3月29日はピアノの日。Marshall Jefferson「Move Your Body」の時代から、ピアノの有名な曲はたくさんありますが、なるべくボーカルなしのインストを中心にピアノハウスを集めました。
House on the Piano Day~ピアノの日のハウス~
Sterling Void & Paris Brightledge – It’s All Right(Dub Mix)(1987)
ヴォーカルVer.が名曲の「It’s All Right」、ダブVerはコーラス+ピアノ。ProducerにMarshall Jeffersonがクレジットされており、おそらくマーシャルが「Move Your Body」方式でピアノを弾いているのでないかと言わているトラック。
1988年、Pet Shop Boysにカヴァーされていますが、ピアノのメロディは消えており、シンセポップな曲になっています。
The Mixmaster – Grand Piano(1989)
誰もが知っているフレーズをモリモリにぶち込んだ、反則技のイタロハウスのピアノハウス。サンプラーを買ったばかりで使いたくてしょうがなかったのかもしれませんが、さすがに盛りすぎて得体の知れない曲になりました。それでもイギリスのトップチャート9位までつけたヒット曲。
The Mixmasterは、Black Boxのうちの一人、Daniele Davoli(ダニエレ・ダヴォ―リ)さんによるプロジェクト。
ピアノはPhortune「String Free」とColdcut feat. Lisa Stansfield「People Hold On」、リズム隊がLiaz「House Sensation」、ギターCandido「Jingo」。入れたい放題のヴォーカルはLoleatta Holloway、Joe Tex、James Brown、Tyree Cooper、Ralphi Rosario feat. Xavier Gold、West Phillip。節操なさすぎ。
Soft House Company – What You Need…/A Little Piano(1990)
イタロハウスの傑作と言われるIRMA産ピアノハウス、2曲。
ピアノ音はKorg M1のプリセットPiano 16。ピアノを弾いているのはIRMA Recordsのレジデント・プロデューサーであり、長年クラシックピアノを習っていたキーボーディストでもあるClaudio “Moz-Art” Rispoli(クラウディオ・モッツァート・リスポリ)さん。
Moz-Artさんは、1975年から伝説のクラブ Baia degli Angeli (バイア・デリ・アンジェリ/Bay of the Angels)にてDaniele Baldelli(ダニエレ・バルデッリ)と共にDJを開始。Acid JazzのJestofunk、ハウスプロジェクトのDouble DeeやSoft House Company等のプロデュースを手掛け、IRMA初期のクリエイティブを支えたひとり。2025年12月に67歳でお亡くなりになりました。
イタロディスコ時代からの伝説的DJとして尊敬されており、Dave Lee(Joey Negro/デイブ・リー)やDanny Rampling(ダニー・ランプリング)から追悼の言葉が寄せられていました。
Touch Of Soul – We Got The Love(Piano Version)(1990)
こちらもイタロハウスのピアノハウス。日本では、NitelistからリリースのInner City Jam Orchestraによる2007年バージョンのEMMAさんMixがなじみ深いかもしれません。
Touch Of Soul は Leonardo Rosi(レオナルド・ロシ)、A. Neri(A.ネリ)、M. Galeazzi(M.ガレッツィー)のイタリア人3人組。Touch Of Soul名義ではこの1曲しかありませんが、3人とも個々に10以上のユニットやグループに参加してレコードを出しており、この頃のイタリアでは各プロデューサーがいろんな友達と組んで曲を作ってみるのが流行っていたようです。
Electric Choc – Shock The Beat(Piano Mix)(1990)
これもイタロハウスのピアノハウス。1993年ごろイギリスでヒットした後、1996年にイギリス人DJ兼プロデューサーのPianomanによる新Remixが出て再度ヒット。
Electric Chocは、Edoardo Milani(エドアルド・ミラーニ)というイタリア人DJ兼プロデューサー。ピアノはLinx「You’re Lying」からサンプリング、ヴォーカルはAretha Franklin「Who’s Zoomin’ Who」。
Don Carlos – Alone(Paradise Mix)(1991)
まだ続くイタロハウスのピアノハウス。イタロハウスの重鎮、Don Carlos(ドン・カルロス)ことCarlo Troja(カルロ・トロヤ)さんによる、こちらもIRMA産の名作。「Alone」は彼のデビュー12inchですが、毎年ほぼ1枚づつと寡作ながら今でも12inchで新譜が出ており、2026年の新譜「Mediterranean Sunset」もピアノ&サックスのジャズハウス。
ラベル面を見ると住所がNYになっていますが、この時期 IRMAはNYに支店があったそうです。イタリアのボローニャがHQで、現在唯一の海外支店は東京にあります。
Outrage – That Piano Track(1993)
いつピアノが出てくるんですか?と待たせるプログレッシブ・ピアノハウス。Boy’s Ownの6枚め。
Outrage(アウトレイジ)はイギリス人プロデューサーFabi Paras(ファビ・パラス)で、この曲はTerry Farley(テリー・フェアリー)が共同プロデューサーに名を連ねています。
そのまんますぎるタイトルですが、これはもともとテスト盤のホワイトレーベルをSasha(サーシャ)やAndrew Weatherall(アンドリュー・ウェザーオール)に渡してMinistry Of SoundやRenaissanceでかけてもらっていた時、お客さんが寄ってきて「この曲何ですか?」と聞かれることが多く、DJはタイトルを知らないので投げやりに「That Piano Track」と答えていたのを、正規リリース時にそのまま使ったとのこと。
MD X-Spress – God Made Me Phunky(Original Mix)(1994)
MD X-SpressことMike Dann(マイク・ダン)によるシカゴハウスのクラシック。
タイトルは1977年発売The Headhunters「God Make Me Funky」から。最初はここからヴォーカルをサンプリングしていたものの、マイク本人の声で撮り直したのでタイトルだけが残っています。TR-909のキック+スネア+クラップに、TB-303のベース、Akaiのピアノ音。シンプルな構成ながら、ベースが少し(半音の1/8~1/4)だけ低く、ピアノは少しだけ高く音程をズラし、意図的に不協和音にしてあるのでクセになるそうです。
ハマる人続出で、X-Press 2、Harry Romeroなど数種類のRemixが出ている上、オリジナルも何回も再発されている名盤。
Eric Kupper presents K-Scope2 – Stonk(1995)
Eric Kupper(エリック・カッパー)による、捨て曲が1曲もない傑作「K-Scope」EPの2枚目に収録されている、ピアノだけで攻めた超アッパートラック。
ちなみにピアノデイというのは、2015年にNils Frahm(ニルス・フラーム)さんというドイツ人ピアニストが作った比較的新しい記念日。毎年1月1日から数えて、鍵盤数の88日めに設定されているそうで、今年は3月29日。うるう年の場合は28日になります。

95 North – The Journey(Mute Mix)(1995)
ザ・90年代!という音のするピアノハウス。95Northはボルティモア出身のDoug Smith(ダグ・スミス)とRichard Payton(リチャード・ペイトン)のふたり組で、Basement Boysや後期Blazeと共に、ジャージーサウンドを代表するアーティストのひとつ。95Northの名前は、D.C.からボルティモアを通ってマンハッタンまで北上する高速道路Interstate 95から。
Shelter Recordsからのリリース、Mute MixはJoe Claussell(ジョー・クラウゼル)によるMix。
今年2026年はShelterが35周年で、先日3月6日、Williamsburgにある「3 Dollar Bill」というクラブで記念イベントが開催されました。Timmy Regisford(ティミー・レジスフォード)、Secred Medicine(ジョー・クラウゼル×ロン・トレントのBtoBデュオ)が出演。
Moodyman – The Dancer(DJ Tonka Remix)(1996)
ムーディーマン初期リリース「The Dancer」の、元の曲と違いすぎるDJ Tonka Remix。オリジナルのKDJ盤には入っておらず、オランダ盤とドイツ盤のみに収録されているレアヴァージョン。無駄にテンションが高く、ムーディ本人が許可しているとは到底思えません。
この12inch、片面は33回転、トンカMixが入っている面は45回転という、変なカッティング。トンカ好みのシャリシャリパキパキしたマスタリングに、6分半を45RPMかつブランクなしで彫っていて、ものすごい音が出ます。
DJトンカは、キャッチーでヒップなRemixで人気だったドイツ人DJ。45回転12inchばっかり出していた変人で、当時は同級生のIan Pooley(イアン・プーリー)よりも断然有名でした。今も現役で新譜が出ていて、作風がまったく変わっていないことに驚きます。
Karizma – The Power(1999)
Basement BoysもJasper Street CompanyもThose Guysもハモンドオルガンの印象が強いのですが、その中でピアノが際立っているのがKarizmaソロ名義の「The Power」。
2012年、DJ Spinna(Spenではありません)がいくつかRemix Ver.を出しています。なぜゆえSpinna?なのですが、KarizmaはFav DJに必ずSpinnaを挙げるほど尊敬しているメンター的な存在で、昔から仲が良いそうです。
Soul Central – Strings Of Life(Danny Krivit Re Edit)(2005)
問答無用の名曲ピアノハウス。オリジナルは1987年リリースのDerrik May(デリック・メイ)によるテクノ。タイトルの名付け親はFrankie Knuckles(フランキー・ナックルズ)。
1992年、イギリス人デュオHyper Go Goが、このオリジナルからサンプリングした「High」という曲をリリースしてヒットしていますが、あまりにも派手でユーロビートなレイブ・アンセム。ハイパーゴーゴーという今どきありそうにない名前から音を想像してみてください。
Grant Nelson – Spellbound(2007)
いかにもキーボーディストらしい、Grant Nelson(グラント・ネルソン)のピアノハウス。ピアノのベースラインに、ピアノのメロディラインを組み合わせた、ピアノづくしの秀作。
Francesco Tristano – The Melody(Carl Craig Remix)(2008)
ルクセンブルグ出身、ジュリアード卒のピアニスト、Francesco Tristano(フランチェスコ・トリスターノ)と、Carl Craig(カール・クレイグ)がコラボしたピアノテクノ。
フランチェスコさんは、カール・クレイグから紹介されてデリック・メイのアルバム『Surface Tension』に参加。先ほどの名曲「Strings Of Life」を生ピアノ演奏している映像もありますが、バッハからグールドから坂本龍一さんからジャズからデトロイトテクノまで何でも弾ける、クロスオーヴァーなピアニスト。
生共演はこちら。
Tim Deluxe – Transformation(2011)
90年代から活躍しているロンドンのDJ兼プロデューサー、Tim Deluxe(ティム・デラックス)ことTimothy Andrew Liken(ティモシー・アンドリュー・リケン)による長尺ピアノハウス。UKガラージの代表曲「Ripgroove」を作ったDouble 99のデュオの一人。
この曲は2011年、Darren Emerson(ダレン・エマーソン)がFuji Rock FestivalのOrange Courtで初披露、EPの印税を東日本大震災の被災地支援のため日本赤十字社に寄付して話題となりました。ティムさん、ありがとうございます。
Nicolas Jaar – La Bohème (Nico Edit)(2012)
国歌的名曲を脱構築したミニマル・ハウスのカルト作。オリジナルは1965年発売、Charles Aznavour(シャルル・アズナヴール)の同名曲。フランスが誇るシャンソン歌手の、フランス人なら誰もが知る一番有名な曲。
Nicolas Jaar(ニコラ・ジャー)は1990年生まれ、18歳でEPデビューし、21歳にアルバム『Space Is Only Noise』が成功を収めます。この「La Bohème」はそのアルバム制作の頃に作られ、Nico名義でSoundcloudにこっそりアップ。彼がブルックリンやベルリンでのライブ時にプレイして話題となり、ファンの誰かが2012年Youtubeにアップ。
彼は自らの音楽を「Dust(塵、ホコリ)」に例えており「Wait, do I know this song?(ちょっと待って、この曲、知ってるかも?)」と感じてもらいたい、とのこと。この曲もオリジナルを徹底的に脱構築してあり、ほとんど原型をとどめておらず、ギリギリ分かるか分からないかの絶妙な匙加減。
L’Atelier – Just Another Piano Solo (Original Mix) (2015)
アムステルダムのハウスデュオL’Atelier(ラトリエ)が、オランダのピアニストHidde Mudde(ヒッデ・ムッデ)と組んだ、ジャジーピアノハウス。
L’AtelierのPaul Veen(ポール・ヴェーン)とGijs van Willigen(ハイス・フォン・ウィルハン)は、もともとヒップホップ出身。アムステルダムのクラブシーンに触発され、ハウスに転向。ジャズハウスやフィルターハウスが得意で、ディスコサンプリングのトラックも秀逸です。
Gregory Porter – Liquid Spirit(Claptone Remix)(2015)
グラミー賞のベスト・ジャズヴォーカル・アルバム賞受賞『Liquid Spirit』の表題曲。CAサクラメント出身のジャズ・ヴォーカリストGregory Porter(グレゴリー・ポーター)によるジャズ曲を、ドイツ出身の謎多き覆面DJ(主要メンバー2人+補欠)のClaptone(クラップトーン)がハウスRemix。
オリジナルはNew Orleans Jazz+ゴスペルといった雰囲気の、ハンドクラップ+ダブルベース+生ピアノで、さすがブルーノートというトッププレイヤーによる演奏。特にピアノの Chip Crawford(チップ・クロウフォード)が圧巻です。
クラップトーンに頼んで大正解、オリジナルよりもハウスMixの方が断然ヒット。
Shino Blackk – Go Love(Piano Dub Mix)(2017)
フィラデルフィアのハウスプロデューサー、Shino Blackk(シノ・ブラック)による、ピアノ入りアフロハウス。他にも地味なディープハウスが多く、ジャージーサウンドとアフロハウスが混ざったようなトラックが特長。
Mirko & Meex – Laidback (Original Mix) (2019)
セルビアのベルグラード出身、DJデュオMirko & Meex(ミルコ&ミークス)によるピアノハウス。活動歴20年以上を誇るベテランで、コンスタントにディスコテイストや女性ヴォーカルのハウストラックをリリースしています。
セルビアは第二の都市、Novi Sadの超巨大フェス「Exit」が有名でしたが、全国規模の反汚職デモをきっかけに政府がライセンスをはく奪、昨年7月のべ20万人を動員した25周年を最後に開催できなくなったため、フェス自体が「亡命」することになり、今年はグローバルツアーで、クロアチア、マケドニア、マルタ、エジプト、インドを廻ります。亡命フェスとは前代未聞ですが、主催者の方々、がんばってください!
Deetron – Dr. Melonball (2021)
ラベルを思わず二度見してしまいました、Nu Grooveの新譜(!)です。1988年スタートで1992年に終了、2017年にDefectedがカタログを取得し、デジタル化の再発を進め、これが30年ぶりの新譜。
Deetronさんは本名Sam Geiser(サム・ガイザー)、1978年ベルン生まれのスイス人DJ兼プロデューサー。1992年、ヒップホップのターンテーブリストからスタートし、ジェフ・ミルズに触発されてテクノ/ハウスに転向。王道なNYスタイルのハウスが作れる人で、この曲も2021年に作ったとは思えない「Nu Grooveっぽい」感じが出ています。
TWO LANES – Ascend(2022)
ベルリンを中心に活動している兄弟デュオTWO LANESのライブセッション。Leo Schmid(レオ・シュミッド)さんの方はジュリアードでマスターのディグリーを取っているピアニスト。Rafael Schmid(ラファエル・シュミッド)さんが、アナログシンセを用いるエレクトロ・プロデューサー。
アップライトのフロントカバーが開けてあり、中身がむき出しです。ピアノの音のクリアさを追及すると、こうなるそうです。
Danny Tenaglia – The Brooklyn Gypsy(2022)
Gypsy Womanのラインで進むベースやシンセに、ピアノが絡んでくるピアノハウス。リリースは2022年ですが、2015年のBoiler Roomで本人がすでにかけていたので、長い間、門外不出のシークレット・ウェポンでした。Nervousグッジョブ。
タイトルの「The Brooklyn Gypsy」は、テナグリアがWilliamsburgの生まれ&育ちだったことから。その後Astoriaに移って、お隣のLong Island Cityに6000sq.ft.のロフトを借り、Sound Factoryと同じレベルの巨大なサウンドシステムを持っていましたが、今はRingwoodの人里離れた湖のほとりの森の中に住んでいるとのこと。
今年3月6日(金)7日(土)の2日間、「Twilo Reunion」ということで、Sound FactoryかつTwiloと同じ場所で、テナグリア主催のスペシャル・クラブイベントがあり、前売りチケットが$28.52。即完売してリセールが最低$107、平均$146.33で売られていました。ダフ屋さん儲かりまくり。
90年代のSFやTwiloはエントランス$20でした。30年後に物価もレントも爆上がり、ベーグルですらお値段3倍になっている2026年に$28.52というのは、破格というか、ほとんど利益がないか、下手すると赤字じゃないでしょうか。
Bellaire – Jazzed Up (2025)
フランス人DJ兼プロデューサーのBellaire(ビレア)ことJeanさん(フルネーム不明)。サックスとクラリネットの演奏家で、ジャズやディスコテイストを加えたファンキー・ハウスが得意なプロデューサー。出世作は「Paris City Jazz」(2018)。
来月4月10日に初アルバム『Born Funky』が出るとのことで、その中に入る予定の、ジャズピアニストGaël Berlinger(ガエル・ベルリンガー)さんを起用したジャズ・ピアノハウスが、この「Jazzed Up」。
今年1月にはBarbara Tucker(バーバラ・タッカー)嬢を起用した新曲「Pure Love」を発表済、こちらもアルバムに収録予定。
Bellaireさんの曲はベースラインがJames Jamersonを彷彿とさせ、構成や音のバランスもばっちりキマっていて、楽曲の完成度が高いです。もう少し長尺のクラブ・オリエンテッドなトラックが欲しいところ。

