「レコード」「CDJ」「PCDJ」など、DJがプレイするフォーマットにはそれぞれに「強み」となる特徴があります。
「強み」があれば、その反対に「弱み」もあります。
そのフォーマットでしか出来ない技や、強みを活かしたプレイが自分に合った方向性なのかを一度じっくり考えてみるのも良いかもしれません。
以前、「ヴァイナルとデジタルについてのメリット・デメリット」という記事を作成したので、少し重複してしまう部分もありますが、今回はDJプレイに直接関係する部分にフォーカスして、どんな「強み」「弱み」があるのかを探ってみたいと思います。
レコードの長所と短所
DJ全体で見ると、レコードを使ってDJプレイする人は少ないですが、常に一定数のプレイヤーが存在します。
レコードでDJプレイをする強み
- レコードにしか出せない唯一無二の音質(これを得るために他の利便性を捨ててレコードを選択する人も多いでしょう)
- 微妙な音の揺れが心地よさを生む(人間的だとか、1/fゆらぎが存在するだとか諸説あります)
- DJプレイ時の見栄えのかっこ良さ
- DJ針、ターンテーブルのセッティングなどで個性を出せる余地がある
- ミニマル、Nu-Disco、90’sハウス、レアグルーヴなど、デジタル化されていないヴァイナルオンリーが豊富なジャンルが存在する
- バラバラの曲が「レコード」という物理的な共通のフォーマットを介して音が流れるため、統一感、世界観が生まれやすい
- レコードの盤面やジャケットがあるため曲を覚えやすい、また持って行ける枚数に制限があることが逆にプラスに働き、頭の中で構成を考えやすく即興的なプレイにも向いている
レコードでDJプレイをする弱み
- 持ち運べる枚数(曲数)が限られているため、現場で対応出来る範囲が決まってくる
- B2B(バックトゥバック)では圧倒的に不利
- 多くのジャンルでデジタルと比べると絶対的にリリース量が少ない(これはレコードの価格が高いことの次にバイナルDJを苦しめている問題)
- 針飛び、ターンテーブルの不具合、ハウリングなどのトラブルが起こる可能性がある
- レコードの劣化やノイズが発生する(これらを好きという人もいるが、嫌いという人もいる)
- 曲の頭出しや決まった箇所を探すのに時間が掛かる(ピッチ合わせに時間が掛かるし、曲の前半、後半でピッチに若干の差があることも多々あり安定しない)
- ディスプレイの波形表示などの視覚的補助が一切ないので、先読みが出来ない
CDJの長所と短所
現在、「CDJ」を筆頭にメディアプレイヤーで実際にCDを使うことは少なくなり、USBやSSDを使うことに置き換わっています。
CDJでDJプレイをする強み
- 持ち運べる曲数が多い
- 即座に曲を入れ替えられるため、余裕を持って次の曲選び、マッチングが出来る
- CUEやHOT CUEを使って好きな箇所を即座に呼び出せることで、曲のショートバージョンやロングバージョンをその場で作れる他、サンプラー的な使い方もできる
- グリッド機能、SYNCボタンがあるので、大幅なピッチ変更で違うジャンルへの移行や、即興リミックス、アカペラを重ねるなどが容易になる
- LOOP機能でロングミックスの失敗を減らすことや緊急時の避難が出来る
- ロール、リバース、サンプラー、スライサーといった機能が使える機種もあり、より創作的なミックスが出来る
- ディスプレイ上の波形で曲の展開が読めるためミックスがしやすい
- BPMが表示され、マスターテンポ(キーロック)も使えるため、曲同士のBPMとキーが合わせやすい
CDJでDJプレイをする弱み
- 扱うジャンルによってはデジタルで入手しづらい場合がある
- 現場でUSB/SSDを読み込まない場合がある(96k/24bitなどの高音質なファイルも扱うことも出来るが、CDJの機種やUSBなどの記憶媒体によっては読み込みが遅かったり、途中で音がスキップするなどのトラブルが起こりやすくなる)
- CDJの機種、ファイルフォーマットによっては曲の情報が文字だけしか得られない場合があり、曲を覚えにくい(瞬時に曲を把握しづらい)
PCDJの長所と短所
同じデジタルベースではありますが、CDJにはない拡張性と先進性がPCDJにはあります。
PCDJでDJプレイをする強み
- クラブの設備に依存することなく、プレイリスト、HOTCUE、FXなど事前準備したものが確実に使える
- CDJにある機能はほぼ全て使えるうえに、ボーカルやビートだけを抜き出すことや、DVS、FXなどPCDJにしかない機能も使える
- MIDIコントローラーを自由に組み合わせることが出来るため、楽曲のパーツを抜き出す、ループ、HOT CUE、FXなどの機能を組み合わせることで、曲を再構築して新しい曲を即興的に作り出すなどの、よりLIVEパフォーマンスに近いDJプレイが可能(ビジュアル要素と連動するなどその他の可能性も)
- 相性の良い曲を呼び出すリレイテッド機能がある(CDJでも機種によって可能)
- DJソフトのアップデートが頻繁にあるため、先進的な機能をいち早く取り入れることが出来る
PCDJでDJプレイをする弱み
- DJソフトによって再生結果が異なり、DAWのようにオーディオファイルが素直にありのまま出力されない(そのため、DJソフトを変更するとプレイ内容に違和感が生じる可能性がため、ある程度ライブラリが溜まると気軽にDJソフトを変更することが難しくなる)
- クラブの設備によってはオーディオインターフェースなどを自分で用意する必要がある(DJ交代がスムーズに出来ないという面もある)
- プレイ中にフリーズしてDJが出来なくなる可能性がある
- DVSやHID接続を使用しない場合、MIDIコンとパソコン画面でのクリックが主な操作のため、視覚的なパフォーマンスに少し欠ける
- パソコンでのレイテンシーが発生するためシビアなビートマッチングを求める場合は不安要素の一つとなる
まとめ
レコード、CDJ、PCDJのそれぞれに「強み」と「弱み」がいろいろとありました。
短所も少なく、システムの安定、利便性などを考えるとCDJが最も快適にプレイ出来るといえます。
プレイするジャンルや、アイデア、方向性によってはPCDJの方がいい場合もあるでしょう。
レコードに関しては利便性などは皆無でありますが、音質と独特の世界感という唯一無二のものがありますね。
例えばレコードに加えてUSBをサブで用意したり、その逆だったり、レコードをデジタル化してUSBに加えてCDJでプレイしたりと、ひとつのフォーマットだけでなく、その他のフォーマットの長所を部分的に取り込むことも一つの選択肢と言えるかもしれません。