Osunlade(オスンラデ)
ディープハウス界で最もスピリチュアルな男、Osunlade(オスンラデ)。アメリカ・セントルイスに生を受けてから、現在の住処であるギリシャのサントリー二島に辿り着くまで、彼は一体何を見て、何を感じてきたのか。その軌跡を辿ることで、ハウスミュージックの未来が少し、垣間見えてくるかもしれません。
アメリカ中西部の中心、ミズーリ州セントルイス。ミシシッピ川が流れ、古き良きアメリカの面影を残すこの街に、1969年、オスンラデは生まれます。
7歳の頃、ピアノとの出会い。それは神からの啓示のように、音楽との絆における、自らの運命を悟った瞬間だったと彼は言います。
12歳になる頃には、作曲やプロデュースに興味を持ち、バンドを結成。またドラム、ベース、ギターも独学で体得し、自らの音楽を模索していきます。
18歳の時、映画音楽やテレビの子供番組への楽曲提供を機に、LAへと移住。プロのプロデューサーとして、本格的な音楽キャリアをスタートさせます。’91年、長年の友人であったGerardoのデビューアルバム「Mo’ Ritmo」をプロデュース、その後のLatin Pop躍進の礎を築く大ヒットを記録。
10年間で20枚以上のアルバムをプロデュースしてきた彼は、ヒット請負人としてのプレッシャーを感じ、セールス成果やマーケティングを重視する音楽業界の体質に疑問を抱き始めます。
レコード会社からの要望に基づいた音、レーベルのカラーに従属する音、外部からの逃れられない影響下で作られる音が、自らの音楽への情熱を曇らせるものでしかないことに、彼は気付きます。
そんな中、彼はある日「Ifa(イファ)」に導かれ、自らの魂を尊重し、精神を静め、精神的な慰めを見出します。
「Ifa」とはアフリカ・ナイジェリア近辺に住むヨルバ族から受け継がれ、ディアスポラによってアメリカへとたどり着いた奴隷たちが継承していた、自然主義的な民族信仰に基づく、知恵のシンボルとして崇めている神の名でした。
Ifaから得た、心と身体と魂のハーモニーとバランスは、彼に巨大音楽産業との決別をもたらし、自分本来の姿であるべき「Osunlade」に立ち返ることにつながります。
「Osunlade」とは、ナイル川の守護神である川の女神「Osun」が喜びや栄光をもたらした、という意味を持ち、ヨルバ族の伝統を実践していた彼の母親から授かったヨルバ族名でした。
1999年、彼は自分の内側から出てくる純粋な音楽を追及するため、自らのレーベル「Yoruba Records」を設立。同年シングル「Native Tongue」や「Closer I Get」をリリースします。
Osunlade – Native Tongue
Osunladeの音に、ハウス界のレジェンドDJたちやフロアの観客は。即座に反応しました。彼はアンダーグラウンドから熱意のこもった称賛を浴びることとなり、過去10年間のメジャー仕事とはまったく異なるダイレクトな反応に驚き、そして喜びを感じます。
自らの選んだ道が間違っていないことを確信する出来事でした。
2000年より続々と新曲を発表。途切れることのない創作意欲と、深い精神性と高い音楽性を両立させた楽曲のクオリティが、Osunladeの新たなディープハウス界におけるライジングスターの地位を確立していきます。
2001年、1stアルバム『Paradigm』を名門レーベルSoul Jazz Recordsよりリリース。ジャズやアフロなど様々なエレメンツをクロスオーヴァーに取り込み、Osunladeのスピリチュアルな世界観を明確に示した、ディープハウスの傑作アルバムです。
Osunlade ft Wunmi – Rader Du
2007年、ハウスミュージックを代表すると言っていい老舗レーベルStrictly Rhythmから3rdアルバム『Elements Beyond』リリース。
ドラム、ピアノ、ギター、ベース、すべてOsunladeが演奏するこのアルバムは、トルコの旅からインスピレーションを得たというエスニックの要素を加えつつ、底知れない抒情を称えたディープハウスの絶品アルバムとして、世界中のハウスミュージックファンから、熱狂的な歓迎を受けます。
このアルバムからシングルカットの「Momma’s Groove」がヒット。
Osunlade – Mama’s Groove
2011年発表アルバム『Pyrography』収録の「Envision」は、Osunlade自身がボーカルを担当。
メランコリックなMoogシンセの音色が浮遊し、ヴィブラフォンが美しく響くこのヴォーカルハウスは、世界中のフロアで大ヒットします。
曲を気に入って自らRemixを願い出たというDJ DixonとAmeによってRemixされたVer.がドイツのInnervisionsから、またARGYによるRemix Ver.がイギリスDefectedからリリース。Osunlade代表曲のひとつとなります。
Osunlade – Envision
その後もコンスタントにアルバム、Remixワークと精力的に新曲を発表をし続け、2025年の最新アルバム『Inner Garden』『INvite ONly』を含め、アルバム16枚をリリース。
またYoruba Recordsにて「Afefe Iku」をプロデュースし、アフロハウス急先鋒としてアフリカ回帰シーンの先導役を担っています。
2000年初頭より、Osunladeは活動の拠点を、ギリシャのエーゲ海に浮かぶサントリー二島へ移転。人口約1.5万人の小さな島は、静かで平安に満ち、音楽制作にも最適な環境だと言います。
「Ifa」の祭司としてヨルバ族の教えを実践しながら、楽器を演奏し、音楽を作る日々。彼の生活スタイルがスピリチュアルだからこそ、深く心に響くトラックが生まれてくるのでしょう。
Osunladeは過去、アルバムのタイトルを「A Man with No Past Originating the Future」ー“過去のない男が、未来を創造する”、と名付けたことがあります。太古からの伝統を守るOsunladeは、Ifaの光輝く魂の指し示す方向へ真摯に歩み続け、その音を聴くものを高次元へと誘い、ハウスミュージックのこれからを常に導き続けています。
Osunladeのおすすめ曲
Osunlade Presents Erro – Change For Me
Latin Cafe- Power To Conquer
Osunlade – The Day We Met For Coffee
Osunlade – Cantos A Ochun Et Oya

