Âme(アーム)

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Âme(アーム)

ハウスファンからも、テクノファンからも、絶大な信頼を得ているドイツのエレクトロ・デュオ「Âme(アーム)」。彼らがRemixするだけで、その曲が売れてしまう人気プロデューサー、しかしその実態は意外と知られていません。

仲が良いんだか悪いだか微妙な関係性で、マイペースに活動を続ける、不思議なドイツ人2人組を紹介します。

Kristian Beyer(クリスティアン・バイヤー)は、フランス国境に近いドイツ南部の街、Karlsruhe(カールスルーエ)生まれ。ティーンエイジャーの頃はインディ・キッズで、The Pixiesなどインディ・ロックを聴いていました。

彼は趣味が高じて、地元でレコード店「Plattentasche(プラッテンタシェ)」をオープン。ロックからエレクトロまでを網羅、地元の音楽好きが集まるハブとして12年間運営。

2000年、お店のお客さんとして、Frank Wiedemann(フランク・ワイデマン)がやって来ます。

フランクは1973年、同じくカールスルーエ生まれ。幼い頃からピアノを習い、ジャズやロックバンドで演奏。エレクトロニック音楽に興味を持ち、シンセやドラムマシンを使って、自作のデモテープを作るようになります。

フランクのデモテープを聴いたクリスティアンは、その音楽的才能と、一風変わった即興スタイルに興味を抱きます。地元のカールスルーエには、自分たちが満足できるクラブがなかったため「自分たちで理想の音を作ろう」と意気投合。この不満がÂme結成の原動力となります。

2人でデモを作っているうちに、当時ベルリンNu Jazzムーヴメントの中心だったJazzanovaの目に止まり、彼らのレーベルSonar Kollektiv(ソナー・コレクティブ)から12inchデビューを果たします。

Âme – Sarari(2003)

Âme「Sarari」(2003/Sonar Kollektiv)

生っぽいリズム隊に、様々な音色のシンセが展開していく長尺インストのディープ・ハウス。タイトルの通り「サラリ」としていながら、ファーストリリースとは思えない確固たるスタイルが出来上がっているトラック。

その後も2枚、ソナーからリリースし、徐々にベルリンのクラブシーンでもÂmeの名が広がっていきます。4枚めのトラックを完成させ、ソナーに持っていくと、元来ジャズレーベルである彼らは「ミニマルすぎる、エレクトロニックに寄りすぎるている」として、リリースを拒否。

自らの信じる音をそのままリリースするため、ベルリンシーンで彼らの音を気に入ってくれていたDixon(Steffen Berkhahn/ステフェン・ベルクハーン)と共に、レーベル「Innervisions(インナーヴィジョンズ)」を立ち上げ、そのセカンドリリース「Rej EP」としてリリース。

Âme – Rej(2005)

Âme「Rej」(2005/Innnervisions)

ハウスとテクノを融合させ、ミニマルでありながらもメロディアスで、壮大な雰囲気を感じさせるこのトラックは、イギリスで当時実力をつけ始めていたDefectedにライセンスされ、世界中で大ヒット。現在も主流であり続けている「メロディック・テクノ」の原型となります。

ちなみにInnervisionsのファーストリリースは、Alex From Tokyo と Isao Kumano(熊野功雄)さんによるテックハウス・プロジェクトTokyo Black Star による「Psyche Dance EP」(2005)。

「サラリ」もそうですが、時々不思議な語感をタイトルに据えるInnervisonsは、そのフィロソフィーに日本の禅的なミニマリストの感性と、フューチャリスティックなテクノが不思議とハーモニックに溶け合う独特の世界観で、知名度を獲得していきます。

2007年には、オープン当初から世界一のアンダーグラウンド・クラブとして絶対的な地位を築いてきたクラブBerghein(ベルグハイン)のレーベル「Ostgut Ton(オストグート・トーン
)」からも12inchをリリース。特に上階Panorama Bar(パノラマ・バー)の、レイドバックしながらもトリッピーなアフターアワーズを代表する1曲となります。

Âmeのふたりはクラブへの出演依頼が増えますが、ここでクリスティアンはDJ、フランクはライブセットやスタジオ・プロデューサーという役割に分かれ、活動するようになります。

Âmeというユニット名がありながら、ふたりを一緒に見る機会がないのは、このフロントマン/スタジオマンの分業による、クリエイティブ力の切磋琢磨と相互補完。ツアー疲れもレコーディング疲れも相方によってフォローされる、クオリティ・コントロールの結果です。

2009年、それぞれプライヴェートで転機を迎え、ベルリンに移住。

Dixon、Henrik Schwarz(ヘンリック・シュワルツ)らとのコラボレーション・プロジェクト「A Critical Mass」でのワールド・ライブツアーを敢行。DJではなく、毎回違うインプロのライブパフォーマンスにて、その音楽性の高さとミニマルな世界観を広めます。

2010年、そのライブ音源を元にした「A Critical Mass Live EP」を発表、故郷カールスルーエとベルリンを結ぶ高速鉄道の名をタイトルに冠した「Berlin-Karlsruhe-Express」を収録しています。

Schwarz/Ame/Dixon – Berlin-Karlsruhe-Express(LIve Version)(2010)

Schwarz/Ame/Dixon「Berlin-Karlsruhe-Express(LIve Version)」(2010/Innervision)

Innervisionsは日本のTokyo Black Star以外にも、フランスのLaurent Garnier(ローラン・ガルニエ)、南アフリカのCuloe De Song(クーロエ・デ・ソング)、アメリカのOsunlade(オスンラデ)、同国のIan Pooley(イアン・プーリー)と、同じミニマリスティックな思想を持ちながらも、違うアプローチをとるアーティストを次々とフックアップ。

2010年代には、世界のカッティング・エッジなクラブサウンドを牽引するテイスト・メイク・レーベルとして全盛期を迎えます。

2012年、Dixonと「Lost In A Moment(LIAM)」をスタート。アンチ・クラブ、アンチ・フェスティバル、ノー・モバイルを掲げ、その特別な場に居合わせた人だけが音とヴァイブを共用できる純粋なクラブ・パーティを、昼間の野外にて実現。

バルセロナの丘にある修道院跡地、イギリスやオランダの孤高の島など、絶景の僻地で開催されるLIAMは、ヨーロッパを席巻する巨大コマーシャルフェスへのアンチテーゼ。

前例のない場所で最高の音響システムを組み、収容人数を限定したこの移動式イベントは、多くの開催において商業的には赤字と言われながらも、真のクラバーが絶賛する伝説のイベントとなります。

また同じ頃、フランクはベルリンのプロデューサーTheas(シアス)から、オーストラリアのシンガーソングライターRy X(ライ・エックス/Ry Cuming)による「Howling」というトラックを紹介されます。

浮遊感漂う不思議なトラックを、フランクは11時間で早速Remix、SoundCloudで公開。DixonがLIAMでプレイするうち、SoundCloudでもバイラルヒットし、Innervisionsから正式リリースとなります。

このアコースティック×男性ヴォーカル×アンビエントテクノが世界的にヒットし、Vol.2もリリース。

2015年にはNinja Tune のインプリントであるCounter Recordsからアルバムもリリース。フランクのプロジェクトとして、現在もライ・Xと共にステージ・パフォーマンスを行っています。

RY X / Frank Wiedemann – HOWLING(2013)

RY X / Frank Wiedemann「HOWLING」(2013/Innervisions)

昨年から今年2026年にかけて、Innervisionsは創立20周年を迎え、世界規模での壮大なアニバーサリー・ツアーや特別プロジェクトを敢行中。

ベルグハインのワン・ナイト・ジャック、バルセロナのBrunch Electronikや ミコノス島のScorpios など、LIAMの精神を引き継ぐ特別なロケーションで、Dixon、Âme、そして次世代のJulya Karma(ジュリヤ・カルマ)らがノンストップで繋ぐ、世代を超えたローテーションB2Bツアーを展開。

グラフィックデザイナーのJonathan Castro Alejos(ジョナサン・カステロ・アレホス)と組み、まるで仏教の諸行無常のような「Nothing Holds Forever(何ものも永遠には留まらない)」 という新コンセプトの下、デザインレーベルとしてマーチも展開。レーベルと併せて、独自のエコ・システムを構築しています。

「ないものは、自分でつくる」を、最初から展開してきたクリスティアンとフランクのふたり組、Âme。

最近は「倦怠期の夫婦のよう」と自嘲するほど、ふたりが一緒に活動することはほとんどないものの、それは裏を返せば、言葉を交わさなくても理解し合えているからこそ成立する、ノン・バーバルな関係。

アンチ・コマーシャルで、真のアンダーグラウンド・ミュージック・クリエイターの歩む音と道を開拓してきた、クロスオーヴァー・カルチャーのパイオニア。常に「トレンドの先にある未来」 を提示してくれる彼らに、今後も注目です。

Âmeのおすすめ曲

Âme – Fiori(2007/Ostgut Ton)

Âme「Fiori」(2007/Ostgut Ton)

Osunlade – Envision(Âme Remix)(2014)

Osunlade「Envision(Âme Remix)」(2014/Innervisions)

Frankey & Sandrino – Acamar(2015)

Frankey & Sandrino「Acamar」(2015/Innervisions)

Âme, Curses – Shadow Of Love(2025)

Âme, Curses「Shadow Of Love」(2025/Innervisions)

ÂmeのおすすめDJ & Live Set

Âme B2B Dixon – OFFSónar 2019

Âme Live feat. Curses WE2 | Tomorrowland 2025

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