エレクトロニック音楽全般に関して、最新データをまとめたレポートが、イビサで開催されたカンファレンス「International Music Summit」で発表されていました。一部紹介します。
1.Beatportの人気ジャンル遷移

直近7年間のBeatport人気ジャンルの推移。現在1番人気はテックハウス、そしてハウス、メロディック・ハウス/テクノ。ディープ・ハウスはどんどん落ちて、替わりに2~3年前からアフロハウスが台頭。
ここ5年で、テクノからハウスに流行が移ったことが見て取れますが、2026年はダークでアグレッシヴなテクノが流行っているらしいので、また数年で入れ替わるのかもしれません。
2.Spliceでの人気ジャンルの遷移

クリエイターのためのフリー素材プラットフォーム「Splice」での人気ジャンルの遷移。トラップが不動のNo.1で、アフロハウスが急上昇。ドリルが突然人気がなくなったように見えます、何があったのでしょうか。
資料には入っていない最新Spotifyデータでは、2026年に入ってから突如、視聴回数が爆増しているのはスピードガラージ/UKGで、去年の4倍。昔のキラキラUKGではなく、いわゆるベースラインが主流。逆に急激に人気がなくなったのはラテンテック。
Beatport、Splice、Spotify、それぞれユーザー特性やジャンルの分け方が違うので、今の流行はコレだ!とは一概に言えませんが、業界的には「世の中が暗い=暗い音楽が流行る」というテーゼがあるそうで、今年は全体的にダークな音が流行っているとのことです。
3. Soundcloudの#DJSETタグの数

パンデミックで急激に伸び、ロックダウン明けで停滞したものの、再度増え続けています。カンファレンス動画では、AppleやSportfyの選曲機能や、DAWソフトの普及により「みんながDJ」「みんながクリエイター」になる時代、という話をしていました。
4. Soundcloudの人気ジャンル

グローバルサウスの台頭が著しいのと、ハード/インダストリアル・テクノなど、よりハードで速いトラックが人気とのこと。
Vinahouseはベトナムで流行っているEDMで、132~142 BPMと速いピッチのもの。Indonesian BreakbeatもBPM140前後と速いEDM。Colombian Guaracha(グアラチャ)は、クンビア+レゲトン+ハウスといった感じの、BPM130前後のラテンEDM。コロンビアでは数年前にひと段落して、今はチリとメキシコで流行っています。
先日発表されたDJ MagのTop100 Clubの2026年最新投票結果では、バリやプーケットのクラブが上位につけました。潤沢なチャイナ・マネーを笠に着た広告キャンペーンをアグレッシヴに展開していた結果ですが、サウスイースト・アジアン・マーケットは今後も拡大することが見込まれます。プーケットにはCafe Del Marの支店があり、アジア版イビサは香港やシンガポールではなく、プーケットらしいです。
Nonstop Vinahouse 2022
Alka Flow – Emang Gen Z Suka Musik Begini(2025)
Farruko – Pepas(2021)
5.各国の人気ジャンル比較

エレクトロニック音楽のリスナーが圧倒的に多いのはドイツ。オーストラリア、イギリス、オランダ、南アフリカでは、ヒップホップやロックよりも人気があるという結果になっています。ラテン国はラテン音楽が圧倒的多数。
日本が入ってないのですが、おそらく「J POP」「アイドル」「アニメ」「演歌」という、ガラパゴス極まりないジャンルが全体の9割を占めるため、このグラフに入れられなかったと思われます。入れるとしたら、Y軸100以下でロック、ヒップホップ、エレクトロの順ではないかと思いますが、どうでしょう。
インドはヒップホップが一番人気のように見えますが、たぶん欄外、Y軸2000よりはるか上部に「インドPOP」が鎮座しているはずです。国内だけで14.7憶人いますので、人口2憶人のブラジルより音楽リスナーが少ないわけがありません。
さらにカナダやオーストラリア、イギリスに世界最大規模のディアスポラがいます。パキスタン、バングラ、スリランカ、モルディブ、ネパール(インド人やインド的なものを嫌っている国が多いものの、インドがないと経済的に生き残れません)もインド文化圏内で、ボリウッド産の映画や音楽を視聴しているので、その合計数は膨大です。
資料にはYoutubeの集計データがないのですが、今、一番Youtubeの音楽コンテンツが多いのはインド、アメリカ、インドネシア、ブラジルの順。テック企業のCEOどころか、Youtubeまでパンジャブ・ラッパーで埋め尽くされる日が来るのかもしれません。ランキングと関係なく、Youtubeの社長さんはすでにインド人です。
最近、ハウスDJのムンバイ公演がありましたが、この世界最大マーケットかつダンスミュージック未開地のパイを取りに行っているようです。今年はExitもムンバイで開催されますので、東南アジアとあわせて南アジア(インドはアジアです)は要注目。
他に、カンファレンスで指摘されていた動向としては
- マーケット(デジタルセールス、サブスクリプション)は緩やかながら拡大傾向
- メジャーが市場を独占していると思われがちだが、実際には中規模レーベル(おそらくUltraやDefected、Armadaのことを言っていると思われます)と小規模レーベルも均衡しており、メジャー対インディという二項対立ではなくなっている
- ジャンルが細分化しすぎて、トレンドが読みにくい
- レーベルは、アルゴリズムの解析やファンベースのプラットフォーム構築など、高度なマーケティング戦略を立てないと生き残れない
- 普通のリスナーよりも、クリエイター(何らかの形で音楽を自分で作っている人)の方が、何倍も音楽にお金を使っている
- ライブの興行収益は頭打ち、マーチャンダイズは多少伸びているものの、ただロゴ入りTシャツを売るのではなく、ファンベースを構築する基礎となっている
- 女性アーティストが極端に少ない
といった内容でした。
他にもいろんな視点で集計したビッグデータが掲載されている、音楽産業に従事している業界人向けのマーケティング資料ですが、世界的な動向を知る上で、おもしろいデータ。同じ損益計算書を見ても、儲かる投資家と損する投資家がいるように、データはマーケターのセンス次第で数多の解釈が存在するので、ご自身でデータアナライズしてみてはいかがでしょう。
What The Data Really Says About Electronic Music in 2026
Download ↓the full IMS Electronic Music Business Report 2025/26 here:
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