロナ明けの反動や円安によって日本に訪れる外国人観光客が非常に増え、都市部は賑わっています。

しかし、インバウンド需要の高まりに誤魔化されている部分がありますが、確実に日本のクラブ人口は減っています。

今後、円安傾向が続くのかはわかりませんが、例えば、円高になって外国人観光客が減少した場合どうなるのでしょうか?

すでに導入しているお店も存在しますが、対応策の一つとして、18歳からクラブに入場出来るようにするのも一つの方法かもしれません。

お酒の販売の年類確認、完全な分煙化、地域社会への見え方などクリアすべき問題点はあるけれど、集客が増える可能性があります。

また年齢制限をなくして誰でも入場出来るようにするため、オールナイト営業ではなく昼から夜までのイベントを定着させるための取り組みも必要かもしれません。

日曜日にデイイベントを行うクラブは少しずつ増えて来ていますが、ライブハウスのように10代の子たちでも健全な形で気軽に参加出来るような環境があれば新しい芽のようなものが生まれそうな気がします。

飲酒量の減少

日本ではアルコール消費量が減っていて、特に若い世代ほど飲酒習慣が減少傾向にあります。

飲酒を推進するわけではありません。

飲む飲まないは人それぞれですから。

しかし、店舗側から見るとドリンクの売上は経営を支える柱の一つですから、飲酒量が減ると厳しいのは確かでしょう。

今後、飲酒しない人向けにノンアルコールビール、ノンアルコールカクテル、趣向を凝らしたソフトドリンクなど、ドリンクメニューを充実させたり、おつまみや軽食などを用意するクラブも出てくるかもしれませんね。

クラブのハブ的な役割の薄まり

それは愛だの恋だの恋愛事情だけではない、人と人の繋がりを構築する役割のことです。

クラブには音楽を楽しむ、踊る、お酒を飲む、仲間と話をするなど楽しみ方は色々とあります。

人と人との出会いも楽しみの一つです。

男女間の出会いだけで考えても「SNS」「マッチングアプリ」「相席居酒屋/ラウンジ」「オンラインゲーム」など、多様な出会いツールの登場により、クラブが持つ出会いのハブ的な役割が薄まって来ています。

しかしながら、クラブには”同じような音楽が好きな人たちが一同に集まる”という他のツールにはない強みがあります。

日常の生活で共通の趣味を持った人々に巡り会うことはなかなか大変です。

何事もバランスが大事ですが、たとえ音箱と呼ばれる音楽が主体のクラブであったとしても、人と人の繋がりを促進する試みがあっても面白いのかもしれません。

風営法による制限

風営法による制限は色々ありますが、その一つに照明の明るさがあります。

風営法による取り締まりが厳しくなったため、昨今は店内が明るいクラブが増えましたが、これにより没入感が減ってしまったことは残念な点です。

特に日本人は世界的に見てもシャイな民族ですから、明るすぎるとダンスを見られるのが恥ずかしいのよ。笑

店内が明るいと健全なイメージではあるのですが、クラブに入った時の非日常感と言いますか、ドキドキ感は減ってしまいましたね。

音楽や空間にふさわしい雰囲気作りや演出というものがありますが、クラブの照明もその一部です。

この問題については風営法が改正される以外どうしようもないですが、今後、クラブカルチャーに理解を示す議員が増えて、もう少し自由に表現出来るようになると良いですね。

喫煙環境と禁煙環境の共存

現状、喫煙者は日本人の3割ほどで年々減少しており、非喫煙者が7割ほどを占めているわけです。

しかし、対策が出来ていない店舗が多いのが現状で、簡易的な分煙で出来ているつもりの店舗も多いです。

これは非常に不可解な現象で、長い目でみるとマイナスなように感じてしまいます。

特に女性はファッション、美意識、健康への関心が高く、タバコの煙を好んでいません。

わざわざ、タバコの煙がイヤだからクラブへは行かないと教えてくれる人は少ないです。

来なくなる人は無言で立ち去り、2度と来なくなるのです。

とはいえ、喫煙出来る店というイメージがついている既存店は、急な方向転換するのは経営的なリスクがあるというのは分かります。

新規店舗であれば迷わず完全な分煙環境にすれば良いだけの話ですが、既存店は策を練りうまくやる必要があります。

喫煙ボックスを設置する金銭的余裕やスペースの問題などがあるかもしれませんが、喫煙者、非喫煙者が双方快適に過ごせるように最善の策を講じる必要があると感じます。

音の良い環境が減った?

これは特に主観的なパートになります。

音の良い環境がないということではなく、「減ったのではないか?」ということです。

これは店舗や設備側の話だけではなく、DJやトラック制作者側の話でもあります。

例えばDJでは、WAVやAIFFなどのロスレスではなくmp3でのプレイも当たり前に行われています。

学生であったり、生活費に余裕がないなど、みんながロスレスを買う余裕があるわけじゃないのは理解できますし、mp3でのリリースが主流のジャンルもあったりするので、仕方ない部分もあります。

また音楽は音質だけが全てではなく、心打つ歌詞やメロディー、うっとりするようなハーモニー、心踊るリズムなど音質が最良でなくても音楽を楽しめることは承知しています。

しかし、デジタル音源一つを例にしてもハイレゾ、WAVやAIFFなどのロスレス、mp3とフォーマットを選べ、USBメモリやSSDの容量も大きく増えた時代にわざわざデータが間引かれた低品質なフォーマットを優先的に選ぶメリットはあるのでしょうか?

理由や意図がある場合は別として、業界をリードするプロのDJが理由もなくmp3でプレイしているとしたら個人的に悲しいです。

第一線で活躍するプロが鳴らす音楽が未来の若者たちの耳と感性を育てると思うからです。

現代はストリーミングやYoutubeなど圧縮音源だらけの日常ですから、せめてベストな音楽をプレイして、特別な体験を提供して欲しいのです。

一方、トラック制作者側では音楽制作にプラグインを多用しすぎて、音の本質から外れて気持ち良さからは遠ざかっているのではと思えるケースがよくあります。

自然界から大きく離れすぎた音処理は、よりクリアだったり、よりワイドだったり、より濃厚に聞こえたとしても、本質的には心地良く響かないものです。

例えばこういった話があります。

音の響かない無響室に入った場合、ほとんどの人はそわそわして数分も経たずに出てくるそうです。

人が生活する自然界に音の響かない空間は存在しないから、居心地が悪く本能的に落ち着かないといいます。

確かにデジタル技術は便利で、日常生活においては利便性が上がるならばドンドン活用すれば良いと思います。

しかし、芸術分野においては違う尺度が必要なのではないかと思うことがあります。

芸術すなわち人間の極地点は肉体的インパクトを伴うアナログ領域にあり、私たちの身体はデジタル信号をそのままインプットすることは出来ません。

人の感覚がデジタルの音かアナログの音かを明確に区別出来る、出来ないという知覚の話ではないです。

これは本人が知覚していなくとも目はまばたきを繰り返し、意識せずとも呼吸をしているように無意識の領域で行われていることです。

現実世界の感覚は強烈で心地良く、原始的に血湧き肉躍るようにインプットされているのです。

誤解して欲しくないのは、デジタルをなくして、アナログにしようという話ではありません。

現代において、それは現実的ではないでしょう。

アナログ領域では時として最高点を出せることがありますが、安定して最高得点を出し続けれることはなく、時に30点や50点が出ることもあります。

一方、デジタル領域では最高点は出ないが、70点を出し続けれる安定性とタイムパフォーマンスの良さがあります。

常に70点を出し続けるのがプロの仕事だという意見もあるでしょう。

ここで言いたいのは、デジタルの便利さに飼い慣らされることを拒否し、もう少し野生味を取り戻す冒険をしても良いのではないかということなのです。

DJ論

SNSではDJがDJについての知見を述べると、「DJ論」として忌み嫌われる傾向があります。

おそらくは見聞きした人はマウントを取られてる気分になるのだと思います。

特にSNSでは一方的に発信することが多いことから、押し付けに見えるのでしょう。

しかし、DJが発信することを「DJ論」と一括りにまとめて揶揄するのは考えものです。

発信している側には「どうだ俺すごいだろ」って人もいれば、「自分を売り込むため」って人もいます。

そのほかに「情報交換」や「問題提起」「意味ある発信」でコミュニティを活発化して自身も成長したいという意図を持っている人もいるように見えます。

DJがDJについて述べ、意見交換や議論すること自体は自然で良いことだと思います。

むしろ、同調圧力が働き「DJ論と思われて嫌われるから」と誰も意見しなくなり、コミュニティが沈黙していくことの方が良くないのではないでしょうか。

しかしながら、人によって熱量の違いもありますので、難しい部分ではありますが、不快感を与えないようにバランスをとる必要はありそうです。

DJという求心力の衰え

ダンスミュージックの本質的なライバルは、「カラオケ」「オンラインゲーム」「Youtube」「動画ストリーミング」など、他の魅力的なコンテンツではないでしょうか?

これからのダンスミュージックはこれらを圧倒する魅力的なコンテンツを生み出さなければなりません。

DJという求心力の衰えの一つの原因としてデジタル技術の発展があります。

デジタル技術の発展は初心者がDJを行うことを容易にし、多くのDJ志願者たちに門戸を開きました。

これは非常に素晴らしいことで、DJに興味を持つ人が増え、ダンスミュージック人気が高まる要因にもなりました。

一方で、誰もが簡単にDJが出来るようになったことで、「誰にでも簡単に出来る」「誰がやってもそんなに変わらない」という誤った情報までも伝えることにもなってしまったのです。

選曲重視のDJではなく、CDJの機能を活用したトリックを多用するDJが増えてきているのはそういった状況があるからかもしれませんね。

DJギャラなし

誰でも簡単にDJが出来るようになったがゆえに、DJを集めることが簡単になりました。

また多くの人がギャラを払わなくてもDJをしてくれるのです。

しかし、これは長い目で見ると良くない慣習のひとつでしょう。

DJはパーティーを少しでも楽しくするために、日々時間とお金をかけてDJ技術の研鑽をしています。

その対価として、例え気持ち程度の少額であってもギャラを渡すことはDJ文化を発展させるうえでの大事なポイントだと思います。

今はレコードなら一枚3000円、デジタルなら一曲1〜3ドル(日本円で150円〜450円)ぐらいで購入出来るでしょうか?

ギャラの支払いは直接DJの活動をサポートすることにも繋がりますが、大きな視点で見ると、ダンスミュージック業界全体のサポートにも繋がります。

なぜなら、DJは受け取ったギャラで別の誰かが作った曲を購入しますから、その曲を作ったDJのサポートにも繋がるからです。

かなり簡略化するとダンスミュージックシーンは、「クラブ」「オーガナイザー」「DJ」「お客さん」というエコシステムで成り立っています。(←エコシステムという言葉が使いたかっただけ)

このサイクルの中でお金が回ることによって、さらなる好循環を生み出すのです。

ギャラを支払わないということは、この好循環を断ち切る行為になってしまいます。

オーガナイザーはギャラを支払わないことを当たり前にしてはならないし、DJはギャラを受け取らないことを当たり前にしてはならないと思うんですよね。

当然ながら、ギャラを受け取るDJは相応の質の高いDJプレイが求められ、それに応えなければなりません。

どうしようもないプレイをしてしまったら、次回呼ばれなくなりますので、結果としてシーン全体の競争レベルは上がり、「DJの求心力」も再び上がっていくことでしょう。

長年、真剣に音楽と向き合ってきたDJを尻目に、「モデル」「タレント」「インフルエンサー」などの”ファーストフードDJ”がメインステージに立ち、付け焼き刃のDJプレイやDJのフリで大金を稼いでいく – そんなジョークは終わりにしましょう。

DJの持ち時間が短かすぎる?

小箱やDJバー、大箱のサブフロアなどによく見られる状況ですが、厳しい時には一人につき30分の持ち時間なんて時も見られます。

集客のためであったり、初心者向けに一人でも多くのDJに現場の経験をさせてあげたいという気持ちもあるのかもしれません。

店舗のオープンからクローズまでの時間が以前よりも短縮していることも関係しているでしょう。

しかし、DJの持ち時間が短すぎると、現場の音環境に慣れて、プレイがノッて来たと思ったらもう終わりという感じで満足感が低いですよね。

一人一人が拙速なプレイにもなるし、短い時間で印象に残したいので常にピークタイムな学芸会的イベントにもなりがちです。

ダンスしているお客さん側から見ても、次々にDJが変わると集中力が削がれ没入体験が出来ないのではないでしょうか?

まとめ

いかがでしたか?

もしかしたら、批判のように感じられる部分や押し付けがましい部分もあるかもしれません。

不快な思いをした方がいらっしゃいましたら申し訳ございません。

しかし、私はダンスミュージックに関わる人たちを心から尊敬しています。

こういった考えもあるんだなと、読み物のひとつとして楽しんで頂けたなら幸いです。

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