Crystal Waters(クリスタル・ウォーターズ)

  • URLをコピーしました!
目次

Crystal Waters(クリスタル・ウォーターズ)

「ラダディ、ラダダー」の独特な節廻しが世界を席巻したヴォーカリスト、Crystal Waters(クリスタル・ウォーターズ)。Basement Boys完全バックアップでデビューした彼女は、登場した時からパーフェクトなハウスDIVA。

あらゆるハウス・プロデューサーと仕事をし、いくつものヒット曲をリリースした彼女は現在、天性の音楽的感性と多くの経験から、単なるシンガーの枠を超え、自らがオーガナイズ、ディレクション、プロデュース能力を持つ、ハウス・プロデューサー/ハウス・アクティビストとして活躍しています。

今回は、現在進行形で広がっている彼女の活動を紹介します。

ジャズとブルーズが全盛期の1957年、ひとりの男性歌手がレコードデビューします。ニューオリンズのジャズバンドをバックに歌う「My Life Is A Seven」。

Junior Waters ‎– My Life Is A Seven(1957)

Junior Waters 「My Life Is A Seven」(1957/Bernlo)

ミスター・ドーナツでかかっていそうな、古き良きアメリカンなジャズナンバー。人生はギャンブル、ラッキーナンバー7にあやかって生きる男のブルーズを歌うのは、Junior Waters(ジュニア・ウォーターズ)、クリスタルのお父さん。

クリスタル・ウォーターズは1961年11月19日、フィラデルフィアとの州境、ニュージャージーのデプトフォード・タウンシップにて生まれました。

お父さんはジャズシンガー、叔父さんはMFSBのサックスプレイヤーZach Zachery(ザック・ザカーリー)、大叔母もグラミー賞ノミネート歌手/女優のEthel Waters(エセル・ウォーターズ)という音楽一家に生まれた彼女は、ジャズやR&Bを聴いて育ちます。

もちろん「クリスタル・ウォーターズ」は本名。粋でオシャレなお父さんがつけたものと思われます。音楽漬けの家庭環境に育ち、自分で歌詞やメロディを考えることが楽しく、歌うことが大好きなティーンエイジャー時代を過ごしながらも、大学では手堅くビジネスとコンピュータ・サイエンスを専攻。 

大学卒業後、彼女はワシントンD.C.の地方政府で逮捕状を発行する公務員の職を得ます。しかし音楽への情熱を捨てきれず、仕事の傍らでバックボーカルや裏方としてソングライティングの活動を地道に続ける二重生活。

当時彼女はSadeタイプの、マイナーコード主体のブルーズ曲を書いていました。地元の新聞に広告を出して見つけたキーボーディストと一緒に、自宅のリビングで「Tell Me」という曲を作曲し、4トラックのテープレコーダーで録音。

このデモテープを、1989年、ワシントンD.C.で開催された音楽カンファレンスに持っていった彼女は、運命の出会いを果たします。隣のメリーランド州ボルチモアを拠点に活動していたBasement Boys(ベースメント・ボーイズ)に、このテープを渡したのでした。

80年代からハウスを作り、Ultra Naté(ウルトラ・ナテ)をWarnerからデビューさせていたJay Steinhour(ジェイ・ステインアワー)、Teddy Douglas(テディ・ダグラス)、Thomas Davis(トーマス・デイヴィス)の3人組は、クリスタルの卓越した作詞・作曲能力に気づきます。

彼らBasement Boysはクリスタルに、ウルトラ・ナテのためのジャズ風の歌を書いてもらうよう、ソングライター契約を結びます。そこで彼女は「Gypsy Woman」「Makin’ Happy」を自宅のキッチンで作詞・作曲し、ナテの参考となるように自らが歌ったサンプルを、4トラックのテープレコーダーにふきこんで、デモを制作。

Basement BoysはMarcuryにこのデモを持ち込み、ウルトラ・ナテのシングルリリース契約をゲットする算段でしたが、マーキュリーの幹部たちは、デモ・テープのクリスタルの独特な歌声に惚れ込み、詩とメロディの提供ではなく、その場でクリスタルとレコード契約を結び、彼女自身のデビュー・シングルとしてリリースすることにしました。

Crystal Waters ‎– Gypsy Woman(1991)

Crystal Waters 「Gypsy Woman」(1991/Mercury)

リリックの発想源は、当時彼女が通勤途中のワシントンD.C.の街角で見かけた、身綺麗にしているのに家がないホームレスの女性。大都会で彷徨い、自己のドメインを見失いそうになる感覚を「ジプシー」と表現した歌詞は、非常に深く現代的なテーマ。

独特の声に加え、覚えやすい歌詞、Korg M1のOrgan2が奏でるキャッチーでメランコリックなメロディ、シンプルでポップなプロダクションが、ハウスの枠を超えたポップソングとしてヒット。全米ダンスチャート1位、全米ポップチャートでもトップ10入りを果たし、 続いて世界中でも大ヒットを記録します。

続けて「Makin’ Happy」「Surprise」といったシングルもヒットし、ファーストアルバム『Surprise』をリリース。Basement Boysとの出会いにつながった「Tell Me」も、新しいプロダクションにより作り直され、このアルバムに収録されています。

この時期、Robin S.「Show Me Love」CeCe Peniston「Finally」など、ゴスペル・ベースの女性ヴォーカルハウスがメインストリームを席巻していたものの、従来ジャズ・ベースでキーが低く、声を張り上げない歌唱法のクリスタルの歌声は、一般人でもマネして歌いやすく、フロアで一番人気。あらゆるバージョンのRemixが世界中のクラブでかかっていました。

続く1994年「100% Pure Love」は完全にクラブサウンドにフォーカスし、Mercuryは最初からA面で7分超えのクラブミックスを出しますが、フタを開けてみればB面のラジオバージョンがビルボードのHot100で11位に入り、その後も45週に渡ってチャートに入り続けるメジャーヒット。

Crystal Waters ‎– 100% Pure Love(1994)

Crystal Waters「100% Pure Love」(1994/Mercury)

こちらをリードシングルとした2ndアルバム『Storyteller』も世界的にヒットし、クリスタル・ウォーターズ=ハウスDIVAの地位を確立します。

1996年、AIDS/HIV支援団体Red Hot Organizationが主催するアルバム『Red Hot + Rio』に楽曲「The Boy From Ipanema」にて参加。

Crystal Waters ‎– The Boy From Ipanema(1996)

Crystal Waters「The Boy From Ipanema」(1996/Red Hot)

アントニオ・カルロス・ジョビンの名曲「イパネマの娘」をBoysに置き換え、ボッサの陽気なフィーリングをハウスに移植した作品。これにはVerve RecordsよりリリースのFrankie Knuckles(フランキー・ナックルズ)によるRemixが存在し、Def Mix全盛期の11分にも及ぶDub Mixを聴くことができます。

彼女は「Gypsy Woman」の売上も密かにRed Hotに寄付しており、デビューの頃から社会問題に対して非常にコンシャスな姿勢を貫いていました。

1997年にはセルフタイトルの3rdアルバム『Crystal Waters』をリリース。その後、メジャータイトルからは遠ざかるものの、コンスタントにMercuryやStricttly Rhythmから12inchを発表。

2006年、T.I.の大ヒット曲「Why You Wanna」に「Gypsy Woman」のキーボードコードがサンプリングされたことにより、リバイバルブームとなり、2007年には世界ツアーを敢行。ロシア、エジプト、イギリス、ドイツ、メキシコ、ドバイなどで公演を行い、チケットが完売。

T.I. ‎– Why You Wanna(2006)

T.I ,「Why You Wanna」(2006/Atlantic Records)

2019年、自身のレーベル「I Am House Records」をローンチ。アフロハウスやテックハウスを含む、若いアーティストのトラックをリリース。

2020年2月にはラジオ番組/ポッドキャスト「I Am House Radio」をスタート。自らキュレーションを行い、新世代のDJやプロデューサーを紹介しています。

この後「Women Songwriters Hall of Fame(女性ソングライターの殿堂)」入り、そしてEDM Awardsで「Female Icon Award」を受賞。彼女の作詞作曲能力が歴史に残るアチーブメントを達成し、また次世代育成のための活動も公に認められる結果となりました。

大叔母がアフリカン・アメリカン女性のジャズ・ミュージシャンの道を切り開き、父がジャズからR&Bへの過渡期を乗り越え、叔父がソウルからディスコへの橋渡しをしてきたウォーターズ一家。

1957年、父ジュニア・ウォーターズが「My Life Is A Seven」 で歌った、人生というギャンブルにおける幸運と音楽の魔法。それは30年以上の時を超え、形を変えて娘のクリスタルへと受け継がれました。 

ハンブルながらも色濃いブラック・ミュージックの血を持つウォーターズをファミリーネームに持つ彼女は今、自身をハウスそのものとし、次世代のクリエイターへバトンを渡そうとしています。現代のソウルであるハウスのスピリットを継いでくれるタレントを探しながら。

Crystal Watersのおすすめ曲

Crystal Waters ‎– Makin’ Happy(1991)

Crystal Waters 「Makin’ Happy」(1991/Mercury)

Crystal Waters ‎– The Boy From Ipanema(Frankie Knuckles ‘Ipadreama’ Remix)(1996)

Crystal Waters「The Boy From Ipanema(Frankie Knuckles ‘Ipadreama’ Remix)」(1996/Verve Records)

Alex Gaudino feat. Crystal Waters – Destination Calabria(2007)

Alex Gaudino feat. Crystal Waters「Destination Calabria」(2007/Data Records)

StoneBridge & Crystal Waters ‎– Be Kind(2014)

StoneBridge & Crystal Waters「Be Kind」(2014/Stoney Boy Music)

Crystal Waters, DJ Spen, micFreak ‎– Party People(DJ Spen & Micfreak Vocal Mix)(2020)

Crystal Waters, DJ Spen, micFreak「Party People(DJ Spen & Micfreak Vocal Mix)」(2020/Unquantize)

Crystal Watersのラジオ番組

I Am House Radio • August 2026

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次