Johnny Fiasco(ジョニー・フィアスコ)

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Johnny Fiasco(ジョニー・フィアスコ)

シカゴ第二世代において最もアンダーレイテッドなプロデューサー、Johnny Fiasco(ジョニー・フィアスコ)。

メディアやPRを嫌い、スポットライトを浴びることを好まないものの、シカゴでは誰もが知るベテランDJ。Cajmereよりタイト、Sneakよりファンキー、Glenn Undergroundよりディープ、Geminiより繊細。聴けばすぐ彼の曲とわかる独特のハイハット+スネアと、DJが使いやすい楽曲構成で、世界中にコアなファンがいるThe Producer of Producers。

シカゴ・アンダーグラウンドにこだわる職人気質のThe Man with Few Words、日本ではほとんど知られていない彼の活動を追います。

ジョニー・フィアスコことJuan Lopez(フアン・ロペス)は、シカゴ南部、ラティーノが多いエリアPilsen(ピルセン)生まれ。

ティーンエイジャーの頃からロックやニューウェーブを好んで聴き、特にThe Police, Talking Heads, Rush、そしてHerbie Hancockがお気に入り。

自然とギターを練習するようになり、高校を卒業する直前まで、地元のロック・バンドやジャズ・ファンクバンドにてギターを担当します。

複数のバンドを掛け持ちしていた彼の悩みは、他メンバーがいることによって、バンドでは自分の好きな音が100%表現できないこと。そこで彼は思い切って愛用のギターを売り、そのお金でドラムマシンとサンプラー、シーケンサーを買い、自分の思い通りの曲を作ることを試みます。

時は80年代後半、ウェアハウスタイプの大型クラブは姿を消し、フアンが気に入る音をかけていたのは、ノースサイド、アップタウンにあるSmart Bar(スマート・バー)。

Smart Barは、1927年に建てられたレンガ造りの古く重厚な建物で、地元民からは「Wrigleyville(リングリ-ヴィル)」と呼ばれているランドマークの4階にて、1982年7月、Joe Shanahan(ジョー・シャナハン)がスタート。

オープン後に近隣住民から騒音で苦情が来たため、まもなく場所を同ビル下階へ移し、地下はバー+クラブ(Cap400)のSmart Bar、1~3階が吹き抜けのライブハウスMetroと分かれており、現在も営業中。

どちらも世界最古のクラブ&ライブハウスのひとつとして知られ、シカゴ・アンダーグラウンドを代表する場所。

オーナーのジョーは、70年代NYでパンク/ニューウェーブの洗礼を受け、地元シカゴでそのカルチャーを紹介するための場所をつくったのがこの箱で、Metro(旧Cabaret Metro)はNirvana、Sonic Youth、R.E.M.、New Orderといった国内外のバンドがツアーに組み込むヴェニュー。

Smart Barでは、地元シカゴからドラムマシンやシンセサイザーを使った「シカゴハウス」が登場したため、ニューウェーブからハウスへと徐々に移行し、当時のDJは Frankie Knuckles(フランキー・ナックルズ)とジョー自身。

フランキーのNY出演や海外公演、レコーディングが増え、Smart Barへの出演が少なくなっていた矢先、ひとりのラティーノ青年が、手作りのデモテープを持ってお店にやってきます。それを聴いたジョーは即座に「次のシカゴハウスはコレに違いない!」と衝撃を受けました。

シカゴのオリジネイターたちの初期ハウスにミックスされていたのは、ドラムマシンが太いキックを打ち、ファンクやロックのサンプリングが延々とループしながら展開する、不思議と中毒性の高い、オリジナルトラック。

そしてジョーは同じ時期、このテープを持ってきたフアンとはテイスト的に正反対の若手を、もう一人見つけます。ノースサイドのMedusa’s という店で、ニューウェーブやインダスリアル・ノイズ、デトロイトテクノまでを網羅する、アグレッシブなDJをしていたMark Farina(マーク・ファリーナ)。

ジョーは、この若いふたりのクラッシュ・ケミストリーが、Smart Barに新風を巻き起こすに違いないと確信し、1988年、2人を同時にレジデントDJに就任させます。

ジョーの読みは当たり、フアンのサンプリングの持つアナログ感と、マークの冷たく突き刺すシンセが、初期シカゴハウスよりも速いBPM124前後のビートに乗って疾走し、それが一晩中続く人気レギュラーパーティとなります。

この新感覚の音を聴きにやってきた一人が、イリノイ大学の学生だったCurtis Jones(カーティス・ジョーンズ)。もう一人が、プエルトリコから移住してきたCarlos Sosa(カルロス・ソサ)。

フアン、マーク、カーティス、カルロスの4人は、夜はSmart Bar、昼はSmart Barの近くにあったレコードショップ「Gramophone Records(グラモフォン・レコーズ)」でハングアウト。

このお店には、80年代からすでにマークと共にレコードを出すなど、レコーディングアーティストとして活躍していたDerrick Carrter(デリック・カーター)が働いていました。カルロスもこのお店でスタッフとして働くことになったため、グラモフォンはシカゴ・ヘッズの集会場所と化していきます。

ⒸPatrick Filbin/Block Club Chicago
ⒸPatrick Filbin/Block Club Chicago

新譜入荷日にはレコード店に集まり視聴したり、レアなドラムマシンのパターン集や初期有名クラブ音源のダビングテープをトレード。お互い情報交換しながら、新しい音の方向性についてそれぞれ模索する日々を送ります。

1991年、まずカーティスが地元インディレーベルClubhouse Recordsから12inchを3枚リリース。翌年、女性ヴォーカリストDajaeと組んだトラック「Brighter Days」が世界的にヒット。アーティスト名はDJ Cajmere(カジミア)。この曲の受け皿として、彼は自らのレーベルCajual(カジュアル)を設立。

そして1993年、フアンがDJ Chunk-A-Budと共同制作したトラックを、Trax Recordsから「Zig-Zag」名義にて初リリース。

Zig-Zag – Zig-Zag(Untitled A1)(1993)

Zig-Zag「Zig-Zag(Untitled A1)」(1993/Zig-Zag)※Traxのサブレーベル扱い

DJ Chunk-A-Budは本名Adam Maljan(アダム・マハン)。シカゴのクラブ「Club Naked」の創設者であり、のちに伝説のクラブ『Red Dog』などで活躍するDJ兼スタジオ・エンジニア。

フアンは同年、CajualからJohnny Fiasco名義にて「Movin’」もリリース。

Johnny Fiasco – Movin(1993)

Johnny Fiasco「Movin」(1993/Cajual Records)

これはBrass Constructionの同名曲から、様々なパーツをサンプリングし、非常に細かくチョップして組み合わせている、ディスコ・ディコンストラクティングものの初期作品。

後を追うようにカルロスも同年末、Cajualの姉妹レーベルRelief Recordsからデビュー作「Sneaky Traxx」をリリース、アーティスト名はDJ Sneak(スニーク)。

1992年には、同じくグラモフォンの常連だったGlenn Undergroundも12inchデビューしており、シカゴ第二世代は、ほとんどみんな同時にデビューを飾っています。しかも全員友達。

NYのような一人一晩レジデントスタイルではなく、Smart Barでは友達全員が入れ替わり立ち代わり、マイクリレーのごときDJリレーで仲良くバトルプレイし、90年代のシカゴシーンを盛り上げていきました。

CajmereとSneakが世界的に有名になっていくなか、フアンは淡々とSmart BarでDJし、Cajualを中心に12inchをリリースし続けます。ファンクやディスコのディコンストラクトが多かった初期から、90年代後半にかけ、徐々にサンプリングが消え、純粋なインストトラック、もしくは多少ヴォーカルを入れたものへとシフト。

Johnny Fiasco ‎– Higher(Large Mix)(1996)

Johnny Fiasco「Higher(Large Mix)」(1996/Large)

この人の特長は、細かくピシピシと入るハイハットとリムショット。またSneakのように極端にフィルターをかけたり、909がドンドコ鳴らないので、派手さはないものの非常に聴きやすく、プログレッシブ・ハウスのようにどんどん音が足されていく構成なので、DJがロングミックスしやすいつくりになっています。

また各周波数に独自のコンプレッションをかけ、各音が明快に分離しており、これも2~3枚重ねるロングミックスに向いています。

シカゴ第二世代のブームもあり、フアンは1995年「Conduction」’96年「Keep On Dancing」などのフロアヒットを元に、まずは西海岸ツアーにてシアトル、サンフランシスコ、サンディエゴ、LAへと来訪。

その後、ワールドツアーを敢行。派手なプロモーションは一切行わず、ローカルなクラブに出演。東京、イスタンブール、アムステルダム、台北、ケープタウン、また米国内でも、NY、デトロイトなど主要都市を廻り、最終的に合計「2 Million Miles」の移動を達成。

1999年、NYのDISTANT MUSICのディストリビューション協力を得て、自身のレーベル「Tonic Recordings」をスタート。

Johnny Fiasco ‎– Sabrosa(Original Mix)(1999)

Johnny Fiasco「Sabrosa(Original Mix)」(1999/Tonic Recordings)

こちらレーベルの記念すべきファースト・リリース。ジョージ・ベンソン風のジャズ・ギターは、バンクーバーで活動するプロデューサー/ギタリストのSean Dimitrie (ショーン・ディミトリエ)。

2003年、Jiveから声がかかり、Justin Timberlake(ジャスティン・ティンバーレイク)のビルボードNo.1ヒット曲「Cry Me River」のRemixを担当。ジャスティンは元々シカゴハウスが好きで、自らフアンを指名したとのこと。

JTはTimbalandとの共作が多く、Jimmy Fallon(ジミー・ファロン)のTonight Show出演時には、オールドスクールなヒップホップを好んで踊ったり歌ったりしてヘッズを公言しており、ハウスが好きというのは意外な趣味。

Justin Timberlake ‎– Cry Me A River(Johnny Fiasco Vocal)(2003)

Justin Timberlake「Cry Me A River(Johnny Fiasco Vocal)」(2003/Jive)

チープなベースや効果音的なシンセなど、80年代のユーロビートのようで全然いただけませんが、「メジャー仕事を、求められた雰囲気できっちりこなす職人プロデューサー」という業界のお墨付きが出て、この後、Kaskade、Gloria Estefan、k.d. langなどのRemixも手がけます。

あまりに個性がありすぎるCajやSneakにはまわってこない仕事のため、やはりメジャーに通用するクリスタル・クリアな音質と、楽曲構成能力が、コマーシャルなシーンでも買われていたようです。

この後、何事もなかったかのように、いつものルーティーンに戻り、Smart BarやRed Dogなど地元クラブに出演、年に5~6枚というハイペースでリリースを続け、2017年までに60枚以上の12inchやEP、アルバムをリリース。Remixのクレジットは150にのぼります。

SNS時代に入り、自身のホームページ、Youtube、FB、X、Instagram、Tiktok、SoundcloudといったセルフPRを開始し、地元シカゴの若手をフックアップしたパーティを開催したり、過去音源を公開。現在はDJ活動に力を入れています。

Green Velvetのように緑モヒカンで世界中を飛び廻ったり、Sneakのようにハウス・ギャングスターを標榜することもない、ひたすら地味で地に足のついたシカゴ在住プロデューサー、ジョニー・フィアスコ。

その音は特徴的ながら古くならず、いつでもDJが使える機能性と、踊りやめられない中毒性があります。シカゴハウスが苦手な方も、ぜひ数曲聴いてみてください。スッキリした音や、NYのディープハウスにも通じるメロディが、シカゴハウスの印象を変えてくれることでしょう。

Johnny Fiascoのオススメ曲

Johnny Fiasco ‎– Taurus(1993)

Johnny Fiasco「Taurus」(1993/Cajual Records)

Johnny Fiasco ‎– Deep State E.P. (Mello D)(1995)

Johnny Fiasco「Deep State E.P. (Mello D)」(1995/83 West Records)

Johnny Fiasco – Get Up(1996)

Johnny Fiasco「Get Up」(1996/Cajual Records)

Johnny Fiasco ‎– Jazzmatic(2002)

Johnny Fiasco「Jazzmatic」(2002/OM Records)

Johnny Fiasco ‎– Cielo Y Tierra(2004)

Johnny Fiasco「Cielo Y Tierra」(2004/Klassik Fiasco)

Johnny Fiasco ‎– Chicano’s Groove(2010)

Johnny Fiasco「Chicano’s Groove」(2010/Klassik Fiasco)

Johnny Fiasco ‎– Yolo(2014)

Johnny Fiasco「Yolo」(2014/Nuphuture traxx records)

Johnny FiascoのオススメDJ

Johnny Fiasco @ House of Sol 2009

Mark Farina @ Lotradio 2026

Smart BarでダブルヘッダーだったMark Farinaの最新DJ映像

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