Jaydee(ジェイディー)

  • URLをコピーしました!
目次

Jaydee(ジェイディー)

オランダから登場した、ディープハウス/テクノのプロデューサー、Jaydee(ジェイディー)。元Slum Villageの急逝した天才ではありません。名前に聞き覚えがない方でも、曲を聴けば知っているはずの、インスト・クラシックの作者です。

日本での知名度はゼロに等しいものの、実はオランダではDJの第一人者として知られる存在。このあまりフォーカスされることのない、オランダ人のハウス/テクノクリエイターをご紹介します。

JaydeeことRobin Albers(ロビン・アルバース)は1956年生まれ。幼い頃からジャズファンクやロックを聴いて育ち、Santana、Herbie Hancock、Quincy Jonesに影響を受けます。またテレビでWoodstockの模様を受け、人生が変わったといいます。

’78年、オランダ中部の街、ユトレヒトに近いレーネンのディスコにてDJをスタート。’82年より、国営ラジオのポップミュージック放送局Hilversum 3にて、月曜日の帯番組「AVRO」のディスクジョッキーに就任。

この番組は、時間帯や名前を変えながら、’92年まで続き、国内の様々なクリエイターと親交を深めるきっかけとなります。また’84年より、全国DJミックス選手権を、数回にわたって主催。ダンスミュージックをオランダに広めるきっかけとなります。

80年代のハウスの登場にロビンは魅了され、’90年よりAVROの番組を「For Those Who Like To Groove」と名付け、オランダ初のハウスミュージック番組をスタート。3年連続で「Best Dutch Dance Show」に選出されます。

これは通常のスタジオから放送されたラジオ番組ではなく、クラブで踊っているお客さんを相手に自由に選曲していたところを録音し、ラジオで流していたため、非常に臨場感がある番組だったとのこと。

また、常にラジオやクラブDJで、他人の曲をかけていたロビンは、自分自身が曲を作ったらどうなるだろうと思い立ち、培ってきた人脈からの手助けで、Atariでのトラック制作を学び、ピアノを習い始めます。

’91年、友人とSecret Mission名義で「Were Going Down」をリリース。ハウス、テクノ、ヒップホップをマッシュアップした不思議な感覚のエレクトロ・トラック。

Secret Mission – On A Mission(1991)

Secret Mission「On A Mission」(1991/Mid-Town Records)

’92年、ラジオ局から解雇され、彼はついに自身のハウスミュージック・プロダクションを立ち上げることを決意。レーベル「First Impression」を設立します。

同年「Plastic Dream(プラスティック・ドリーム)」をベルギーのR&S Recordより発表。この約3時間で作ったというJaydee名義のファーストリリース曲が、米国ビルボードダンスチャート1位を記録するなど、世界中で大ヒット。最終的に200万枚を売り上げます。

Jaydee – Plastic Dream(1992)

Jaydee「Plastic Dream」(1992/First Impression)

ゴングの音が鳴り響く中、ハモンド・オルガンが不穏なメロディを奏で続ける、10分を超える大作。作業中にコーヒーを飲もうと思って手をのばしたところ、ひじがAtariのキーボードに当たり、偶然ゴングが鳴って、これを取り込むことに。「世の中は偶然で成り立ってるんだよ」と後年笑って回想しています。

ハモンド・オルガン音はYamaha TX81Z。今はもう接続していないものの、宝物としてラックに保管されています。

タイトルの「Plastic Dream」は、当時ロビンが交際していた彼女が、エアラインの客室乗務員をしていた時の体験から着想を得たもの。まず、80年代からフォーブス誌の億万長者リストに掲載され、大富豪として知られていたドナルド・トランプ氏が、ファーストクラスに搭乗し、彼女にキャビアとシャンパンを注文。

その支払いに、トランプ氏から見たことのない特殊なクレジットカードを渡され、彼女は困惑します。一般的なクレジットカードはすでに世界中で普及していたものの、超富裕層向けのいわゆる「プラチナカード」はサービスをスタートしたばかりで、存在そのものがミステリアスだった時代。

そこで彼女は、そのカードをコクピットに持って行き、機長に報告。「このカードは何?」「トランプって誰?」「大富豪しか持ってない、島でも船でも買えるカードらしい」とコクピット内が大騒ぎ。

同じく後ろを振り返って驚いていたパイロットが、飛行運転操作を誤り、数分間、機体がフラフラと揺れる結果に。この話を聞いたロビンは、単なるプラスチックの小さな破片が、人々の心を惑わせ、夢見心地にさせ、それを手に入れることが理想や目標となってしまうという皮肉を込めて「Plastic Dream」のタイトルを思いついたとのこと。

この大ヒット曲は後年、David MoralesやCarl CoxによるRemix Ver.をはじめ、Remixやカヴァーが後を絶たず、その数は現在までに15Ver.以上を数えます。また2,000以上のコンピレーションに収録。

’93年より自身のクラブ「Club Mellow」をユトレヒト南部のヴィアネンにてスタート。レコーディングスタジオ「De Binnenplaats」も兼ねており、そこからDaydreamやGrayrock、Sax 4 Twoといった名義でのリリースを開始。

Daydream – The Hunter(1994)

Daydream「The Hunter」(1994/Clubstitute Records)

’94年「Music Is So Special」リリース。こちらはテクノ寄りのトラックで、主にヨーロッパでヒットします。またジャケットのデザインを、テクノレーベルWarpでデザインを担当していた、イギリスのデザインチームDesigners Republicに依頼しており、テクノやトランス層へのアプローチを狙ったものと思われます。

同じく’94年よりS.U.A.D.名義にて、Strictly Rhythm RecordsのA&RであるGeorge Morel(ジョージ・モレル)の個人レーベルGroove Onより2枚リリース。また’95年、Karnac名義にて「Black Moon / White Rain」など、Danny Tenagrila(ダニー・テナグリア)のTribal Americaより数枚リリース。

’96年、地元プロデューサー2人と「The Sunclub」というテクノ・プロジェクトをスタート。翌年「Fiesta」がオランダ国内で大ヒット。他にもThe Sunclub名義で「Boom Boom」「Jump」などを国内チャートに送り込みます。

The Sunclub – Fiesta(1997)

The Sunclub「Fiesta」(1997/Dance Pool)

2012年より、フランス人プロデューサーのRico Slideと共に「Electronic Bodyguards(エレクトリック・ボディガーズ)」を結成。ダウンテンポのトラックを発表し、アルバムも作成。

その後も年2~3枚ずつと寡作ながら、コンスタントにシングルをリリース。1曲が8~10分と長いのが特長。オランダの音楽的嗜好を反映しているのか、トランスやプログレッシヴ寄りの、ハードで速いテクノトラックがメインとなっています。

現在もベルギー「Club Charlatan」でのレジデンツをはじめ、年間100回のギグをこなしながら、自身のレーベル「First Impression」を再始動、若いアーティストの発見と育成に力を入れています。

TiëstoやMartin Garrix、Armin van BuurenといったスーパースターDJを輩出した、EDMの震源地であるアムステルダムとロッテルダムから離れ、ユトレヒト郊外という落ち着いた環境に身を置いていることが、彼の末永く地に足のついた活動を下支えしていることは想像に難くありません。

彼が「Plastic Dream」を作った時、地元オランダのレーベルに持っていくと、誰もが「もっとこうした方がいい」と否定的に忠告しました。イントロが長い、ブレイクがない、単調、曲が長すぎるetc etc…。

しかし彼は自分の直観を信じ、最初につくったバージョンからまったく変えずに、最終的にお隣ベルギーのレーベルからリリースにこぎ着けます。

自分のアイデンティティは曲げないこと、他人に言われても変えてはいけないものがあること。偶然をチャンスに変えること…。インタビュー内で、あらゆる例を挙げ、彼は次世代に向けたアドヴァイスを何回も力説しています。

小さなプラスチック片に、人々が夢中になることを不思議に思った彼は、「結局自分はそのプラスチック片を持つことはなかったけれど」と、笑って話します。偶然鳴った「Plastic Dream」のゴングは、巨大産業化するダンスミュージック界への、D.I.Y.アンダーグラウンド・スピリットからの警鐘なのかもしれません。

Jaydeeのおすすめ曲

Jaydee – I Want You(1993)

Jaydee「I Want You」(1993/First Impression

Jaydee – Back Into Acid(1993)

Jaydee「Back Into Acid」(1993/First Impression)

Electronic Bodyguards – You Can’t Stop Me Now(1993)

Electronic Bodyguards「You Can’t Stop Me Now(1993/Clubstitute Records)

Daydream – Indian Blood(1994)

Daydream「 Indian Blood」(1994/Clubstitute Records)

Jaydee – Bring The Presure(1994)

Jaydee「Bring The Presure」(1994/Clubstitute Records)

JaydeeのDJ

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次