2020年は世界中が大変な年となりましたが、それでも、たくさんの素晴らしい曲と出会えました。
世界中のクリエイターにリスペクトと共に感謝の気持ちを送りたいです。
2020年の「ハウスミュージックラバーズ」が選ぶベストハウスミュージック15曲を発表させて頂きます。
最高だと感じたトラックを独自の観点でチョイスしました。世間一般の人気度は一切考慮していませんが、新たな発見に結びつく曲になれば幸いです。
ランキング形式ではなく、なるべく似た雰囲気の曲順で並べてありますので気になった曲があれば、その前後の曲もチェックしてみてください。
2020年ベストハウスミュージック【15トラック】
Patrice Bäumel – Sender [Afterlife]
Patrice Bäumelは東ドイツに生まれ、現在はアムステルダムを拠点に活動するDJです。90年代に東ドイツの小さなバーでバーテンダーとして働いていた時にDJに目覚め、2002年にブラジルのサンパウロで開催されたRed Bull Music Academyを卒業したことからキャリアが始まりました。
そこからアムステルダムの伝説的なクラブ<Trouw>のレジデントDJとなり、<Trapez>、<Get Physical>、<Kompakt>、<Lost & Found>などの有名レーベルから非の打ちどころのないトラックやリミックスを多数リリースしています。
「Sender」はバウンシングボール的な効果音が特徴で、じわじわと上げていくDJのオープニングに最適なトラックになっています。
Julenn – They Don’t Know [Blind Vision Records]
パリのアーティストJulennは、13歳の時にハウスミュージックに魅了され自然とレコードコレクションを始め、その時から友達を楽しませて踊らせたいという欲求をすでに感じており、定期的にクラスメイトを集めて自分のコレクションを披露していました。
2017年に<Jack’s House>から初のEP「Trail」をリリースし、ヨーロッパのハウスシーンへの扉を開いた後、2018年は<Blind Vision Records>から初のヴァイナル限定EP「Real Thing」をリリース。
「They Don’t Know」は同じく<Blind Vision Records>からリリースした「Apollo EP」に収録された曲で、ボイスサンプルに深い催眠的なアルペジオとピッチシフトディレイが印象的です。
DJOKO – Hooked On You [Shall Not Fade]
ケルンを拠点に活動するJohannes “DJOKO” Kolterのサウンドは、ファンクやソウル、ガラージやディープハウスなど、アンダーグラウンドで生々しい曲から影響を受けています。90年代の典型的なハウスの質感を武器に、<PIV>、<Berg Audio>、<Rutilance>などのレーベルからリリースし、着実にキャリアを積み上げています。
「Hooked On You」はDJ Mag’s Best Of British awards 2020のベスト・レーベルにノミネートされた<Shall Not Fade>からのリリースで、どのフロアでも確実にロックするハウスミュージックのお手本のようなトラックです。
Rick Wade – Academy (Pezzner’s CR02 Mix) [Elypsia Records]
90年代中期からデトロイト・ハウスのシーンで活動するアーティストRick Wadeが2017年にリリースした「Timeless EP」の一曲をPezznerがリミックスした作品。
David Brian Pezznerはカリフォルニア州ターザナ生まれ、現在はワシントン州シアトル在住のアーティストで、2010年には<Freerange Records>からファーストアルバム「The Tracks Are Alive」をリリースしています。
ひたすらタイトに刻んでいるベースラインが、たまにウネウネと暴れだすところがGoodです。
David Penn – The Heat [Club Sweat]
David Pennはスペインで最も有名なDJの一人であり、2000年代からハウスやガレージハウスのトラックを頻繁に制作しています。
最近では<Defected>や<Glitterbox>のような名門ハウスレーベルのDJとしてヨーロッパ中でプレイしており、2019年にはTraxsourceから2019年のベストハウスアーティストに選ばれました。
「The Heat」はPurple Disco Machineのレーベル<Club Sweat>からリリースされました。ドライブの効いた王道といえるハウスミュージックに乗っかるラップが心地いいです。
COEO – Sorry For The Late Reply [Toy Tonics]
ここ数年の間にCOEOが得た人気は一目瞭然で、リリースするレコードは次々とヒットし、Spotifyでは何百万回も再生されている曲もあるほどです。
COEOは、Andreas HopflとFlorian Vietzによるミュンヘンで結成されたユニットで、<Toy Tonics>、<Razor N Tape>、<Let’s Play House>、<Madhouse Records>など名だたるレーベルからリリースを重ねています。
「Sorry For The Late Reply」では、Solution Feat Tafuriの「Was It Just A Game」がサンプリングされ、クラシックハウスのパターンをベースに、クールなサックス、ピアノのリフ、シンセパッド、リズミカルなソロが絡み合っています。
Phazed Groove – In Motion [Tropical Disco Records]
ロンドンのモダン・ディスコ・シーンから出現してきたSartorialとSimon Kennedyが運営する<Tropical Disco>からリリースされたコンピレーションEP vol.19に収録された一曲。
<Tropical Disco>のニューカマーPhazed Grooveが作リだす颯爽としたグルーヴは、繊細なギター・リックや、ディスコ・フルート、そして70年代の女性ボーカルのような官能的なボーカルなど、<OM Records>、<Naked Music>などの西海岸ハウスを彷彿させます。
Sebb Junior Feat. Eider – Come Back (Art of Tones Remix) [Sub_Urban]
Sebb Juniorはスペイン在住のフランス人アーティストで、ディープハウスの良作を連発するハウス職人と言える一人です。「Come Back」は原曲も良いですが、Art of Tonesによるディスコブギー・リミックスも最高です。
フランスのベテランアーティストLudovic LlorcaのプロジェクトであるArt of Tonesによるリミックスは原曲を活かしながらも、自身の得意とするディスコサウンドへと見事に昇華しています。
Daniel Steinberg – Crazy Life [Arms&Legs]
ベルリンのハウス、テクノDJであり、<Arms & Legs Records>の共同オーナーであるDaniel Steinbergは、感染力のあるフックと中毒性のあるグルーヴを持つダンスフロアのスペシャリストです。
「Crazy Life」は2011年に<Arms & Legs>からリリースしヒットした「Joy & Happiness」を思い起こさせるハッピーな作品で、踊り出さずにはいられません。
The Reflex – CPCBNA 2020 [The Reflex Revision]
ロンドンを拠点に活動するフランス出身のNicolas Laugier、通称The Reflexはディスコリミキサーとして、マスターテープ(またはステム)のオリジナルサウンドを使用し、ソウル、ポップス、ディスコのクラシックに新たな命を吹き込んでいます。
非公式のリミックスもさることながら、Noel Gallagher、Cerrone、The Kooks、Seun Kuti、Roy Ayers、Simply Red、Nile Rodgersなど35曲以上の公式リミックスも制作しており、リミックスの分野ではトップアーティストの一人として地位を確立しています。
「Cpcbna 2020」はBarry Manilowの「Copacabana」のリミックスです。
Scruscru – Mellow Yellow [Deeppa Records]
ロシアのアーティストAnton “ScruScru” Bogomolovは2020年も素晴らしい作品を残しました。ジャズを基調とし、ファンク、ディスコ、ハウスの甘美なグルーブを融合させるScruScruの能力には常に感嘆させられます。
「Mellow Yellow」はビートダウンにメローなバックトラックが絡みあい、Lo-Fi愛好家を喜ばせる要素が満載です。
年末にはスウェーデンのレーべル<Omena>からミニアルバムのリリースも控えていて、2021年はさらなる活躍が期待されます。
Low Island – Don’t Let The Light In [Emotional Interference]
Low Islandは、UKのオックスフォードを拠点に活動する4人組インディーバンドで、シンガーでマルチインストゥルメンタリストのCarlos Posada、プロデューサーのJamie Jay、ベーシストのJacob Lively、ジャズドラマーのFelix Higginbottomのメンバーで構成されています。
「Don’t Let The Light In」はキャッチーかつ、ヒプノティックな中毒性のあるトラックで、ハウスミュージックの要素を感じさせるトラックです。
過去には「In Person」のリミックスをMatthew Herbertが担当していたりと、今後ハウスミュージック界隈から多くのリミックスが行われそうなバンドです。
Ricardo Villalobos – Neunachi [RAWAX]
説明不要のミニマルハウス界のカリスマRicardo Villalobosがフランクフルトのレーベル<Rawax>からリリースしたレコードは、通常盤とGOLD VINYL EDITIONが発売されました。
A1に収録された「Neunachi」は、まさしくリズムが主役であり、それ以外の音は移りゆく背景とでも言うべき役割に徹しています。微細な変化で表情を変えるドラムトラックには他とは一線を画した中毒性があります。
Rodriguez Jr. – Santa Cruz [Mobilee]
南フランス出身のプロデューサー、RodriguezJr.ことOlivier Mateuは、エレクトロ・アクトThe Youngstersの片割れとして、Laurent Garnierのレーベル<F-Communications>からリリースし、国際的に名を知られるようになりました。
ソロプロジェクトとしてRodriguez Jr.名義で活動を始め、<Systematic>、<Mobilee>などからリリースをしてきました。
3rdアルバム「BLISSS」のリードシングルとして発表された「Santa Cruz」は美しいプログレッシヴハウスで、Rodriguez Jr.の代表作となる一曲になりました。
Desire – Don’t Call (Guy Gerber Rework) [Rumors]
カナダのバンドDesireが2012年にリリースした「Don’t Call」をイスラエルのDJ /プロデューサー、Guy Gerberがリミックスしたトラックです。この曲はGuy Gerberの近年のライヴ・セットの目玉となる曲で、リリースが待ち望まれていた作品でした。
オリジナル曲はもちろん素晴らしい作品ですが、Guy Gerberのキャリアを築いてきたプロダクションスキルにより、オリジナルトラックが持つ郷愁感と天井に広がるシンセパッドがユニークなマジックを起こしています。