後にEDMなどにも多大な影響を与え、ハウスミュージックの中でもとりわけ、エレクトロニック色が強く、音圧のあるスタイルがElectro Houseですが、その発展には以外にもニューウェーブやパンクなどロック方面が関係していることは驚きかもしれません。
Electro Houseを知るには、まずは80年代に登場した”エレクトロ”というジャンルを知る必要があります。
エレクトロとは?
テクノ界隈で”エレクトロ”という言葉が使用されているのを聞いたことがあるかもしれません。
80年代のテクノ隆盛以前に、Juan AtkinsのCybotronや、Africa Bambata、Egyptian Loverなどがプレイしていた電子音によるブレイクビーツが「Electro Funk」や「Electro Boogie」と呼ばれていました。
混同されがちですが、テクノで言う”エレクトロ”とは「Electro Funk」や「Electro Boogie」を指しており、ハウスミュージックで言う”エレクトロ・ハウス”とはサウンドに大きな違いがあります。
90年代以降としては、上記アーティスト以外にDrexciyaや、DMX Krewがエレクトロのアーティストとして有名です。
Afrika Bambaataa & The Soul Sonic Force – Planet Rock
The Egyptian Lover – Egypt, Egypt
DMX KREW – Street Boys
Electroclash(エレクトロ・クラッシュ)
エレクトロ・ハウスのブームが来る前、90年代後半から2000年代前半にかけてElectroclash(エレクトロ・クラッシュ)と呼ばれるジャンルが流行しました。
「Electroclash」という言葉を作り出した人物は、アメリカ人の外国人DJ、プロデューサー、プロモーターのLarry Teeと言われており、2001年にはアメリカのウィリアムズバーグで最初のElectroclash Festivalを開催しています。
Electroclashは、基盤となるのは前述したエレクトロであり、そこにニュー・ウェイヴ、ポストパンク、シンセポップなど、ロックなフィーリングを加えて、テクノのフォーマットへ再構築したスタイルです。
I-Fが1997年にリリースした「Space Invaders Are Smoking Grass」がエレクトロクラッシュと定義される先駆けと言われています。
I-F – Space Invaders Are Smoking Grass
このムーブメントを牽引した一番の大きな存在として、DJ Hellと1996年に創設したレーベル <International Deejay Gigolo>がありました。
ドイツ出身のDJ Hellは1978年からDJを始め、1983年には地元のクラブでレジデントを務め、ニューウェーブ、スカ、パンク、ロカビリー、ヒップホップ、ディスコ、テクノ、ハウスをミックスするという彼の折衷的なスタイルを育みました。
80年代後半にはニューウェーブ、エレクトロ、テクノ、ハウスを織り交ぜたスタイルへと発展させクラブDJとして活躍する傍ら、Peter Wachaのレーベル<Disko B>のA&Rとして1991年から1996年まで在籍していました。
1996年に自身のレーベル <International Deejay Gigolo>を設立すると、1980年代から影響を受けたリバイバル・サウンドを次々にリリースし、Miss Kittin & The Hacker、Fisher Spooner、Tiga、Vitalicなど、Electroclash界のスターといえる新たなアーティストを発掘し、テクノシーンを席巻しました。
その他にも、MyloやTok Tok、Modjo、Felix House Catなどが、Electroclashシーンで活躍しました。
Der Zyklus – Formenverwandler
Fischerspooner – Emerge
TIGA – Sunglasses At Night
Golden Boy & Miss Kittin – Rippin Kittin
Miss Kittin & The Hacker – Frank Sinatra
Vitalic – La Rock 01
MYLO – Drop The Pressure
Modjo – Lady (Hear Me Tonight)
Electro House(エレクトロ・ハウス)とは?
2000年代中盤ごろになるとElectroclashという大きなブームは過ぎ去りましたが、すぐにElectro Houseと呼ばれるサウンドが主役の座を取って代わりました。
Electro Houseは、Electroclashから大きな影響を受けており、そこにテックハウスの要素が加わることにより、アッパー感に磨きをかけ、ヘビーでフロアユースなサウンドへと変化しました。
90年代後半ごろからElectro Houseと定義出来るサウンドは存在しますが、ゲームチェンジャーとして大きく世の流れを変えたのは、イタリア出身のBenny Benassiがリリースした「Satisfaction」でした。
2002年6月にイタリアでリリースされた「Satisfaction」は、過度にコンプレッションしたサウンドに、ダイレクトに脳を揺らすような特徴的なエレクトロニックなベース音で世界的な大ヒットを記録しました。
Benny Benassi – Satisfaction
「Satisfaction」以降、躍進するElectro Houseシーンにおいて、頭一つ飛び抜けたレーベルとして<Ed Banger Records>の存在があります。
<Ed Banger Records>はDaft Punkのマネージャーを務めていたPedro Winterによって2003年に設立されました。
Pedro Winter自身もBusy Pというアーティスト名で活動し、レーベルからは Justice、Sebastian、Cassius、DJ Mehdi、Breakbotなどを輩出しています。
Justice – Genesis
DJ Mehdi – Signatune
SebastiAn – Embody
Cassius – I Love U So
<Ed Banger>は、どちらかというとサウンド的にElectroclash的な風合いが残っていましたが、Deadmau5、John Dahlback、Digitalism、Boys Noizeなどのアーティストが台頭することにより、さらにエレクトロニックでフロアライクな作風へとエレクトロ・ハウスは昇華されていきました。
Boys Noize – & Down
Digitalism – Idealistic
John Dahlback – Blink
deadmau5 – Strobe
なお、近年のエレクトロ・ハウスは、純粋なエレクトロ・ハウスのアーティストもいれば、EDM、トランスと融合して壮大なビッグルームサウンドへと変化しているアーティストもあり、多様といえます。
エレクトロ・ハウスの音の傾向
- 非常にタイトにコンプレッションされたサウンド
- サイドチェインコンプでダッキングと呼ばれる手法を用いる
- ブリブリしたベース音
- オーバドライブ、ディストーションなどを用い倍音成分が多い
- 初期はロックなフィーリングを持つ曲が多かった
- BPMは125〜130ぐらい
その他のエレクトロ・ハウスのおすすめ
Fedde Le Grand – Put Your Hands Up For Detroit
Northern Lite – Do You Think Of Me
Rex The Dog – Musik Hypnotises
Alter Ego – Rocker
Mr Oizo – Flat beat
Soulwax – Krack
Crookers – We are prostitutes