DJ MagのTop 100 DJs、2026年の投票スタート
老舗雑誌DJ Magが毎年発表しているランキングTop 100 DJs。2026年の一般投票がスタートしました。投票するもしないもアナタ次第。
投票方法
1.サイトにアクセス(djmag.com)

2.読者投票のページにアクセス(top100djsvote.djmag.com)

日本語に切り替え可能。Google、Apple、E-mailのうち、自分が投票しやすいプラットフォームを選ぶ
※二重投票を避けるためのVerificationです。後から削除する方法が分からないので、DJ Magにメールアドレスを知られたくない人は、投票しない方が良いです。Appleの方は「メールアドレスを非公開」にすると、アドレスは先方に知られずに済みます。
3.条件がOKかどうか確認

Bridge for Musicは南アフリカのランガにある Bridges Academy という学校が中心となっており、資源の乏しいコミュニティの若く意欲的なミュージシャンを支援することに焦点を当てた非営利団体。
ランクインDJからの寄付や、このランキング発表イベントで任意の寄付を募り、そのお金がNPOに行くという仕組みだそうです。取ってつけたような「慈善事業」というタテマエ。
4.メールアドレスの確認、名前、住所(City/国)を入力

5.5人のDJの名前を入れる

5人を入力しますが、1が5点、2が4点、3が3点、4が2点、5が1点でカウントされます。5枠全部に違う名前を入れないと無効票になります。また綴りが大幅に間違っていても無効票。システム上、間違いチェックのエラー等は出ませんので、Submitの前に5人とも正しい綴りか、再確認してください。ここでSubmitを押したらもう終了で、入力確認画面がありません。
- 生きていてDJ活動している人を対象としているので、亡くなっている人やリタイアした人に入れると無効票です。
- 5つ埋めないとSubmitできません、無理にでも埋める必要があります。
5.投票終了。

6.締め切りは9月16日、発表は10月6日
さて、何かにつけコントラバーシャルなTop 100 DJs。ヨーロッパのクラブゴウワーの間では「聴いてはいけないDJランキング」と言われています。日本のハウス好きにとっても「好きなDJが一人も入っていない謎ランキング」です。
なぜこんなランキングが存在するのか、歴史と内容を調べました。
History 1991-1999
DJ MagことDJ Magazineは、もともと「Disc Jockey Magazine」、その後「Jocks Magazine」という名でTim Jeffrey(ティム・ジェフリー)が作っていたものを、Chris Mellor(クリス・メロア)が編集長となって引き継ぎ、「DJ Magazine」として1991年5月、イギリスにて創刊。
当初は2週間ごとに発行で、イギリスのダンス音楽とレイブシーンを伝える紙媒体でした。

最初の2年間は編集者が選んだベストDJを紹介しており、’91年はDanny Rampling(ダニー・ランプリング)、’92年はSmokin Jo(スモーキン・ジョー)。ふたりはロンドンのレイブカルチャーの代表的DJです。
1993年10月、創刊100号を記念して「Top100」をオフィシャル・ランキングとして公開。だだし、この時もまだ編集者が選んでいます。1位はレゲエ/ダブのAba Shanti-I(アバ・シャンティ・アイ)、2位はイビザで活躍していたアルゼンチン人DJのAlfredo(アルフレド)、3位はSasha(サーシャ)。
他にはFunkmaster Flex、DJ Premier、DJ Jazzy Jeffといったアメリカのヒップホップ勢も選出されており、オールジャンルでした。
1997年より一般投票を開始。最初の1位はCarl Cox(カール・コックス)ですが、この時代は郵便による投票で、雑誌の投票用紙を切り取り、編集部のあるロンドンに郵送する必要があり、イギリス在住以外のファンに不利というか、ほぼ参加不可な状態でした。
インターネットが普及する前で、シカゴやNYのハウスファンからすると「カール・コックスって誰?」という時代です。

From 2000 till Recent
2000年初頭に、インターネットによるオンライン投票も開始。後半にはインターネット投票オンリーになり、ここからドバーっと投票者が増え、メジャーな知名度を獲得。現在では130万人が投票する一大イベントに成長しました。
EDMの大流行により、スーパースターDJやセレブDJなるものが登場しますが、この影響で、ランキングでも知名度のあるDJが選ばれることになり、いわば「人気投票」といった投票結果になりました。
従来はクラブの動員数、アルバムやシングルのセールス枚数でDJの人気度や知名度を見積もっていたはずなので、ファンによる直接投票というのは民主主義的で公平な数字のように見えます。
しかし、このランキングが何を意味するかというと、DJのギャラに直結します。何位でいくら、というブッキング・エージェンシーの基準ができてしまい、キャピタリズム+ポピュリズム極まる状況と化しています。
この現象にA-Trakなど実力派DJが異を唱えており「DJは技術あってのアート表現」であって、知名度ではなく技術の高さで評価するべきだという主張です。
非常に納得のいく話で、それこそプロのDJの極意であるはずですが、すでにCDJやラップトップDJが標準の世の中、いかにシームレスに12inchをつなげるかとか、ターンテーブルを楽器のように使うかということではなくなっているので、時代が変わったとしか言いようがありません。
How to Get a Better Rank?
このランキングに入り、上位につける=ブッキングが増える、ギャラが上がる、つまり「Top 100 DJs」はDJやプロモーターの営業ツールと化しています。そして人気投票ですから、マーケティングやPRに長けたDJが勝つと言っても過言ではありません。
1位のDavid Guettaにはマーケティングチーム「Team Guetta」が存在します。月に最低1曲はリリースし、有名アーティストをフューチャリング、世界ツアーを組み、彼の名前がメディアやSportfyで常に出ているようにしています。彼の挙動のすべてはランキングをキープするためのものであり、チームゲッタは「集票マシン」と言われています。
3位のAlokはゲーム「Free Fire」のキャラクターとして有名で、主にアジアのゲーマーが投票。彼の曲やDJなど聴いたこともない人が投票しています。またPR会社を雇ってアグレッシブな広告キャンペーンを展開。
4位のDimitri Vegas & Like Mikeは、iPadを持たせた投票チームを組み、巨大フェスやその近辺のショッピングモールで、無料プレゼントや無料ダウンロードをエサに、その場で投票してもらうという強制投票に近いことをやらせ、さすがにこれは非難を浴びストップしました。
とりあえず10位ぐらいまでの人は、マーケティングとPRに$100,000~$200,000、1600万円~3200万円を投資しています。DJのスキルや楽曲のクオリティと何の関係もありません、単なるビジネスマンです。逆に言うと、それぐらい使わないと10位以内に入れません。


投資をリクープしつつ稼がないといけないので、当然ながら日本に来ません。日本に来たって赤字だからです。10位以内の人が来る場合、東京の一番キャパの大きいクラブで、チケットを最低3万円にしてソールドアウトさせないといけないという、非現実的な数字です。ギャラ固定で大阪と2回公演でも1万5000円。
武道館や東京ドームでやるか、数千人、数万人集まるフェス以外は採算が取れません。東京ドームが埋められるDJ、いますか?ヒップホップの人気ラッパーでも難しいです。
なので、DJワールドツアーを組むブッキングエージェンシーは日本にブックしません。同じ飛行機代を払うなら、4~5回公演できてギャラも高いオーストラリアを組み込みます。こういうわけで上位にいけばいくほど、日本人にとっては「誰ソレ?」というペイパー・チェイサーDJが並んでいます。
DJ Magのランキングに対抗して、Resident Advisorも2006年よりエディター&DJ投票によるTop100 DJを発表、2008年より読者投票を開始。
しかし、欧米の白人男性DJばかりになってしまったこと、上位のDJのギャラが異常に上がってしまったことなどに懸念を抱いたRAは「アンダーグラウンドシーンに有害である」として、2016年の結果発表を最後に、2017年、ランキングの中止を表明しました。
さらに2018年、Aviciiさんが若くして亡くなったことで、彼の死の原因が何であれ「この業界、何かおかしいのでは?」と感じた人が世界中にいました。
本人はDJランキングなどまったく気にしておらず、DJツアーよりも曲をつくりたいシャイなアーティストだったそうですが、マネジメントやエージェンシーがコミッションのためにギャラをつり上げ、本人が休みたいと言っているにも関わらずブッキングしまくっていたことは想像に難くありません。

常軌を逸した加熱ぶりに、DJ Magもおかしいと思ったらしく、2018年からはBeatportのセールス数も含めた「Alternative Top 100 DJs」というランキングが別途、テクノ/ハウスに限って発表されており、EDMのDJは除外されています。
こうなるとDJは、新曲を出さないといけません。本来DJと曲のプロデュースは別の能力です。ラリー・レヴァンもデビット・マンキューソも自作曲など作ったことがありません。EDMの人がいないのは結構ですが、これはこれでちょっと違います。
またDavid GuettaやCarvin Harrisは、ランキングを維持するために「ハウスの曲を出す」という戦略を取っています。EDMばかりだとレピュテーションが下がるため、こうやってBeatportのセールスを稼ぎ、あわよくばオルタナティブ・ランキングも取りに来ようとしています。本当にハウスが好きで作っているわけではありません。
Top 100 Clubs and Festivals
DJ Magは2006年から「Top 100 Clubs」という、ナイトクラブの世界ランキングも発表していますが、最初の3年はDJによる投票のみ、2010年から一般投票となりました。こちらも現在70万人が投票する一大イベントと化しています。
2026年の投票時には、投票ページにクロアチアのドヴロウニク、イタリアのリミニ、タイのバンコク、ベトナムのホーチミン、チェコのプラハ、マレーシアのジャカルタ、ブラジルのサンパウロ、中国の香港といった場所にあるクラブが「うちに投票してください!」というバナー広告を貼っていました。

これってアリですか??? 国会議員選挙で、投票日に、選挙会場のド真ん前で本人が演説しているようなものです。
DJ Magはこの広告エリア(背景、ヘッダー、サイド、フッターと数カ所アリ)に高額料金を設定。Top 100 DJsに続き、世界各国のクラブからも広告費を巻き上げたいがために、新しく作ったランキングというのがバレバレです。
広告料金は$18,000~$40,000、約300万~600万円。大資本のメガクラブからすると、こんな額でお客さんが増えるなら安いものですが、DJ Magは20~30件ぐらい売っているので、この投票期間だけで最低1憶円は売り上がっています。DJ Magなんて一般人が買わない専門誌が継続できているのは、この広告収入のおかげ。
Top 100 Clubsも、ブラジルが上位に入っている(1位を獲ったこともある)のですが、これはブラジルのクラブのオーナーが「1位」のトロフィが欲しいというエゴです。数々のリゾート施設やホテルを手掛ける彼からしてみれば、広告費やDJのギャラなどスズメの涙。
投票期間中、David Guettaなどランキング上位のDJに法外なギャラ(広告費より高い)を払って来てもらい、お客さん全員に投票させるというやり方。「オレのクラブは世界一のDJが来る世界一のクラブだぞ!」と言いたい人がやっています。
今後もアジアや中東の、金にモノ言わせるタイプのオーナーがいるクラブが上位にくるのは想像がつきます。
2019年からは「Top 100 Festivals」もスタート、2022年から一般投票を開始。DJ Magとしては年に3回投票期間があり、その投票時の広告収入だけでも3憶円以上は売り上がっています。逆に出版・メディア事業の会社として成り立たせるには、最低でもこれぐらいの売上規模がないと廻らないので、ランキングがなかったらこの会社はつぶれます。

またDJ Magazineにはポルトガル語版ウェブサイトが存在します。これで英語が苦手なブラジル人でもスムーズに投票できるようになっています。実は他にもローカライズ版が15種類もあり、各エリアのクラブやフェスから広告費を巻き上げるのが、DJ Magのビジネスモデル。
2016年にスタートした日本語版がすぐ終わったのは、制作費がペイできるだけの広告費を出すDJやクラブやフェスが日本になかったからでしょう。終わって結構。日本のクラブ業界は、お店とDJとお客さんの信頼関係で成り立っています、それが本来の形。
RAは広告ではないビジネスモデルにシフトしましたが、結構まともなクリティックが載っているのは、広告費だけに頼っていないからです。DJと店とフェスが直接広告主のDJ Magは、広告費のためなら何だって書きます。ランク上位のDJやクラブのニュースが常に載っているのは、彼らが上顧客で年間何百~何千万円もDJ Magに払っているからです。
ベルグハインやファブリックなど音楽至上主義のクラブは、お金で票を買うシステムに反対しており、投票しないように呼びかけています。クオリティ重視であればあるほど、ランキングには入っていないという皮肉。
Would you like to vote?
BUT、みんながみんな、お金を払って票を買っているわけではありません。TOP 100 DJsでは、本人がランキングを気にしていなくても、ファンが熱心に投票しているDJもいます。ランキングに入りたくないというDJもいます。誰が票を買っているビジネスマンか、誰がファンから愛されているDJか、誰が投票されたくないDJか、見極める必要があります。
こんなDJランキング、音楽ファンにとって何の意味もなく、やめてほしいところですが、せっかく一般投票で参加できるので、自分の場合は、好きな若手DJや日本人DJに投票して、彼や彼女のギャラが1ドルでも上がるように応援した方が良いという考えに至りました。巨大フェスに行くお金はありませんが、オンライン投票なら無料です。
リアル・クラバーには全然関係ない「裸の王様」ランキングなので、カチ無視も全然OK。プライベートジェットに乗って、高級コンドミニアムに住む大富豪DJを、より金持ちにするために投票する必要は微塵もありません。
自腹で広告費を払って、より高いギャラをゲットするというマッチポンプをやめさせ「お前は裸だ!」と言わないと、上位だけ延々とギャラが上がり続け、DJ間格差が広がることになります。
もしも、あらゆる面で平等・非営利を貫いたデヴィッド・マンキューソがこのランキングの存在を知ったら、めちゃくちゃ怒るに違いありません。クラブ業界のエコシステムを破壊する愚行と抗議するはずです。
彼の思い描いていた社会には、こんなランキングなど存在しません。でもみんながマンキューソ・スタイルを貫くと、誰もDJで喰えないのも確かです。
それではみなさん、上記経緯を踏まえての投票、ご検討ください。

