アフロハウス入門 ⓫ アフロテック1

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アフロハウスとは、80年代から始まったアフロ・ディープハウスと、2000年代から始まった南アフリカ産ハウス(およびそのフォロワー)を指します。他にも間違いやすいアフロビート、アフロビーツ、アマピアノ、アフロ・テックハウスを解説。

DJでアフロハウスをかける前に、知っておきたいアフロミュージックの歴史を時系列で総まとめ。ハウスに限らず、ワールドワイドで人気のアフロ系がわかる12回連載です。

アフロハウス入門 [目次] 
❶アフロビート1 ジェームス・ブラウンとナイジェリア
❷アフロビート2 カメルーン、ガーナ、マリ、南アフリカ
❸アフロハウス1 80年代のアフロ・ディープハウス
❹アフロハウス2 90年代以降のアフロ・ディープハウス
❺アフロハウス3 アフロ・ディープハウス代表曲30選
❻アフロハウス4 南アフリカ共和国のアフロハウス
❼アフロハウス5 南アフリカ共和国アフロハウスのフォロワー
❽アフロハウス6 南アフリカに影響を与えたハウス3曲
❾アフロビーツ   ナイジェリアのポップミュージック
❿アマピアノ    南アフリカのアマピアノと3ステップ
⓫アフロテック1 テックハウスとアフロテックの歴史
⓬アフロテック2 アフロテックのヒット曲
目次

アフロハウス入門 ⓫ アフロテック

アフロテックとは、アフロテイストのテックハウスです。テックハウスの変遷と、アフロ・テックハウスの主要クリエイターとヒット曲を紹介します。

Housey Doingz – Pick-N-Mix EP(1996)

Housey Doingz「Pick-N-Mix EP」(1996/Wiggle)

テックハウス、つまりテクノ+ハウスですが、この言葉は90年代からロンドンのDJを中心に使われ始めました。

Mr. CことRichard West(リチャード・ウエスト)が、DJ仲間に片面「Tech」、片面「House」とラベルを貼ったミックステープを渡します。その後、仲間と作ったRemix曲に「Tech-House」と名前をつけ、メディアの注目を集めたのが最初と言われています。

Mr. Cはロンドンで「The Drop(ドロップ)」という名のパーティを開催。これがテックハウスのイベントとして人気を集めます。

同じ時期、Terry Francis(テリー・フランシス)Nathan Coles(ネイサン・コールズ)もロンドンにて「Wiggle room(ウィグル・ルーム)」というパーティを開催。このパーティのレジデントに、“Evil” Eddie Richards(”エヴィル”・エディ・リチャーズ)を抜擢。

彼ら3人はテックハウスシーンの草創期から活躍しており、エディは「テックハウスのゴッドファザー」と呼ばれています。

Evil Eddie RichardsとWiggle room Crew

その後、ロンドンのクレイドンにあるレコードショップ「Swag Records(スワッグ・レコード)」をはじめとしたお店が「テックハウス」と表示。テクノとハウスの中間の音が欲しいお客さんに、このカテゴリ名を示したところ、好評を博し、DJの間にも浸透します。

そこでレーベルやメディアも、このような曲を「テックハウス」と呼び、テックハウスという言葉が浸透します。

つまり90年代は「テクノとハウスの中間あたりの音」という、言葉の通りのものを表していました。テックハウスは、繊細でミニマル、そして複雑なリズムを特長としていました。

表題の「Pick-N-Mix EP(ピックンミックスEP」は、パーティ名であり、レーベル名でもあるWiggle(ウィグル)からのファーストリリース。レーベル創始者のテリー・フランシスやネイサン・コールズを含む「Housey Doingz(ハウジィ・ドゥーイングス)」プロデュースの、90年代のテックハウス曲です。

Fisher – Losing It(2020)

Fisher「Losing It」(2020/Catch & Release)

2000年代に入り、テックハウスが2つの要素を取り込んで進化します。

まず2000年代、ミニマルテクノが大流行します。

あまりアレンジ展開せず、強烈に太いベースラインでグルーヴ感やドラッギーなミニマル感を出す構成を、テックハウスが取り入れます。音はシンプルになり、リズムの強度が増します。

同時に2000年代、EDMの台頭で、エレクトロハウスが攻勢を極めます。

これはシンセリフを用い、壮大でドラマチックなビルドアップとドロップを特徴としていました。テックハウスは、この「ビッグルーム」サウンドを取り入れます。

そして、Jamie Jones(ジェイミー・ジョーンズ)とLee Foss(リー・フォス)によるHot Creations(ホット・クリエーション)など新興レーベルの台頭、イビサのクラブシーンの拡大によって、テックハウスの音は、2010年から2014年ごろに確固たるものになりました。

つまり現在のテックハウスは、マッシヴなベースライン、壮大なスネアロールと大きなブレイクダウン、そしてそれに続く巨大なベースラインのドロップを持つ楽曲が主流となり、90年代のテックハウスから大きく変わりました。

表題のFisher(フィッシャー)による「Losing It(ルージング・イット)」は、2020年のヒット曲。4分の中で3回、ビルドアップ&ドロップがあり、無駄にテンションが高く、サブウーファーが轟くドロップに身体ごと吹き飛ばされそうですが、メロディやヴォーカルなどの要素はまったくないトラック。

テックハウスは、ラテン、アラブ、インド、レゲエ、レゲトンなど様々なジャンルを取り込んで、現在も進化中ですが、これより以下はアフロテックの主要クリエイター7人の紹介です。

  • ① Culoe De Song(クーロエ・ディ・ソング/南アフリカ)
  • ② Da Capo(ダ・カーポ/南アフリカ)
  • ➂ Caiiro(カイロ/南アフリカ)
  • ④ Shimza(シムザ/南アフリカ)
  • ⑤ Adam Port & Keinemusik(アダム・ポート&カイネモジーク/ドイツ)
  • ⑥ Hugel(ユーゲル/フランス)
  • ⑦ MoBlack(モーブラック/イタリア)

① Culoe De Song(クーロエ・ディ・ソング/南アフリカ)

Culoe De Song – The Bright Forest(2009)

Culoe De Song「The Bright Forest」(2009/Soulistic Music)

100%ズールー族の血を引く、Culoe De Song(クーロエ・ディ・ソング)、本名Culolethu Zulu(クーロエティ・ズールー)。

南アフリカのクワズール・ナタール州エショーウェ生まれ。この地域はパーカッションの伝統があり、それが彼の作風に影響しています。

ジャズミュージシャンの父を持ち、17歳にしてBlack Coffeeに見出され、2008年、レッドブル・ミュージック・アカデミーに参加。

この「The Bright Forest(ブライト・フォレスト)」は、ゴールドディスクを獲得した彼のデビューアルバム『A Giant Leap(ジャイアント・リープ)』に収録されています。

アフリカのパーカッションが疾走する上で、木琴のような音のメランコリックなリフが続き、Derric May(デリック・メイ)の「Life Of Strings(ライフ・オブ・ストリングス)」にインスパイアされた、エモーショナルなストリングス・セクションが、途中から壮大に展開されます。

アフロテックの典型である、野太いベースラインや、派手なドロップはないものの、アフリカのビート+テクノの影響+ハウスのソウルフルな雰囲気+壮大な展開で、最初のアフロテックとして挙げられる一曲です。

② Da Capo(ダ・カーポ/南アフリカ)

Da Capo & Cuebur – Sabir(2013)

Da Capo & Cuebur「Sabir」(2013/Afrotainment)

アフロテックのパイオニアと言われるDa Capo(ダ・カーポ)。本名Nicodimas Sekheta Mogashoa(ニコディマス・セケタ・モガショア)のダ・カーポは北部の街、リンポポ州セシェゴに生まれます。

祖父はトランペット奏者、母親はジャズダンサーという音楽一家に育った彼は、学校の机をドラムがわりに叩くことから独学で音楽キャリアをスタート。10代後半にハウスに目覚め、音づくりを開始します。

2009年、SNSを通じてNick Holder(ニック・ホルダー)に発見され、DNHレコードから初リリース。2015年にはBlack CoffeeのレーベルSoulistic Music(ソウリスティック)と契約。デビューアルバム『Indigo Child(インディゴ・チャイルド)』にてダブルプラチナを獲得。

2020年、自身のレコードレーベル「Genesys Entity(ジェネシス・エンティティ)を設立し、そちらからコンスタントにリリースを続けています。

2013年に発売された「Sabir(サビア)」は、従来のアフロハウスのサウンドから「重低音」を重視し、より洗練されたアフロテックサウンドへの橋渡しとなったトラック。

このような重厚でテクニカルなベースラインを持つ曲をバックに、タウンシップの若者がダンスバトルをする「Izikhothane(イジコタン)」カルチャーのアンセムとなりました。

➂ Caiiro(カイロ/南アフリカ)

Caiiro & AWEN – Your Voice(Adam Port Remix)(2022)

Caiiro & AWEN「Your Voice」 Adam Port Remix(2022/Madorasindahouse Records)

Caiiro(カイロ)は、本名Patrick Dumisani Mahlangu(パトリック・デュミサニ・マラング)、南アフリカ・ケープタウンの東にあるタウンシップ、伝統的な村であるThembalethu(チェンバレトゥ)生まれ。

カイロという名前は、エジプト学とピラミッドに対する興味から、インスピレーションを得ています。

2022年「Your Voice(ユア・ヴォイス)」がヒット。同年アルバム『Pyramids(ピラミッズ)』からも「The Akan(ザ・アカン)」がヒットします。

2024年にはセルフタイトルのアルバム『Caiiro(カイロ)』を発表。Sportifyで半年10ミリオン再生を超える大ヒットを記録。

Black Coffee、Shimzaと並ぶ、南アフリカを代表するプロデューサー。

④ Shimza(シムザ/南アフリカ)

Shimza  feat. Argento Dust – All Alone(2018)

Shimza  feat. Argento Dust「All Alone」(2018/Madorasindahouse)

「アフロテックの王」と言われるShimza(シムザ)は、エスワティニ(旧スワジランド/南アフリカとモザンビークに囲まれた内陸国)生まれ、南アフリカのヨハネスブルグ近郊の街、Tembisa(テンビサ)で育ちます。

シムザという名前は、彼の祖父のニックネーム「Shimi(シミ)」に由来。

コンスタントにヒット曲のプロデュースやRemixをしながらも、イビザやロンドン、マイアミ等で定期的にパフォーマンスを行っています。

Togetherを意味する「Kunye(クーンイェ)」というイベントとレーベルを運営し、世界に南アフリカ産のアフロテックのショーケースを届ける、まさにグローバル・アンバサダー。

Shimza, Kasango & AR/CO – Fire Fire(2025)

マオリ族と、トリニダード・トバゴ人の血を引くイギリス系オーストラリア人シンガー兼プロデューサーデュオと組んだ、最新のSAアフロハウス・ヒット曲。

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