多くの人は、観客の前でミスをして笑われることになったらストレスを感じるでしょう。本番前に緊張するのは自然なことで、ベストを尽くそうとする身体の反応の一部です。このような時に体内で分泌されるストレスホルモン(アドレナリンなど)は、実際に集中力を高めてくれる効果もあります。
しかし、パフォーマンスに関する心配やストレスが過度になると、震えや、冷や汗が出たり、お腹が痛くなったり、頭が働かなくなったりと、これらのホルモンが「赤信号」のような感覚を与えるのです。
観客の前での初めてのDJ、夢の舞台でのDJ。
その日のために練習を重ね、準備を進めてきた素晴らしい瞬間です。しかし、会場に到着すると、胃の中のきゅっと締め付けられ、頭の中ではネガティブな思考が浮かび始めます。
DJブースに立つと、神経が高ぶり、不安のレベルが一気に上昇します。手が冷たくなり、ヘッドホンをDJミキサーに接続することさえもままならない、そんな経験はないでしょうか?
では、もし失敗したらどうなるのでしょうか?
「2度とDJが出来ない?キャリアの終わり?」
現実にはそのどちらも起こりません。何かのミスを発生したとしても、それは世界の終わりではないということです。
そして、初めてDJをするビギナーであろうと、大きなフェスティバルに出演する有名DJであろうと、あらゆるレベルのDJにこのようなプレッシャーがかかるという事実です。
すべてのDJが経験することですから、うまく対処する方法を知っていれば、その感覚をコントロールするのに役立ちます。
今回はDJの緊張を和らげることが出来るかもしれない12の方法をご紹介します。
準備をする
準備ができていれば、緊張で固まってしまう可能性を低くできます。
DJのスキルよりもプレイする音楽の方が重要です。技術的には世界一のDJでも、現場に合わない音楽をかければ、うまくいかないでしょう。準備はリサーチすることから始まります。どんな会場で、どんな観客が集まるのか、そして自分のプレイ前後のDJを出来る限りリサーチし、ダンスフロアに火をつけるような完璧な準備を行いましょう。
初心者のうちは最初から最後まで選曲の構成を決めておくのがおすすめです。場数を踏んで慣れて来たら、プレイリストに十分な曲数を入れて、その日の観客の反応を見ながら、様々なスタイルに対応できるようにしましょう。
CDJやPCDJでプレイする場合は、DJソフトでプレイリストを分析し、ビートグリッドにズレがないかを確認し、ミックスの開始ポイントや終了ポイントをキューやホットキューで設定しておきましょう。余裕があればサンプラーやエフェクターなどが使えるポイントも把握しておきましょう。
うまくいかないことを心配するよりも、「自分はできる!」と言い聞かせ、ポジティブなエネルギーを高め、自分を奮い立たせてください。時には友達にプレイを聞いてもらって叱咤激励してもらっても良いかもしれません。
練習につぐ練習
DJに限らずですが、本番への緊張を和らげるには練習することが一番です。できる限りリハーサルを行い、機会があれば一人でも人前でも練習しましょう。リラックスして準備ができたと思えるまで練習してください。準備ができていることからくる自信ほど、緊張を和らげるものはありません。
練習を重ねれば重ねるほど、そして本番に臨めば臨むほど、よりDJプレイへの心理的負担が下がり簡単になります。クラブで使うようなDJ機材が家にない場合は、友人の家で練習させてもらったり、音楽スタジオを予約して、会場で使う機材に慣れておくと良いでしょう。
DJスクールやSNSのコミュニティなどの集まりを利用するのも良いかもしれません。他のDJと一緒に練習することで、意見交換をすることもできます。
本番用に選んだ曲で何度もミックスを練習し、曲を知り尽くすことで心に余裕が生まれます。
プロのDJであっても毎日練習するという人はたくさんいます。技術の向上を目的としていることもありますが、誰よりも練習しているという自負が自分のパフォーマンスを良くすることを知っているからでしょう。
自分が冷静になれる方法を見つける
例えば、オリンピックの選手や音楽のソリストなどのパフォーマーたちは本番だけではなく、本番前の時間も大切だと言います。
舞台によっては、自分の出番が来るまでにかなりの時間がかかる場合もあります。人によっては、家族やペットの写真、インスピレーションを得るための動画を見たり、リラックス用の音楽を用意したり、気持ちを落ち着かせるためのヨガや呼吸法を学んだりしています。
リラックスするために活動的でなければならない人もいれば、静かに落ち着いていなければならない人もいます。自分に合ったテクニックを見つけて、大事な本番前の時間を使う計画を立てましょう。
緊張することを恐れる必要はありません。本番で緊張してもビクビクしなくて大丈夫です。その感覚を無理に止めようとしたりせず、そのままにしておきましょう。それは自然なことで、自分の神経系が準備を整えるために活性化しているだけだと知っておいてください。
それを自分に有利になるようにコントロールするのは自分次第です。前向きな励ましの言葉と心を落ち着かせる方法を使って、それを実行してください。
大きな舞台の前には、リハーサルや練習に時間をかけすぎて、自分自身のケアがおろそかになることに気をつけましょう。本番前には十分な睡眠と健康的な食事を心がけることで、最高の状態で臨むことができます。また、睡眠と栄養に加えて、運動することは気分を良くしてくれますし、ストレスホルモンの抑制にも効果があります。
腹式呼吸
リラックスした状態では、空気は自然に肺の奥へと流れていきます。腹式呼吸の練習は、このようなリラックスした気持ちを作り出すのに役立ちます。
不安は呼吸を浅くし、脈拍を増加させます。呼吸を整えることで、コントロールを失いそうになったときに対処できます。
ミックスに失敗したり、自分のプレイに不安になったとき、プレッシャーから解放される最短の方法は、大きく深呼吸をしてリセットし、目の前のことに集中することです。
ミスをしたり、焦りを感じた場合は、一度DJ機材の前から物理的に距離を取って、ゆっくり深く息を吸って伸びをしたりしてリセットしましょう。
フォーカウント・ブレス
指で数える呼吸法は、自分の思考の「一時停止」ボタンを押して、ゆっくりとした時間を過ごすのに良い方法です。
- 指を折りながら、1、2、3、4と4カウント数えゆっくり息を吸う
- 4カウントしながら息を止める
- 4カウントしながら口から息を吐き切る
- 4カウントしながら息を止める
- 以上のセットを落ち着くまでくり返す(最低4サイクル以上)
手にあるツボを押す
神門(しんもん)と呼ばれるツボは、イライラや不安を感じた時や落ち込んだ時に、リラックスさせ精神状態を安定させるツボだそうです。
迷わず押しまくりましょう。
身体をほぐす
ストレッチしたり、走ったり、腕立て伏せ、フロアで踊るなど身体を動かすことで血流が良くなり、ポジティブになる効果があります。
本番以外の日常でも筋トレをしたり、ランニングなど継続的な運動は、健康にプラスの効果があるうえに、自己肯定感を高めることがわかっています。
どんな大物DJでも失敗をしているということ
どんなに大物DJであっても人間ですから、緊張しますし、失敗もしています。
個人的には印象に残っているのは、誰もが知っているような海外の有名なDJが、一曲ミックスする度に大量の汗を拭い、5本のペットボトルを等間隔にきれいにテーブルに並べるという行動を繰り返していました。おそらくペットボトルをきれいに並べるというのが緊張をほぐすための自分なりの精神統一方法だったのではないかと思います。
Youtubeでも多くのDJの失敗動画がアップされています。
ミスをしたところでDJキャリアは終わらないし、彼らは今でもツアーを続け、キャリアを維持しています。
誰にでも駆け出しの頃はあり、たくさんの失敗を経験して上達していきます。
誰もそんなに気にしていない
失敗するのが怖い?
スムーズなミックスに失敗した?
リズムがドタバタになってしまった?
うっかり音を止めてしまった?
ほとんどの人は、あなたが思っているほど気にしていません。誰がDJしているのかすら知らないほどです。DJのトランジションや選曲を分析的に聞く一部の人を除いては、あなたが呼びかけない限り、人はそれほど注意を払っていないことを知っておいてください。また、ミスに気づく人がいたとしても、その人は30秒後には全く別のことを考えているでしょう。
あなたのプレイを一番集中して聴いているのはあなた自身です。それは些細なミスも大きく捉えがちということです。観客はおそらくあなたほどには気にしていないでしょう。
完璧なDJの出来というのはほとんどありません。常に何かが起こりますし、それも含めて音楽体験としての本質なのです。失敗しても、そこから学び、同じ過ちをしないようにするだけです。
序盤にわざと小さいミスを起こす
序盤にあえて小さなミスを起こすというのも一つの有効な方法です。
完璧にしようとするから余計なプレッシャーがかかることが多いので、例えば、あえて少しだけビートをずらしてミックスしてみたり、ボリュームをあえて小さくしたり、大袈裟にエフェクトをかけてみたりと、ミスとは思えない程度のことを自発的に起こして、すぐに修正するといった具合です。
わざと小さなミスをすることでダメージがほとんどなく、「パーフェクトにしなくては!」という肩の荷を一つ降ろせます。
クラブをホーム化する
クラブをアウェイだと感じるから緊張するというのも一つの要因としてあるでしょう。
とにかくクラブに通って、クラブ慣れすること、友達をたくさん作って、クラブをホーム化するのも一つの手です。家でリラックスしながら友達と練習しているような感覚にしてしまえば良いのです。
そして、本番前に出来る限り多くの人と話しておくことで、ホームだという意識を高めることが出来ますし、プレイ中も好意的に応援してくれるでしょう。
お酒の力を借りる
どうしても緊張して仕方がないという場合は、お酒の力を借りるのもアリかもしれません。ただし、泥酔するまで飲んでDJプレイが疎かになってしまうのは本末転倒なので、緊張がほぐれる程度にしておきましょう。飲みたい人はプレイが終われば好きなだけ飲めますからね。
まとめ
緊張することは誰もが一度は経験することですが、人として自然なことなので心配ありません。
DJの場合、ブースの中で一人のことが多いので、ちょっとしたミスであっても拡大解釈してしまいがちです。
プレッシャーと向き合い、少しずつ解決していく方法を身につける必要があります。意図的に少しずつプレッシャーがかかる状況に身を置き、それに慣れることで、軽減するスキルを身につけるだけでなく、日常生活でもメンタルを強くすることができるでしょう。
あなたの周りのDJに、過去にやらかしたDJ中の大きな失敗について聞いてみてください。みんな一つや二つ失敗談を持っています。後になれば笑い話の一つとしてそれも良い経験だったと思えるようになります。
あなたのDJは素晴らしいです。あなたの世界に没頭していきましょう。