おすすめDJソフトのディープな比較

CDJとの連携や、DVS、DJコントローラーを使用したDJプレイが出来るため、今やDJソフトは無くてはならない存在となりました。例えレコードでDJプレイをする人であっても楽曲の管理用としてDJソフトを使用することは役に立つでしょう。

世の中にはたくさんのDJソフトが存在しますが、実際のところ、どんな違いがあるのか興味がある人も多いのではないでしょうか?


そこで、今回は定番のDJソフト4つを比較してみたいと思います。

  • Pioneer DJ – Rekordbox
  • Algoriddim – Djay Pro
  • Serato – Serato Pro
  • Native Instruments – Traktor Pro3


しかしながら、ただの比較であればメーカーのホームページや、販売店の比較サイトを見れば済む話です。ここでは、より実験的で掘り下げた内容をお届けしたいと思います。前半から後半へと話が進むにつれディープ度が増していきます。

各メーカーとの繋がりは一切ありませんので忖度なしの比較となります。ありのままをお伝えすることで、全ての人にとって有益なものとなればと願っています。

深掘りしている企画のため、中には比較結果に不快感を覚え、異議を唱える方もいらっしゃるかもしれませんが、今回の比較はあくまでも編集者の2021年8月時点での感想だということを先にお伝えしておきます。人によって感じ方は違うので、色々な考えがあることは自然で良いことだと思います。また本記事は四つ打ちをメインとしたミックスを基本として考えているため、スクラッチやDVSを含めた操作感では印象が大きく変わってくると思いますし、編集者が気づいていない機能などもあるかもしれませんので予めご了承ください。

また、知っての通り音楽ソフトの進化、アップデートはとても早いので、次に検証した時には違う結果になっていることもあるでしょう。

4つのDJソフトのディープな比較

今回比較するために使用したトラックはMoon Bootsの「Sugar」です。BeatportからダウンロードしたWAVをオリジナルファイルとして用意しましたが、WAVのままアップすると容量が大きく、ウェブサイトでの表示や再生に影響が出そうなため、最終的に全ての音声ファイルを320kbpsのmp3に変換しアップしています。

基本性能

各検証を行うために全てのDJソフトはStudio One(DAW)の内部バスを通じて録音し、音量を揃えて比較を行いました。リファレンスとなるオリジナルファイルは以下になります。

オリジナルファイル

キュー、ホットキュー、Key Lock、ループ、サンプラー、FXなどの基本的な部分は、昨今のDJソフトには必ず搭載されていて大きな差はありませんので割愛し、その他の部分を比較していきましょう。

Rekordbox

音質○
コンプをかけて固めたような音だが、オリジナルファイルに近い音質
グルーヴ△
原曲からグルーヴは変化している
補助機能◎
DVS、マイタグ、細かいビートグリッドの設定、相性が合う楽曲表示、高度な検索、EDITモード、オートミックスなど
先進性○
パイオニア製品との連携、Visual Effects、Cloud Library Sync、Lyric Visualization
ストリーミング○
Beatport LINK、Beatsource LINK、SoundCloud Go+、TIDAL
タイムストレッチ性能○
グリッド調整機能○
DJコントローラー○
アプリ△
RekordboxのアプリではDJが出来ない、代わりにPioneer DJからWeDJというアプリがあるがRekordboxとの互換性はない
おすすめの対象者
パイオニア製品をよく使う人

Djay Pro

音質○
最もナチュラルだが、オリジナルと比べると少し解像度が下がり、ぼやける印象。
グルーヴ◎
原曲のままのグルーヴ
補助機能○
DVS(HID対応の機器のみ)、相性の良い楽曲表示、オートミックス、MIDI接続など
先進性◎ 
Neural Mix、ジェスチャーコントロール
ストリーミング○
Beatport LINK、Beatsource LINK、SoundCloud Go+、TIDAL
タイムストレッチ性能○
グリッド調整機能×
グリッドの調整が開始点の変更しか出来ず、テンポが途中で変わる曲などにうまく対応できない。
DJコントローラー○
アプリ◎
パソコン、アプリ間で互換性があり、操作感もほぼ変わらない、DJコントローラーと接続可能
おすすめの対象者
レコード、CDJでプレイするDJ、グルーヴを重視するDJ、新しいもの好きな人

Traktor Pro 3

音質◎
やや強調されたような派手な音だが、ダイナミクスも感じさせる
グルーヴ△
原曲からグルーヴは変化している
補助機能○
DVS、Fluxモード、MIDI接続など
先進性○
Stem Mix、Remix Deck
ストリーミング△
Beatport LINK、Beatsource LINK
タイムストレッチ性能○
グリッド調整機能○
DJコントローラー○
アプリ○(traktor DJ2)
あくまでTraktorの簡易版という感じだが、DJで問題なく使用出来る
おすすめの対象者
CDJやレコードを使わずPCのみでDJする人、ライブパフォーマンスと合わせたハイブリッドなスタイルのDJ

Serato DJ Pro

音質△
抑圧されたような感があり、やや音に伸びが足りない
グルーヴ○
原曲のままのグルーヴ(Key Lockを使用すると変化する)
補助機能△
DVS 、プレイヒストリーなど
先進性△
Serato Remote、 MWM Phaseとの連携
ストリーミング○
Beatport LINK、Beatsource LINK、SoundCloud Go+、TIDAL
タイムストレッチ性能△→拡張オプションのPITCH ‘N TIME DJを追加することで◎
グリッド調整機能○
DJコントローラー○
アプリ×
SeratoにはDJアプリがない
おすすめ対象
MWM Phaseを使用する人、BPMに差がある曲をプレイする人、同時にCDJやレコードなど、色んなフォーマットでもプレイする可能性がある人

タイムストレッチ性能

次に各DJソフトのピッチフェーダーを使って、タイムストレッチの性能を確認してみます。使用するトラックはSatin Jacketの「Automatic」です。

ピッチフェーダーを使って25%ピッチダウンし、BPM105の原曲が78.7まで下がっています。最初の4小節はKey Lock機能を使わず、後半の4小節はKey Lock機能を使い原曲のキーでプレイされるようにしました。

前半4小節はどのソフトも大きく変わりはないので、Key Lock機能を使った後半4小節にフォーカスし比較します。

Rekordbox

引き延ばした感はありますが、何とかギリギリ使えるレベルです。

Djay Pro

こちらもRekordboxと大差なく、何とか使えるレベルです。ただ、これだけピッチを下げても原曲とグルーヴが変わっていないのは特筆すべき点です。

Traktor Pro3

この中ではスムーズにタイムストレッチされているように感じます。しかし、こちらもギリギリ実用レベルなので、Key Lock機能を使ったピッチダウンは15%程度までにしておくのが良いかもしれません。

Serato Pro

Key Lock機能を使うと無理やり引き延ばした感が強く、実用範囲を超えています。さらに原曲からグルーヴも変化してしまいました。ただし、有料の拡張オプション「Pitch ‘N Time DJ」を追加すると、Key Lock機能を使っても余裕で再生出来るほどクオリティが高いです。(グルーヴは変化します。)※後日、拡張オプションの存在に気付いたので音声録音していませんでした。代わりに参考動画を以下に貼っておきます。

グルーヴの実験


次にもう一歩踏み込んだ実験を行なってみたいと思います。

実験のため、DAWでサンプル単位でタイミングを合わせ並べました。

なお、この記事で話しているグルーヴとは抽象的な意味ではなく、技術的な話であり、音の重なり、長さ、間隔によって生まれる「ノリ」や「タメ」を意味しています。

オリジナルファイルとの比較


まず、オリジナルファイルをDJソフトを通すと、どのくらい音の変化が起こっているのかを検証しました。

通常、全く同じ音声のファイルを重ねると音量が大きくなるだけですが、音が変化している場合、重ねることで、音同士の干渉が起こり、うねりや詰まり、フェイジングようなものが発生します。

※位相を反転させてオリジナルの音声ファイルがどのくらい消えるかどうかという方法もあるのですが、今回はこちらの方法にしました。

留意して頂きたいのは音の変化が必ずしも悪いということではありません。例えば数十万円するような高級なDJミキサーであっても、通すことで音質やグルーヴが変わるというのはメーカーによってはあることです。ただ、後述しますが、こうした変化には注意しなければいけない点があるということです。


最初の4小節はオリジナルファイルのみ、後半4小節から各DJソフトの音が混ざるように配置しました。

耳だけで聞くと違いが分かりにくい部分もありますので、ダンスや身体を揺らすなどすることで変化が分かりやすくなります。

オリジナル-Rekordbox

気になる音の干渉などはないですが、オリジナルファイルと比べるとグルーヴの変化が起きているため、音が重なってきたタイミングでグルーヴのぶつかりが起きて若干スムーズさを妨げています。

オリジナル-Djay Pro

純粋に音量が大きくなっただけに感じられます。ここで分かることは、オリジナルファイルをなるべく忠実に再生したナチュラルな出音であり、オリジナルファイルに最も近いということが分かります。

オリジナル-Traktor Pro3

音質の変化とグルーヴの変化も起きているため、重なった瞬間に進行を妨げるうねりが感じられます。

オリジナル-Serato Pro

グルーヴはオリジナルファイルに忠実なため問題ありませんが、周波数の干渉が起きて、金属的になりやや音が細く感じられます。なお、SeratoはKey Lock機能を使うとグルーヴにも変化が生じます。

各DJソフトでミックスを行いグルーヴの変化を考察

次に各DJソフトでミックスを行い、変化したグルーヴがどのようにミックスに影響を及ぼすのかを考察してみます。先ほどのMoon Bootsの「Sugar」に、Satin Jacketの「Automatic」をミックスしていきます。


Ableton Liveは編集してもグルーヴが変わらないので、参照用にオリジナルファイルのミックスをAbleton Liveを使用して作成しました。5小節目からミックスが始まり、9小節目から前の曲をフェードアウトしています。

双方とも適度にスウィングが効いていて、2拍目にアクセントがある同じグルーヴを選んでいますのでスムーズに繋がります。キーが調和していないので少し気持ち悪いですが、その分変化が分かりやすいと思います。

オリジナルファイルMix

DJソフトごとに個別に音をStudio Oneに取り込み、全て同じタイミングのミックスになるように編集しました。

それでは順にオリジナルファイルでのミックスとの違いを確認しましょう。耳だけで聞くと違いが分かりにくい部分もありますので、ここでも身体を揺らすなどして変化を感じてみてください。

Rekordbox Mix

5小節目に次の曲が入って来た時点で、少しの音の流れに詰まりを感じます。9小節目からはより顕著に感じることが出来ます。これは原曲からグルーヴが変化しているため、2曲間でグルーヴのぶつかりが起こっているためです。グルーヴの変化というと色々な部分があるのですが、分かりやすい部分で言うと、原曲では双方ともに2拍目にアクセントがあったのが、「Sugar」は1拍目にアクセントが移動し、「Automatic」では3拍目に移動しています。

Djay Pro Mix

前述したようにDjayはグルーヴが変化しませんので、オリジナルファイルと同じようなミックスが出来ています。ダンスしながら聴くとよくわかりますが、動かしている身体の流れに抵抗が生じません。(楽曲のキーが不協和なのでそちらの違和感は感じます。)

Traktor Pro3 Mix

Traktorもグルーヴに変化が生じています。原曲では双方ともに2拍目にアクセントがあったのが、「Sugar」は3拍目にアクセントが移動し、「Automatic」は1拍目にアクセントが移動していますので、やはりグルーヴのぶつかりにより流れに抵抗が生じています。

Serato Pro Mix

Seratoもグルーヴ自体は変化をしていませんので、オリジナルファイルと同じようなミックスクオリティを保てています。※ただし、Key Lock機能を使うとグルーヴが変わってしまうため、違和感のあるミックスとなります。

オリジナルファイルとDjayでのミックス

最後にオリジナルファイルとDjayで同じようにミックスを行います。

オリジナルファイル & Djay Pro Mix

Djayは音質には多少の変化がありますが、グルーヴは原曲のままなので、オリジナルファイルとミックスしても、グルーヴに違和感なくスムーズなミックスが実現しています。

以下のオリジナルファイル同士のミックスと聴き比べてもグルーヴに遜色がありません。

オリジナルファイルMix

グルーヴが変わることで注意しなければならないこと

前述した通り、通す音楽機材やソフトによってグルーヴが変化すること自体はよくあることです。それは個性の部分でもあるので、必ずしも悪いということではありません。しかし、グルーヴが変わることで注意しなければいけない点があるのです。

まず、楽曲のキーを合わせてDJプレイをするというのは聞いたことがあるかもしれませんが、グルーヴを合わせてDJプレイをすると言うこと自体を聞いたことがないという人が多いと思います。実際には多くのDJは似たようなグルーヴを無意識のうちに感覚で選んでいます。このあたりはプレイするDJのジャンルにもよりますし、DJが何を重要視しているかのプレイスタイルによっても違いがあります。

例えば、キーを合わせることを最重要視しているDJならば、DJソフトウェア間でのグルーヴの変化はあまり気にする必要がないかもしれません。キーが合っているとグルーヴが多少合っていなくても、ある程度はカバー出来るからです。

しかし、グルーヴを重要視しているDJならば、ソフトウェア間でのグルーヴの変化は非常に問題になってきます。

まず、CDJ、ターンテーブル(適切にセッティングが出来ていれば)、Ableton Live、Djay、Serato(※Key Lockを使用しない場合)での再生は、グルーヴに変化を起こさないため、どれでプレイしても同じようミックスすることが出来ます。CDとレコード、デジタルファイルを混ぜて、フォーマット間を移動してプレイしてもグルーヴに変化はないので問題なくプレイが出来るということです。

※グルーヴが変わるDJソフト(今回だとRekordbox、Traktor)であっても、同じDJソフト内で選曲をし、同じDJソフトを使ってプレイするのならばグルーヴの問題は起こりません。

問題が生じるのはフォーマット間を移動する時です。

例えば、グルーヴが変わるDJソフトでプレイリストの作成など、選曲の準備をして、本番ではCDJやターンテーブルなど、別のフォーマットを使いプレイする場合は問題が生じます。実験したように、DJソフト上での音とオリジナルファイルの音でグルーヴが異なるからです。DJソフトではうまくミックス出来ていた曲の組み合わせであっても、CDJやターンテーブル上で使用する原曲とはグルーヴが異なっているため、違和感のあるミックスになってしまうことがあるのです。

そのため、レコードやCDJをメインに使用していて、フォーマット間をよく移動するDJや、グルーヴを重要視しているDJは、楽曲管理にDJソフトを使用する時はグルーヴが変化しないソフトを選ばないといけません。

「何か最近、準備段階ではうまくイメージ出来ているのに、本番ではうまくプレイが出来ないんだよな」という人はこういった部分が影響している可能性があります。

まとめ

DJソフトそれぞれに特徴があり、利点や欠点が見えてきたと思います。

昔は一つのフォーマット、例えばCDJなら、CDJで選曲の準備をし、本番もCDJを使ってプレイするのみだったので、こういった問題は起こりませんでした。

しかし、現代ではテクノロジーの進化により、複数のフォーマット間を移動することが多くなったため、このような新たな分かりづらい問題が起こりえるわけです。


DJソフトの特徴を理解し、それぞれのDJスタイルに照らし合わせて、うまく利用することが必要かもしれません。

ただ、後半のグルーヴに関するセクションは、かなり深く掘り下げた話ですので、DJを始めたばかりの方は気にする必要ありませんし、「自分が何となく気に入ったDJソフトを使う」それで良いと思います。

あまり考えすぎてDJがつまらないものになってしまっては本末転倒ですから。

今回使用した楽曲はどこからでも簡単に手に入れることが出来ますし、各DJソフトも無料バージョンが用意されているので、是非自分でも色々と試してみてください。

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