DJ Disciple(ディサイプル)

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DJ Disciple(ディサイプル)

ハウスミュージックの人気に火がつきはじめた80年代末より活動をスタートし、ラジオDJ、クラブDJ、プロデュース、リミックス、レコードレーベルオーナー、著作と膨大な仕事をこなしてきたDJ Disciple(ディサイプル)。

日本での知名度は低いものの、NYネイバーをはじめハウスミュージックのクリエイターを中心に絶大な信頼を得ているBlooklyn Finest。敬虔なまでにハウスミュージックに付き従う信奉者は、一体何を伝えようとしているのでしょうか。

1950年代、WW2から帰還した一人の男性が、当時、黒人の退役軍人のためにあてがわれていたブルックリンのファガットProject(公営団地)に住むことになります。ピアノが好きな彼は、娯楽を求めてハーレムのSavoy Ballroomへと足を運び、音楽とダンスを楽しむ観客のうちの一人でした。

Duke EllingtonやElla Fitzgeraldを輩出したこのアイコニックなダンスホールは、一日中絶え間なくバンドの演奏が続く、NY Jazzの殿堂のひとつとして、スウィングからビバップへと至るジャズシーンを体現していました。

生演奏のジャズがBGMの、ありふれたBoy meets Girlの物語。そう、Savoy Ballroomで出会った音楽好きのふたりが、DJ Discipleの父と母です。

Miles Davisとジャムセッションしたこともあるピアニストの父のもと、DJ DiscipleことDavid Banksは1965年、4人兄弟の末っ子として生まれます。家族全員が楽器を持ち、音楽に囲まれる生活。ジャズやソウル、ファンクのブルージーな血流は、幼少期からの環境から来ているといえます。

ドラムをやっていたDavidは8歳の時、ベースをやっていた兄Larryの影響でゴスペルに興味を持ちます。教会に通うようになったのは、ゴスペルミュージシャンの演奏を見て学びたいと思ったことがきっかけでした。周囲の環境と才能のおかげで、やがてゴスペル・ドラマーとしてハーレムの教会に通うようになるまでに、それほど時間はかかりませんでした。

当時住んでいたファガットProjectではブロックパーティが開かれ、グランドマスター・フラワーズなど無名だったDJのパイオニアたちの音楽を聴く環境があった一方で、学校では白人の生徒と一緒に勉強し、教会に通ってドラムを習う日々。多くの若者がドラッグで破滅していく中、Davidは音楽を糧に、ストリートの闇とは無縁の学生生活を送ります。

大学生の頃、その大学ラジオに誘われゴスペル番組をスタート。クリスチャニティを信仰の糧とする彼はDJネームをDiscipleとします。卒業後’87年よりWNYE FMにてラジオホストをスタートし、アンダーグラウンドのハウスミュージックをエアプレイ。

Todd Terryの家に行って契約前のトラックをもらったり、Roger SanchezやLouis Vegaのスタジオに行って音源をもらい、発表前のハウスミュージックをラジオで流すことで、この「The Best Kept Secret」という番組は知名度を上げていきます。

’89年にはクラブDJとしても活動しはじめ、Larry LevanやDavid Mancusoなどのオリジネイターと共にStudio 54、The Loft、The Choiceなどに出演。

’91年よりTony Humphriesの後続としてNZのClub Zanzibarにて金曜レジデントを務めます。またRoger Sanchez、DJ Camechoと共にDJツアーを行い、Ministry Of Soundなどイギリスでの活動が多くなります。

※David Mancusoの「The Loft」跡地にできた「The Choice」3~5月のスケジュール。DJ Discipleと並んでLarryやFrankieなど見覚えのある名前が並んでいます。

’93年「When the music stop」にて12inchを初リリース。レコーディングアーティスト兼プロデューサーとして、1年に4~5枚のハイペース、その多くが4曲入りのEPの形で新曲を発表していきます。「On The Dancefloor」や「Caught Up!」がクラブヒット。

特にロンドンにて制作した「Keep On Movin’」はUK Garageの火付け役としてUKダンスチャートNo.1ヒットに輝き、イギリスのアーティストとのコラボレーションや、イギリス各地でのDJプレイが増えていきます。

他にもイビサ、モントリオール、スペインでも定期的にDJプレイの機会を持ち、90年代の10年間で500回のDJ出演という、まさに世界中を飛び回る日々が続きました。

DJ Disciple – Keep On Movin’

’97年レコードレーベル「Catch22」をスタートし、300タイトル以上をリリース。Remixワークも数多く手がけます。

また2000年以降は、ブルックリンにてディープハウスをテーマとしたイベントを定期開催し、ミレニアル世代やGen Zの若いDJに門戸を広げる活動や、ハリケーン被災者へのチャリティのためのイベント開催、パブリックスクールでの子供を対象とした講義など、コミュニティへの貢献活動も積極的に行い、彼の懐の深い人間性を垣間見ることができます。

2023年にはジャーナリストのHenry Kronkと共に『The Beat, the Scene, the Sound: A DJ’s Journey through the Rise, Fall, and Rebirth of House Music in New York City』を出版。

ディスコの衰退からEDMの台頭まで、ハウスミュージックをとりまく環境とその変遷を現場DJからの視点で総括する内容となっています。

また2025年の現在でも、イベントや飲食店を中心にDJ活動を絶やさず、さらに月に2曲のペースで新曲を発表し続けています。

  『The Beat, the Scene, the Sound』  

Paradise Garage閉店後、DJ DiscipleがThe ChoiceでLarry Levanと交代でDJをすることになった時、Larryはすでにドラッグ中毒がひどい状態で、レコードを売り払い、全盛期とはまったくの別人になっていたといいます。

クラブの客層がゲイからストレートへ、そして白人へと変わっていき、ファッションやハウスミュージックの傾向が移り変わっていくのも、DJブースの内側から見てきました。またコロナパンデミックでは、DJの友人が4人も亡くなったといいます。

それでも「神への信仰だけが、永遠に続く」という教訓を胸に、DJ Discipleは自分の道を歩んできました。

移り変わる世の中でずっと変わらないもの、神への信仰と、それを表現する音楽への愛。DJ Discipleはハウスミュージックを通して、その信念を伝道し続けています。

DJ Discipleのおすすめ曲

DJ Disciple – Hide-A-Way

Boris Blugosch – Keep Pushin’(DJ Disciple Bass Mix)

DJ Disciple – YOU

DJ Disciple – Latin Love

DJ Disciple & Guida De Palma – Brazilian Affair | House Meets Brazilian Soul

DJ DiscipleのDJ

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