UK Garage ep.2(UKガラージ特集2)

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UK Garage ep.2(UKガラージ特集2)

ハウスミュージックから発展した、イギリス生まれのジャンル、UKガラージ(スピードガラージ/2ステップ/ベースライン)。そこから変異したダブステップとグライム。現在リバイバル中のUKガラージを中心に、歴史と代表曲を3回に分けて紹介します。

パラダイス・ガラージで流れていたラヴリーなハウスが、ディアスポラのストラグルをラップするハードコアなグライムになるまでの、ストーリー・オブ・ブリット・アンダーグラウンド。

  • ① ミニストリー・オブ・サウンド|Ministry of Sound
  • ② スピードガラージ|Speed Garage US
  • ➂ UK産スピードガラージ|Speed Garage UK
  • ④ 2ステップ|2step
  • ⑤ UKGアーティストの登場|Rise of UKG Artists
  • ⑥ ベースライン|Bassline
  • ⑦ ダークガラージ|Dark Garage
  • ⑧ ダブステップ|Dub Step
  • ⑨ グライム|Grime
  • ⑩ 現在進行形のUKG|NUKG

⑥ ベースライン|Bassline

1990年代末、スピードガラージが進化し、強力なサウンドシステムから出るダブやD’n’Bのベース音を採用した、よりマッシヴでうねったベースを持つものに変わっていきます。

C J Bolland – Sugar Is Sweeter(Armand Van Helden Remix)(1997)

C J Bolland「Sugar Is Sweeter」(Armand Van Helden Remix)(1997/FFRR)

Double 99 – RIP Groove(1997)

Double 99「RIP Groove」(1997/Ice Cream Records)

187 Lockdown – Gunman(1997)

187 Lockdown「Gunman」(1997/East West Dance)

Reach & Spin – Hype Funk(1997)

Reach & Spin「Hype Funk」(1997/Go! Beat)

Todd Terry – Something Goin’ On(Loop Da Loop Remix)(1997)

Todd Terry「Something Goin’ On(Loop Da Loop Remix)」(1997/Logic Records)

主にE-muのサンプラーや、Roland Juno-106などのシンセで生成されたサイン波をローパスフィルターで処理し、ピッチベンドやモジュレーションを深くかけることで、独特のサブ・ベースを作っていました。

2000年以降、スピードガラージの流行は警察の取り締まりが厳しくなったロンドンを離れ、主にイギリス北部やミッドランズ、シェフィールド、リーズ、バーミンガムにて発展。特にシェフィールドにあるクラブ「Niche(ニーシェ)」が中心的役割を果たすようになります。

これを地元民は「ガラージ」と呼んでいましたが、最終的にメディアでは「ベースライン」もしくは「ベースライン・ハウス」と呼ぶようになりました。

ここまでのUS産スピードガラージ、UK産スピードガラージ、2ステップ、ベースラインを「UKガラージ(UKG)」と呼んでいます。

⑦ ダークガラージ|Dark Garage

1999年から2000年ごろ、若いプロデューサーたちは、メジャーシーンに登場するUKガラージがポップで「Sweet」すぎると感じ、よりダークでインスト重視のトラックをつくりはじめ、それが「ダークガラージ」と呼ばれるようになります。

Zed Bias feat. Nicky Prince & MC Rumpus – Neighbourhood(2000)

Zed Bias feat. Nicky Prince & MC Rumpus「Neighbourhood」(2000/Locked On)

Wookie – Storm(2001)

Wookie「Storm」(2001/ManChu Recordings)

El-B – Serious(Zed Bias Remix)(2001)

El-B「Serious(Zed Bias Remix)」(2001/Locked On)

Horsepower Productions – Giving Up On Love(2001)

Horsepower Productions「Giving Up On Love」(2001/Turn U On)

ダークガラージの特徴は、ポップなメジャーコード進行を捨て、マイナーコード主体の不穏な旋律へとシフトした点。

プロダクション面では、Akai S3000XLやE-mu E6400 Ultraといったサンプラーを駆使して極限までローパスフィルターをかけた、40Hz以下の強烈なサブベースが主役になりました。

さらに、2ステップをベースにしながらも、ハイハットのクオンタイズをさらに複雑化させ、意図的にミュートされたスネアや、リバーブを深くかけたリムショット(ゴーストノート)を配置することで、独特の緊張感と空間的な広がりが出ています。

なかでもEl-Bのソリッドでパーカッシブなドラム・プログラミングや、Horsepower Productionsによる映画のサンプリング(セリフやストリングス)とダブ/ルーツ・レゲエのエコー感を融合させたヘヴィなアローチは、UKGの構造を解体。

このダークガラージでの実験的な音響工作が、のちにロンドン南部クロイドンから世界へと拡散していく「ダブステップ」のプロトタイプになります。

⑧ ダブステップ|Dup Step

ダークガラージが、ジャマイカのダブから受け継がれた音響、リバーブ、ディレイ、そしてサブベース周波数へフォーカス。「スキップ」型の2ステップ・リズムから、140BPMで、3拍目にスネアを入れるハーフタイム感覚へと移行したのがダブステップ。

2001年より、ロンドンのチャリング・クロス・ロードにあるVelvet Roomsというクラブで「FWD>>(Forward/フォワード)」というイベントが開かれ、ここでエクスペリメンタルでダークなタイプのダ-クガラージ/ダブステップが流れるようになります。 

このFWD>>のプロデューサーがNeil Jolliffe(ニール・ジョリフィ)で、彼は共同プロデューサーのSarah Lockhart(サラ・ロックハート)と共にTempa Recordsをスタート。

2002年、ニールがHorsepower Productionsのようなアーティストを「Dub Step(ダブステップ)」と呼んだことから、この名が使われはじめました。

FWD>> Flyer
Opening Night of FWD» At Velvet Rooms, London, 2001
Neil Jolliffe & Sarah Lockhart

ほぼ同時期、ロンドン南部のCroydon(クロイドン)にあったThe Big Apple Records(ビッグ・アップル・レコード)でスタッフをしていたDJ Hatchaの元に、SkreamやBengaといった非常に若いアーティストたちが集います。

同ビル上階にプライヴェート・スタジオを持っていたArtwork(Arthur Smith/アーサー・スミス) のバックアップで、同名のレーベルが設立され、ビッグアップルはダブステップのハブとして機能することになります。

The Big Apple Recordsは、1992年にGary HughesとSteve Robertsonによって設立され、1996年にJohn Kennedy(ジョン・ケネディ)がバイアウト。

当初は名前通り、US産ハウスをNYから直輸入するインポートレコードショップで、ジョンとDJ Hatcha(ハッチャ)によって運営されていました。Hatchaは昼はビッグアップルのバイヤー兼店員、夜はFWD>>でDJ。レコードショップは残念ながら2004年11月20日に閉店しています。

Horsepower Productions – Gorgon Sound(2000)プロト・ダーク2ステップ

Horsepower Productions「Gorgon Sound」(2000/Tempa)

Benny Ill vs DJ Hatcha – Highland Spring(2003)ダーク2ステップ

Benny Ill vs DJ Hatcha「Highland Spring」(2003/Tempa)

Skream & Benga – Judgement(2003)ダブステップ

Skream & Benga「Judgement」(2003/Big Apple Records)

Skream – Midnight Request Line(2005)ダブステップ・ストラクチャの完成

Skream「Midnight Request Line」(2005/Tempa Records)

なぜ2ステップからビート構成が変わったかについては、2つの説があります。

1. El-Bによるシーケンス説

サウスロンドン、ストリーサム出身のEl-B(エルビー)が、ポップなUKガラージからハッピーなテイストを抜いた暗いガラージサウンドを、スウィング・セッティングが変えられるAkai S3000XLで作ったところ、こうなったという説。

エルビーはダブステップのゴッドファーザーとして知られ、Ghorst Recordingというレーベルを設立。

El-B
Ghorst Recording Logo

2.クロイドン勢によるプログラミング・ミス説 

クロイドンのビッグアップル・チームが2ステップのトラックを作ろうと思ったところ、キックの2と4を抜くべきなのに、間違って3を抜いた(かわりにスネアを入れた)ら、ダブステップになったという説。

Bengaは12~13歳の頃からPlayStation 1の専用ソフト「Music 2000」で音を作りはじめ、のちにFLに移行。機材の制約や偶然のバグがジャンルの誕生を決定づけたとも言われています。 

Benga & Skream
DJ Hatcha
Iration Steppas, Mala, Hatcha, Netsky, Bachelors of Science, Exodus & Tenmen ⒸJames Starkey

All My Homies Hate Skrillex | A story about what happened with dubstep(2021)

Timbah.On.Toastさんによる「なぜダブステップ・ヘッズはSkrillexがキライなのか」のブレイクダウン。52分と長いですが、初期のロンドン南部特有の低域音響設計と、アメリカで変異した中音域の過激な歪み(通称Brostep)の技術的な対比を分析した、大ヒット動画。

⑨ グライム|Grime

ダークガラージ発生後、Bowを中心としたイーストロンドンにて、より速くてダーク、ミニマルなBPM140前後のサウンドが生まれます。Fruity Loops(現FL Studio)で作られたこの音が、グライムです。

2ステップのリズムを排除し、Fruity Loopsのステップシーケンサー特有の硬いオングリッドの4/4拍子、あるいはエスキ・ビート(Eski Beat)と呼ばれる変則的な8-Bar(8小節)ループへと変異。2拍目と4拍目にハンドクラップやスネアを叩き、その上に高速ラップを乗せるスタイルへと進化。

不穏な音には技術的起源があり、BMP180前後のジャングルやドラムンベースの45rpmのレコードを33rpmでかけたところ、ピッチダウンした音が凶悪かつアグリーで良かったので、その歪んだベースやシンセを、BPM140のフレームワークにサンプリングしたというもの。

Wiley
Dizzy Rascal

またデニムやジャージ、キャップが禁止されていたUKガラージのクラブのドレスコードに反し、グライムはロンドンの公営団地(エステート)に暮らすワーキングクラスのディアスポラが中心となり、トラックスーツやスニーカーを着用したストリート・ムーブメントとなっていきます。

彼らは独自のクルーやコレクティブを結成し、Rinse FM、Deja Vu、Major FMといったパイレーツラジオで放送。Youtube登場前の映像メディアとして、ラッパー同士がクラッシュ(バトル)するDVD(『Lord of the Mics』など)を自主制作し、ローカルのレコード店で販売。爆発的な支持を獲得していきます。2003年には若干18歳のDizzee Rascal(ディジー・ラスカル)がメジャーヒット。

Wiley – Eskimo(2002)

Wiley「Eskimo」(2002/Wiley Kid Records)

Musical Mob – Pulse X(2002)

Musical Mob「Pulse X」(2002/Inspiration Records)

More Fire Crew – Oi!(2002)

More Fire Crew「Oi!」(2002/Go! Beat)

Dizzy Rascal – I Luv You(2003)

Dizzy Rascal「I Luv You」(2003/XL Recordings)

Wiley – Wot Do U Call It?(2004)

Wiley「Wot Do U Call It?(2004/XL Recordings)

グライムはBowを中心としたイーストロンドンが発祥で、Ministry of Soundの当時£12~£15だったカヴァーチャージすら払えないブリティッシュ・ブラックが、自宅の安いPCで作り上げた究極のD.I.Y.音楽。音のストラクチャはUKGが基本となっているものの、アティテュードはアンチUKG。

暴動や当局による圧力を乗り越え、北のトテナムや南のブリクストンでもディアスポラを中心に発展し、ハイプでファンシーなUKドリルの流行を後目に、現在もアンダーグラウンドなストリートの真実を語り続けているのがグライムです。

『8 Bar』The Evolution Of Grime

グライムの発祥を探るドキュメンタリー

1991年ミニストリーのオープンから、グライムの原型ができる2002年まで、約10年。DAWやスピーカーの進化と共に、元々ハウスだった音が急速に高速化・細分化しました。

特にTony Andrews(トニー・アンドリュース)が1992年に設立したFunktion-One(ファンクション・ワン)の存在は大きく、このサブ・ウーファーがなければ、ダークガラージやダブステップ、グライムは生まれていないと言っても過言ではありません。

UKガラージ(スピードガラージ、2ステップ、ベースライン)は、ハウスから派生したサブジャンル。ボーカルが入っていたり、キャッチーな雰囲気のものが多く、ハウスが好きな人であれば聴きやすいです。

ダークガラージから派生したダブステップ、グライムは、ダブとD’n’Bの影響を強く受けており、UKGとは別モノと分類されています。D’n’Bが好きな方、トリップホップやブリストル系など、変則的なブレイクビーツが好きな人のほうが向いています。

ただしダブステップもグライムも、元を辿ればUKガラージのビート解体作業から派生していることは覚えておくべきです。

4ビートを打たないものが多く、ブレイクビーツやブロークンビーツ、もしくはヒップホップのように聴こえますが、本来はハウスから派生した突然変異種で、ヒップホップ起源ではありません。

グライムのオリジネイターたちは、ロンドンのストリート、パイレーツラジオから生まれたD.I.Y.音楽であることを誇りに思っており、ヒップホップにカテゴライズされることを極端に嫌います。

メディアが勝手に名付けた「グライム」という言葉も拒絶し、今でも頑なに「俺たちの音楽はガラージだ」と言い張るパイオニアが絶えません。 

まさかパラダイス・ガラージで流れていた音とは正反対のハードコアなグライムが「ガラージ」と呼ばれるとは、天国のラリー・レヴァンもビックリしていることでしょう。

ヒップホップと間違われやすいグライムですが、昨今は逆転現象が起きています。グライムのBPM140+超高速ラップをドリルが取り込み、シカゴやNYのUSドリルとは完全にかけ離れた、イギリス独自のUKドリルへと進化を遂げました。

Resident Advisorによる時系列UKG紹介

Bearing UKによるUKGドキュメンタリー

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