DJミックスをDAW(オーディオ編集ソフト)で作ろうとしたことはありますか?
現代ではDJミックスを作る方法として、リアルタイムで録音する以外に、DAWを使ってオーディオファイルを切り貼りしたり、タイムストレッチしたり、エフェクトをかけたりして作る方法があります。
どのDAWでもDJミックスは制作出来ますが、DAWを習熟していないとなかなか大変な作業です。
おそらくはDJミックス作成に最も適しているであろうAbleton Liveであっても、全くの初心者がDJミックスを制作出来るようになるためにはそれなりの時間が掛かるでしょう。
DJ.Studioとは?
先日、最新版としてバージョン「2.0」がリリースされた「DJ.Studio」は、AI技術を活用して素早くミックスを制作する「DJのためのDAW」です。
Siebrand Dijkstraによって設立されたこのソフトウェアは、DJミックスを制作するハードルを下げることに成功しています。
DJ初心者や、友人と好きな音楽を共有したい人など、あまり詳しくない人はもちろんですが、ラジオ用のミックスを制作するDJや、質の高いDJミックスを素早く必要とするプロフェッショナルな人たちの時間も節約することが出来るツールです。
この新しいDJソフトは、リアルタイムで音楽をミックスすることはできませんが、DAWを操作するかのようにDJミックスを作ることができます。
普通のDAWとの違いは、「DJ.Studio」はDJミックスを制作することのみにフォーカスしているため、はるかに簡単に編集ができるという点です。
DJ.Studioで出来ること
Rekordbox、Serato、Traktor、Virtual DJ、Engine DJ、iTunesのライブラリを同期したり、任意のトラックをソフトにドラッグ&ドロップすることができます。
BPMとキーでトラックを並べ、ハーモニック・インテリジェンスを使って自動的にミックスを作成し、その後、トランジションの編集、クロスフェードの割合、フィルターアクション、ベースのカット方法などのパラメーターを細かく調整できます。
また、特定のトランジションをプリセットとして保存し、別の箇所で再利用することもできます。
「DJ.Studio」はMixed In Key(有名な楽曲のキー解析ソフト)とシームレスに統合され、Camelotホイールやその他の便利な機能を使ってハーモニックミキシングし、プロ品質のミックスを短時間で完成させます。
ミックスの完成後は、Ableton Liveファイルとしてエクスポートして、Ableton Live上で編集やマスタリングを行うこともできます。
驚くべきことにエクスポートされたAbleton Liveファイルには、「DJ.Studio」で設定したボリュームオートメーション情報やエフェクト情報(EQやフィルターなどの設定)などが一緒に含まれており、Ableton Liveで編集を引き継ぐことが出来るようになっています。
また、完成したミックスをMixcloudに直接アップロードすることもでき、トラックリストが即座に生成されます。
Youtubeでもミックスが出来る
さらに、YouTubeで動画を検索し、それらの動画を使って直接ミックスを作成することができます。
YouTubeの動画を他の音楽ソースと同じように扱い、ビートグリッド、トラックのキーとBPMのマッチング、トランジションに適した場所を探し、エフェクトの追加など微調整も可能になっています。
トラックをダウンロードしたり、リッピングしたりするわけではなく、YouTubeのプレーヤーを使ってこれらすべてが行われるので合法的に使えるようになっています。
残念ながらYoutubeで作成したミックスは著作権などの関係により、現在時点ではエクスポートすることはできません。
しかし、内容をセーブしてリアルタイムで再生することは出来るので、プライベートな空間でのDJミックスの披露であったり、トラック購入前に他の曲とのミックス感のチェックだったりに使えそうです。
実際に使ってみた感想
筆者も実際にインストールして試してみましたが、取り込んだトラックをAIがキーやBPMなどから判断して順番を決めてくれるので、こだわりなくとりあえずミックスを作るという目的であれば本当にあっと言う間に完成してしまいました。
しかしながら、トラックによっては開始位置や、グリッドがずれていることもありましたので、それらを修正するため、ある程度の調整は必要ですね。
気に入らない順番があれば、ボリュームカーブやエフェクト情報を保ったままドラッグで曲順を入れ替えることが出来るので、次々とミックス感を試せるのが非常に便利だと感じました。
直感的に操作できるものがほとんどなので、全くの初心者でない限りはマニュアルなど見なくても操作出来るのではないでしょうか?
不必要なセクションを消すなど、トラックの長さを変えたりも自由に出来るので、必要な長さの時間に合わせたミックスが簡単に作れますし、AIを使わずマニュアルで全て設定していくことも可能なので、細部までこだわったミックスも作れるようにもなっています。
例えばCDJや他のソフトなどを使って、DJミックスをリアルタイムで録音するという人にも良い活用方法があります。
最初にたくさんの候補曲を出来るだけ多く「DJ.Studio」にインポートして、AIが提示した中から良い組み合わせのパターンをピックアップするという方法です。
この方法では自分が思い付かなかった相性の良いパターンを簡単に見つけることが出来ますので、DJミックス作成以外にクラブプレイでの参考にもなります。
気になった点としてはビートグリッドがあります。
現時点ではビートグリッド機能に柔軟性がないので、生演奏の曲だったり、途中でBPMが変わるような曲は対応出来ず、打ち込みでBPMが一定の曲しか対応できません。
追加して欲しい機能としては、読み込んだ曲でいろんなパターンのスクラッチをボタン一つで簡単に入れることが出来るようになったら面白そうだなと思いました。
これらは今後のアップデートで改善、追加を期待したいところです。
DJ.Studioを使ったミックスの作成例
では、実際に「DJ.Studio」を使ってミックスを作ってみたので聴いてみてください。
ミックス部分だけ聴きたい場合は、「Youtubeで見る」ボタンからYoutubeへ移動し、概要欄のタイムスタンプをクリックするとミックス部分にスキップする事が出来ます。
「DJ.Studio」のAIが曲のキーをもとに曲順選び、ミックス、BPM変更などを行なっています。
このミックスを作るにあたって筆者の持つDJの経験、知識などは一切反映させず、あくまでDJ初心者がDJミックスを作ると仮定し、頭空っぽにして作ってみました。
主に行った作業内容は以下です。
曲をインポートした時点でほぼ完成していたのですが、あきらかにおかしい部分や気に入らない部分のみを直したという感じです。
DJ初心者でも出来る範囲での操作しかしていないですが簡単にDJミックスができ、出来上がりを聴いてみると、たしかに初心者っぽくない完成度の高いミックスになっていますね。
今回は30曲しかインポートしていないのですが、もっとたくさんの曲をインポートすれば、さらに完成度の高い組み合わせのミックスを提案してくれるだろうと思います。
DJの知識がない人でも自分の好きな曲だけ集めたDJミックスを簡単に作れる時代が来たという感じですね。
DJ.Studioの料金プラン
「DJ.Studio 2.0」は月額$9のライトプランと、月額$29のプロプランの2種類のサブスクリプションが用意されています。
またはライセンスを一括購入することも出来ます。
購入の場合、ライトプランは$129、プロプランは$299で1ユーザーにつき2台のマシンで永続的に使用することができ、2年間の製品アップデートとサポートが含まれます。
お試し期間としてクレジットカードの登録必要なく14日間は無料で使えるので、興味のある方は試してみてはいかがでしょうか?
Mixed In Key10のライセンスを持っている場合はDJ.Studioのアカウント作成後にVIPコードを入力することで1ヶ月無料で使えますよ。
ご自身のMixed In KeyのVIPコードは以下から確認ができます。
送られてきたメールのURLをクリックして、Mixed In Keyの「ダウンロード」ボタンを押せばVIPコードが表示されます。
https://account.mixedinkey.com/recovery
VIPコードの適用方法はDJ.Studioのアカウント作成後にアプリをパソコンにダウンロードして、アプリの右上にあるMixed In Key連携ボタンをクリック後、入力画面にVIPコードを入力すればOKです。
※現在のところソフトウェアやマニュアルなどは日本語対応しておらず、全て英語表記なのでご注意ください。