オリジナルのサンプルを次々と作り出す、そんな夢のようなプラグインがあったとしたら。
最近ネットではAIによって生成されたコンテンツが話題になることがありますが、音楽業界にもじわじわとその波が押し寄せてきています。
そのような状況の中、AIを搭載した「Emergent Drums」という新しいタイプのシンセドラム・プラグインがAudialab社からリリースされました。
今回の記事ではEmergent Drumsの概要、使い方、注意点などを解説しています。
Emergent Drumsの価格は149.99ドルです。
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Emergent Drumsのレビュー
機械学習ベースの新たなソフトウェアであるEmergent Drumsは、AIによってドラムサウンドを無限に生成することができるというプラグインです。
VSTおよびAUプラグインフォーマットで提供され、どのDAWでも使用出来ます。
それではまず、ざっとEmergent Drumsの概要を見ていきましょう。
このプラグインは、キック、スネア、クラップ、ハイハット、シンバル、タム、パーカッション、グリッチ、ノイズを含む16個のドラムパッドを中心に構成されています。
各パッドの種類は入れ替え可能で、「Generate」ボタンを押すことで新たなドラムサンプルをAIが生成します。
表示されている波形の下にあるスライダーを調整して、新しく生成されるサンプルを現在のサンプルにどれだけ似させるかを決定することが出来ます。
少しだけ波形が異なるサンプルを生成する「SIMILAR」か、全く異なる新しいサンプルをランダムに生成する「RANDOM」の割合をスライダーで調整することができます。
各サンプルは、ゲイン、フィルター(ローパスとハイパス)、ピッチ、パン、エンベロープ(アタック、リリース、クリップ)のパラメータでサウンドを調整することができます。
・パッドをロックすることで間違えて新しいサンプルを生成してしまうことを防げます。
・チョークグループを設定することで、一つの音が出ている時に同じグループの音が出ないようにすることが出来ます。クローズド・ハイハットとオープン・ハイハットを使う時などに重宝する機能ですね。
・AI Generation Modelでは「Crunchy」または「Creamy」を選ぶことができます。「Crunchy」はノイズ、グリット、グリッチなど、シンセシスされた音が生成され、「Creamy」では伝統的なドラムマシンのような音が生成されます。
音はシンセで生成されたドラムサウンドがメインとなっていて、現時点ではリアルなアコースティックサウンドは作れません。
しかし、シンセだけでは作るのが難しいアコースティックっぽいニュアンスの音が作れるのは確かです。
まだリリースされたばかりなので、そのあたりは今後のアップデートに期待したいところです。
現時点ではリアルなアコースティックサウンドを求める場合はサンプルライブラリーを使用するのがベターですね。
公式サイトに掲載された動画では、サウンドデザイナーの立場からEmergent Drumsがいかに便利であるかが解説されています。
Emergent Drumsの使い方
基本的に操作に難しいところはないので、マニュアルを見なくても使いこなせるでしょう。
ここでは簡単に使い方と、いくつかの注意点を解説したいと思います。
画面表示サイズ変更
Emergent Drumsには「compact」と「large」の2種類の画面表示サイズがあります。
大きい画面で操作したい場合、左上のセッティング画面からview modeをクリックし、「large」を選ぶことが可能です。
プリセットのロードとセーブ
プリセットのロードとセーブは画面右上の「Current Kit」をクリックすると行うことが出来ます。
まずは一通りデフォルトのプリセットをロードして、音を聴いてみると良いでしょう。
サンプルを作り終えたら、DAW側だけでなく、Emergent Drums側でプリセットをセーブする習慣を付けた方が良いです。プリセットをセーブして置かないとDAWやプラグインの意図せぬ挙動で消えてしまう可能性があります。
AIでサンプル生成する
まず、Emergent Drumsはインターネットに繋がっていないオフラインだとAIがサンプルの生成を行えませんので注意しましょう。
新しいサンプルを生成する場合、2通りの方法があります。
- 左上の「Generate」ボタンで全てのパッドで一斉に生成
- 波形下の「Generate」ボタンで個別に生成
生成されるサンプルの内容は、「Similar」と「Random」のスライダーで決まります。
「Similar」側に近いほど現在のサンプルに近いサンプルが生成され、「Random」側になるほど全く別のサンプルが生成されます。
「Generate」ボタンを押すとネットに繋がり、生成が開始されます。
試しに元のサンプルをRandom側に振り切ってGenerateしてみましたが、全然違う音になりました。
「Similar」の活用方法としては、以下のような状況が考えられます。
1、欲しいサウンドに近づいた時にあと少しだけ変化させたい時
2、似たようなサンプルをいくつか生成したい時
AIが生成したサウンドを軽く調整した後、簡単なビートを作り、さらに個別のパッドで再度生成を試してみました。
各々のパッドは「Similar」と「Random」の中間ぐらいの位置で生成しました。
簡単にビート全体に変化が加えられておもしろいですね。
上記で作成したビートにシンセを加えると、どのような感じになるか試してみました。
生成されたままのドラムサウンドだと少し耳に痛い音だったことと、音の被りを避けるため、少しだけプラグインで整えましたが、ミックスと言えるほどの作業は行っておりませんので、リアルな質感がイメージ出来ると思います。
最後に16個のパッド全てを一括で生成するボタンも試してみました。
一括生成では「similar」と「Random」の調整が出来ず、全て「Random」で生成されてしまいました。
一括生成を使用した場合、合わない音や気に入らない音も生成される可能性が高いので、普段は個別にサンプルを生成する方がコントロールしやすいと思います。
サウンドのエディット
以下のパラメーターがエディットできます。
- ボリューム
- アタック
- リリース
- クリップ
- フィルター
- パン
- 音程
- サンプルのスタート&エンド位置
DAWにオーディオ貼り付け
各サンプルはDAWにドラッグして通常のオーディオファイルとして作業を進めることができます。
作成されたサンプルはMacの場合なら、以下のフォルダに格納されています。
Application Support > Audilalab > Emergent Drums > Samples
ドラッグ&ドロップでオーディオファイルを作成した場合、44.1khz/24bitで書き出され、22khz付近から高域がスパッと切られてしまうので注意が必要です。これが気にならない方は良いですが、気になる方はDAW側でバウンスして書き出すようにしましょう。
2023年7月追記
Emergent Drums 2で改善され、DAWのサンプルレートとビットデプスに合わせたオーディオファイルが生成されるようになりました!(バウンスしなくてもドラッグ&ドロップでOKです)
「×16」のボタンをドラッグ&ドロップすることで、16個のパッドを一気にオーディオファイル化することも出来ます。
その他の機能
- パッドのサンプル位置をスワップする
- マルチアウト対応
- パッドのミュート
- サンプルの一括エクスポート
まとめ
ダンスミュージック全般に使えますが、特にテクノ、テックハウス、ミニマル、あとはIDM、エレクトロニカは相性が良さそうです。
ハウスやヒップホップにもリアルなアコースティックの質感を求めない限りは良いと思います。
ただ、生成されたままのサウンドだと少しピーキーな耳に痛い音になることがあるので、ミックスする際にEQなどでトリートメントが必要なケースもあると思います。
Audialab社はDiscordでコミュニティで活発に意見交換をしており、常にコミュニティからフィードバックを受けていると述べています。
Emergent Drumsはまだ初期段階であり、今後さらに機能を増やしていく予定とのことです。
Emergent Drums 2の価格は249ドルですが、チェックアウト時に下記のプロモーションコードを入力すると20%OFFになります。
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Emergent Drumsの公式サイトは下記をご覧ください。